動画で稼げる人、稼げない人――その違いはどこにある?
2026.04.05 (Sun)
2026.04.05 (Sun)

動画編集を学び、ソフトも使えるようになったが「なかなか収入につながらない」「自分にはセンスがないのではないか」と感じてしまう‥‥。
こういう発想は、動画クリエイターとして歩き始めた多くの人が、一度は通るものだと思います。
「どうすれば稼げるのか」「自分らしさとは何か」「何から身につければいいのか」。
若手のクリエイターたちから酒井監督へ、こうした質問やお悩みが数多く届きます。
それらを酒井監督に、一問一答で答えていただきました。
少し立ち止まって、自分の現在地を見つめ直す手助けになれば幸いです。
Contents
質問
「動画編集スクールで、ある程度の技術は覚えたのに、一向に収入が増えません。どうすれば、より稼げますか?」
僕は、あなたの技術の全てを知っている訳ではないので、先輩からの参考意見のひとつとして聞いて下さい。
「稼げる人」と「稼げない人」という差が生じる理由は、大きく分けて、二つあります。
ひとつ目は圧倒的な技術があるかどうか、ということ。
プロの編集マン、プロのディテクターなら誰でも、それなりの動画や映像を作れます。
でも、あなたが、誰にでもできる程度の技術しか持っていないのなら、あなたに仕事を依頼する必要はありません。
よりギャラの低い人、あるいは納品までのスピードが早い人に頼むでしょう。
僕が20代で初めてドキュメンタリー番組のディレクターを任された時、まだ経験が少ないこともあり、プロデューサーが、50代のベテランのドキュメンタリー編集マンを用意してくれました。
その編集マンは、自分だったら絶対に思いつかないような編集で、ぐいぐいと視聴者の心を引き付けていく作品に仕上げてくれました。
僕はその実力に圧倒されました。
「これが、お金のとれる技術なんだな」と深く納得したんです。
つまり、お金を稼ぐなら、あなたにしかできない圧倒的な技術を身につけることです。
もう一つは、ビジネスの世界のすべてに言えることですが、人脈を築くことです。
技術だけでは、お金を稼ぐことはできません。
「あなたを助けたい」「あなたに依頼したい」と、あなたに寄り添ってくれる人たちとの人間関係を築くこと。
人脈を築くことで、いちばん大切なことは、誠実であることです。
約束を守る。
期日を守る。
当たり前のことですが、これがいちばんの基本です。
PCの前に座っているだけではなく、どんどん、人脈づくりに励んでいってください。
技術と人脈作りが相まっていった時に、あなたの収入は大きく変わっていくと、僕は思います。
質問
「SNSで同世代の作品を見ると、自信を失ってしまいます。自分には才能がない、と落ち込んでいます」
僕も、その気持ちは分かります。
クリエイターには、感性の鋭い人が多いので、落ち込みやすいのだと思います。
僕も、自分にできないことをやっている人を見ると、すごく尊敬します。
二十代のキャリアが無かったころなら、僕もSNSで動画を見て落ち込んでいたかもしれません。
でも、映像作品、動画作品というものは、十人十色です。
たとえば、動画作りにあなたらしさを出していくのはどうでしょうか。
他人の作品を見て落ち込むより、自分にしかできないものづくりを心掛けて行くべきだと思います。
ハードロックのミュージシャンが、演歌の素晴らしい歌を聴いて、感動することはあっても、「どうして俺にこれができないんだ!」と悩む必要が無いのと同じです。
質問
「自分らしさを出せといわれるが、まだ自分がどこにいるか見えません。個性を求められるのですが、まだ誰かの模倣をしている段階だと自覚しています。オリジナリティとは何か、どこから来るのかが分かりません」
「模倣から始める」というのは、ものごとの基本なので、決して、あなたは間違っていないと思いますし、この質問は、今の映像業界の若手のみならず、写真やアートをやっている人間全般に言えることだとおもいます。
今は、YouTubeなどで、他人の作品を、好きなときに、好きなだけ見られる時代です。
そのことが、自分のオリジナルを作ろうとしても、どうしても、誰かに似てしまう、最悪な場合には、「パクり」と言われてしまうことにも繋がっているかもしれません。
最初はそれでも仕方がないのかな、という風に、僕は思っています。
結局のところ、作り続けていく中で、自分のオリジナリティというものを見出していくしかないでしょう。
たとえば、自分の好きな歌詞だったり、詩集だったり、小説だったり、映像ではなく、言葉や文章から発想を膨らませて、自分の脳内で映像を描きあげてみてください。
映像からインスピレーションを受けて映像を作ると、どうしても人真似になりがちです。
僕はディレクターになりたての頃、小説や本、写真集からヒントを得て映像を作るようにしていました。
ぜひ、試してみてください。
後は、やり続けていく中で、自分らしさ、オリジナリティを見つけていくしかありません。
動画作りも、人生と一緒だと思います。
様々な経験を積んでいく中で、自分のアイデンティティを確立していき、人生を映像に投影できるような、そんな素敵な人生を歩んでください。
質問
「何をどの順番で覚えればいいのか分かりません。カメラ、編集、カラグレ、音響、芝居演出、と覚えることが多過ぎて、何から手を付けていいか道筋が見えません」
確かにおっしゃる通りだと思います。
映像作りは総合芸術ですから、ディレクションをするには、撮影、録音、照明など、全てのことを理解していなければなりません。
でも、何から覚えるのかは、基本的に決まりはありません。
いちばん興味のあるところから、しっかり覚えていくのはどうでしょうか。
撮影が好きなら、まずは、シャッタースピードや絞りをコントロールできるスチールカメラを勉強してください。
背景をぼかしたいとき、隅々にまでピントを合わせたいとき、何をどうすればいいかが、分かるようになっていきます。
