つかこうへいさんとの出会い
2017.11.09 (Thu)
2017.11.09 (Thu)
僕が武道を本格的にやっていた中で、一番のキーポイントになったのは挫折でした。
極真空手の2代目を継いだMさんという方が、僕の2個上の先輩だったんです。
彼も同じ高校生だったので、2代目を継ぐなんて当然思ってませんでした。
競技の世界は、1位を取らなければダメなんです。
僕がその時に感じたのは、この先10年間この2倍の練習をやっても、勝てないということ。
若かったし、人生経験の上から他の選択をするという知恵もなかったし、ただ、「もう、やーめた!」って感じで、やめました。
大学に行ったのも、何もかも全部、空手の道で1番になって、海外に行くという夢のために頑張っていたんです。
でも、彼に勝てない限り、僕は1番になれることはないと悟ったんです。
だから僕は、どうせ1番になれないんだったら、やめようと思って。
決して潔くやめたわけじゃないんですけどね。
それで半年間ぐらい、うつ病のような状態でいました。
そこで、たまたま、つかこうへいさんという演出家のお芝居を見たんです。
僕がこの世界に入ったのは、そんな経緯なんです。
つかこうへいさんはその頃、〝時代の寵児〟と呼ばれていました。
もう亡くなられてしまいましたが、この人はもう最高の演出家だったわけです。
いわゆる劇団ブームをつくった人で。チケットが取れない人でした。
たまたま僕の友人が行けなくなったんで、「このチケットもったいないから、ダフ屋に売ったらすげえ高く売れるぞ」と。
「やるから見に行ってこい」なんて言われても、芝居なんか見たことないし。芝居とか、勝手なイメージでなんか嫌だなと思って。
でも、見たらぶっ飛びましたね。
その熱と、エネルギーというのが時代感ともマッチしたというか。
半端じゃないんです。その緻密な演出は、人間の内面までえぐってくるんです。
感性の高い人ほど、この人の芝居見ると席を立てなくなるんですよ。圧倒されてしまって。
彼が時代を席巻した、まさにその頃なんです、出会ったのは。
それで、芝居の世界に入ることになったわけです。