AIに仕事を奪われる? 自信が無い? 動画クリエイターのための生存戦略
2026.05.01 (Fri)
2026.05.01 (Fri)

動画クリエイターのよくある悩み――
「成長の停滞」「自信のなさ」「頑張りすぎ」「AI時代の生き残り方」
「納期に追われる働き方」などについて、
アーツテック代表・酒井靖之監督に、一問一答形式で具体的に答えていただきました。
「動画編集で稼げない」
「クリエイターとして伸び悩んでいる」
と感じている方にとって、現状を打開するヒントが詰まった内容です。
最後までお読みいただければ幸いです。
Contents
僕はあなたが仕事を始めた頃のレベルと、現在のレベルを見ている訳ではないので、安直には答えられません。
先輩からのひとつの参考意見として聞いて下さい。
たとえば、走り高跳びだったら、今まで1m50cmしか跳べなかったのが、1m60cm、1m70㎝、2mと高く跳べるようになっていった時、成長を感じることでしょう。
しかし、クリエイティブの内容は具体的な数字などに表れにくいので、なかなか自分の成長というものを感じとることは難しいものです。
そもそも成長がとまっていたと感じるのは、同じことを繰り返しているからだと思います。
今あなたは、
「もっと良い作品を作ろう」という意欲は持っていますか?
作品に、燃えるような情熱を注いでいますか?
同じような表現手法をとりつづけていませんか?
クリエイターというより、作業者になっていませんか?
あなたがこの世界に入った時、目指していたスタイルがあったはずです。
今、そのスタイルに届いていますか?
また、そのスタイルの仕事に取り組んでいますか?
そのためには、自分のスキルを上げなければなりません。
そして、そのスキルを使うためには、仕事のステージを上げなければなりません。
この両軸が必要なのだと思います。
とにかく、目の前の仕事を、自分が出せる限界の力を使って、120%の出来映えで仕上げてください。
そうすれば、仕事のレベルが上がっていきます。
必ず、それを見てくれている人がいます。
僕も若い頃、「自分には、こんな仕事は無理だ」と思うような仕事を与えられた時は、緊張で胃薬を毎日飲みながらも、ひたすらに、がむしゃらに挑戦していきました。
ひとつの大きな壁をのぼったと思ったら、また大きな壁が現れる。
そしてまたそれを越えていく、という繰り返しでした。
リアルタイムでは分からなかったことですが、後から振り返ると、
あの時期に自分が大きく成長していたのだな、と思います。
あなたも、目の前の仕事を全力で取り組んで、今よりも大きい仕事に、
どんどんチャレンジしてください。
そうすれば、「成長がとまっているのでは」と考える暇もなくなります。
大丈夫です。
頑張ってください。
僕もそうだったので、安心してください。
逆に、自信があり過ぎる動画クリエイターもどうかと思います。
僕には、今でも「この仕事は自分にできるのだろうか」という不安が頭をよぎることがあります。
何十年も、そしていくつもの大きな仕事を乗り越えてきてもそうなのです。
今回の仕事は大丈夫かな、失敗してしまうかもしれないな、という不安があるからこそ、徹底した準備を怠りなくできます。
自分に自信が持てないからこそ、他人よりも一生懸命準備もできるし、研究もできる。
クリエイティブに集中できる。
マイナス面をプラスにとって考えれば、人生に価値が開けていくし、クリエイターとしての価値も高まっていくと思います。
ぜひあなたも、自分に自信が持てないという性質を利用して、目の前のことに一生懸命取り組んでください。
いつか、必ず本当の自信が持てるようになります。
がんばり過ぎの落とし穴、という言葉もあります。
僕も、極度に自信がない性質なので、「これ以上、まだやるの?」と言われるくらい、仕事をしてしまっていました。
しかし、40代を超えてから、あるアーティストの生き様に影響されて、週に一日でもいいので、仕事のことを何も考えない「休感日」(感性を休ませる日)を作るようにしました。
そうはいっても、自分の趣味は、本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたりすることなので、結局、仕事に直結してしまいますが‥‥。
がんばり過ぎは、自分の視野を狭めてしまうと思います。
思い切って、丸一日、仕事から全く離れて休むという時間を作ることも、クリエイターにとっては大切なことなのだと思っています。
AIがレベルの高い仕事をするようになってきました。
シナリオやナレーションから、建築業界なら設計図、ITの世界ならプログラムまで、ありとあらゆるものを高いレベルでこなしてくれます。
多くの人間の仕事が奪われてしまうのではないか、と世界中がさわいでいます。
その上で、AIに勝つための唯一の方法論は、人間にしかできないものを作り上げることだと思っています。
縁あって、ナレーションのワークショップで講師をしているのですが、受講生には
「ただ単に上手に読むだけなら、AIで十分だ」と口酸っぱく伝えています。
ナレーションにおいて、AIが勝てないのは、人間ならではの「情感」と「機微」。
これはシナリオ執筆においても、他の分野においても、同じではないでしょうか。
ただ単にそつなく作るだけでは、AIにとって代わられます。
編集にしても、シナリオにしても、ナレーションにしてもそうです。
「情感」を出すこと。