常にファインダーを通した画角でものごとを切り取れるようになるまでがんばってください。
編集が好きなら、さまざまなフッテージ素材があるので、それらを使って編集を学ぶのも良いでしょう。
YouTubeの編集講座でも、素晴らしいものがたくさんあります。
一つひとつを、丁寧に学んでください。
「全部をなんとなく」ではなく、細かいことまでをしっかりマスターしていくことが大事だと思います。
僕は演劇の世界から映像の世界に来たので、機材についてはぜんぜん分かりませんでした。
でも、役者に芝居をつけることに関しては、演出の先生の横について学んできたので、それが最大の強みでした。
そこから、カメラの助手をやったり、編集のオペレーターの助手をやったり、様々なことを学ばせてもらったおかげで、今の自分があると思っています。
千里の道も、一歩から。
がんばってください。
質問
「ソフトは使えるが、センスが無い気がします。プレミアやアフターエフェクトは一通り使えますが、仕上がりが素人っぽいのが、なぜだか分かりません」
今のソフトは非常に良くできています。
僕らが若い頃に学んだソフトというのは、あまりに難しくて、一般の人が使えるようなものではありませんでした。
現在では、主婦の方でも使えるように簡単にしてあるものが、ほとんど。
ソフト自体を使えるようになるのは、それほど難しいことではありませんが、良い編集をするというのは、今もって非常に難しいことだと思っています。
素人っぽさが出てきやすいのが、プレミアやアフターエフェクトを使って、画面の特殊効果やワイプ、テロップなどが派手に出てくる表現を、多用し過ぎている時です。
僕らの「プロっぽさ」というのは、たとえばテロップを入れるときに、
カーニング(文字間の余白の調整)の技術を使って、テロップを見やすく作れているか。
色のトーンが綺麗に揃えられているか。
オーバーラップ、フェードイン、カットのつなぎ等が、どれだけ上質で、美しくできているか。
こうした細かい点です。
違和感のないスムーズな見せ方にこそ、本当のプロの技があると思っています。
「ソフト上手の見せ方下手」になってはいけません。
ソフトを使うのは、あくまでも手段です。
まずは、自分が本当にすごいな、と思う映像作品を真似してみることが大事だと思います。
テレビCMなどは多額の予算を使うので、文字も、レイアウトデザインにも美しいものが多い。
これを自分でもできるか、どうか。
それが素人っぽさから脱出する方法かと思います。
質問
「やりたいことと求められる仕事がズレている感じがする」
若い皆さんが、このズレを感じるのは当然だと思います。
動画制作といっても、自分のアーティスト作品ではなく仕事ですから、どうしてこんなことをやらなきゃいけないのかと思うこともあるでしょう。
それが普通なので、ぜんぜん心配することはありません。
安心して実力をつけていって下さい。
そして、圧倒的な技術と人脈を作り上げて下さい。
「あなたの好きなようにやっていいよ」と言われる日が必ず来ます。
実力さえあれば、基本的になんでも叶います。
他人の言葉にまどわされずに、自分の力をつけることを優先してください。
質問
「評価されたい気持ちが強くて、無難な表現に寄ってしまいます」
若手の皆さんが無難なところに行きがちなのは、いかがなものか、と思います。
野球でいえば、ボールを置きに行く、ということです。
野球選手なら即、二軍行きです。
自信を持って、自分の一番自信のあるボールを投げ込んでみてください。
若いうちは「これはちょっと、やりすぎかな」と言われるくらいが、ちょうど良いと思います。
その方が、将来、必ず伸びていきます。
あなたに指示を出す人が、クライアントなのかプロデューサーなのかは分かりませんが、人間は想定内のものを仕上げられても、感動しないし、評価もされません。
指示の範囲内で、相手の想定を超えるものを作ることを心掛けて下さい。
「これ、いいじゃないか!」という反応を目指して下さい。
単に、指示されたことを形にするだけなら、あなたである必要はありません。
あなたにしか出来ない表現で、依頼者を驚かせて下さい。
質問
「『続ける覚悟』と『やめる判断』のどちらが正しいか分かりません」
あなたの今までの努力や、作り上げたものを見ているわけではありませんが、いずれにしても勇気が必要です。
僕も、自分の師匠に「人生には、勇気がいちばん大切だ」と教わってきました。
あなたが何歳なのかはわかりませんが、あと一年間、これ以上ないほどの努力をしてみてください。
そのあとに、どうなったか確かめてみてはいかがでしょうか。
変わらないなら辞めるという判断もあるし、大きく変わったのであれば、続ければいいでしょう。
いずれにしても、動画制作だけが人生ではありません。
しっかり、勇気を持って進んで下さい。
応援しています。
若手クリエイターから、様々な声が寄せられたので、一つひとつ、自分なりに答えてみました。
若い時は、様々なことに、悩んだり、迷ったりして当然です。
なにも心配することはありません。
未完成だからこそ、素晴らしいのです。
未完成だからこそ、成長ができるんです。
しかしながら、ダイヤモンドの原石を持ちながら、自分を磨きあげることなく、この世界から去っていった人を、大勢見てきました。
皆さまは、できれば、自分なりの作品を作れるようになるまでがんばっていただきたい。
皆、自分に才能はあるのか、センスはあるのか、と、様々な悩みを持っていると思います。
まずは、自分がこの仕事に携わっていることを自覚してください。
皆さんは、何らかの素晴らしい作品を見て、この世界を志したのだと思います。
「こんな作品をつくれるようになりたい」
その初心を忘れず、自分が感動した時のように、ひとりの人生を変えられるような作品を作れるようにがんばって下さい。
皆さまの成長を期待しています。