そして、人間ならではの「機微」をとらえること。
表現の世界では、これが一番大切なものです。
この「情感」と「機微」のないクリエイションは、AIにとって代わられるのは必然だと思いますし、今後、尚一層はっきりしてくると思います。
表現に生きる私たちは、「情感」と「機微」をどうとらえ、いかにして自分のクリエイションに入れ込んでいけるのか。
AIの時代だからこそ原点に帰って、今一度、真摯に考えてみることが必要なのだと思います。
納期に追われる人生を変えるには、「時間を支配する表現者」になることが大事だと思います。
世の中には「時短術」というものが、様々あります。
しかし、ただ「時短術」を使えば、時間に追われずに済むかといえば、そんなことはありません。
僕の周りにいる人で、納期に追われがちな人は、たいてい時間にルーズです。
また、1時間の中で、これくらいの仕事を必ずやり切ろう、という決意が足りない人が多い。
クリエイターだからと、ダラダラと昼過ぎに仕事を始めて、体力の続く限りやっています。
こういった傾向性を持つ人は、納期ギリギリまでにできていればいいだろう、という甘えがあります。
その甘えを捨てて、納期の1週間前には終わらせて、その1週間で次の準備をしながら、自分の能力を上げるためのインプットをする。
それが、「時間を支配する表現者」ための思考と行動だと思います。
僕は、普通のビジネスマンのように、9時から5時までの間に仕事を終わらせる、といったこともクリエイターには必要だと思っています。
要するに、この手の方達は、自己管理能力を高める必要があると思います。
自分は、1時間でどれだけのものを作れているのか。
そして、それを30分で終えるにはどうすればいいか、という考え方になったときに、
はじめて「時間を支配する表現者」に変わっていけるのだと思います。
現代の若い人たちは器用です。
動画世代真っただ中なので、撮影も編集もできて、ドローンやジンバルも一人でできる器用な人が多い。
こういう人たちを見ていると、俺たちはこの後どうなるのだろう、と戦々恐々の方も少なくないと思います。
しかし、30代、40代は器用さや体力で勝負する年代ではないと思います。
人生経験も仕事の経験値も豊富なのだから、それを活かした、より深みのある作品を作れる表現者になれば良いのだと思います。
どこかで見たことがあるようなものではなく、自分らしさ、あなたらしさが十分に映像から伝わるような、そういった作品を作ってください。
若手にとって代わられないためにも、作るものの質を高めていってください。
人間ドラマを作っているのに、全くココロに響かないと言われたのなら、それは、あなたの人間を観察する力、洞察する力が、やや甘いのかもしれません。
ドラマを作っている方ならお分かりでしょうが、なんでも分かりやすいセリフ、分かりやすい展開で作ればいいわけではありません。
ドラマはというものは、人物のちょっとした眉の動きや目の表情で、視聴者はその心情を想像するものです。
こうしたひとつひとつこそが、まさに「演出」です。
あなたがここで描きたいことは何なのか。
人間の何を描くのか。
その人間の持っている愛は何なのか。
もっと深く、深く人間を捉えてください。
人間というものをしっかり描かなければ、観る人のココロに響かないし、感動もしません。
僕が人間ドラマを作る時に一番気を遣うのは、ちょっとした仕草―――人間が怒っているとき、悲しんでいるとき、どういう表情をするか、ということです。
その演出が甘いと、視聴者は共感できません。
とにかく、あなたが何か感動したときに、何に対して、どのように感動したのかを、じっくり考えてみてください。
何かしらの強い力があって、あなたは感動したはずです。
それくらい、物事や人間に対する観察力、洞察力を育てなければ、ココロに響く動画は作れないと僕は思っています。
クリエイティブな仕事をしている人なら誰もが、誰かのすごい作品を見て、この世界に入ってきたのだと思います。
僕はそれが映画でした。
自分もこのような映像を作れるようになりたい、と人生を変えてもらった一人です。
皆さんもそうだったのではないでしょうか。
僕はこの業界に入って以来、ジャンルを問わず、自分が作るすべての作品に同じ想いを込めています。
「作品を観た人のうち、たった一人でもいいから、この作品が良い方向へと人生を変えるきっかけになってほしい」という願いです。
ある種の映像・動画は強いエネルギーを持っていて、一人の人生を左右する力があります。
ですから、僕は常に、その画面の先に、この作品を見ている人のことを思い浮かべながら作品を作っています。
前述したナレーションのワークショップでも、「あなたは、このナレーションを聞いている人を感じながら原稿を読んでいますか?」と、受講生に必ず問うています。
画面の向こうに観客や視聴者がいることを意識してほしいのです。
僕の「おばあちゃんの口紅」というwebドラマは三千万回再生を記録しました。
僕には経験のなかった「おばあちゃん」という存在について(僕は早くに祖母を亡くしていたのでおばあちゃん子ではありませんでした)、深く考えました。
そして世の中のおばあちゃん子が、今すぐにでもおばあちゃんに会いたくなるようなものを想像しながら、作りました。
それが三千万回再生という結果に結びついたのです。
僕は、最初から百万回再生を狙うのはおこがましいと思っています。
たったひとりの人生を変えられるくらいの、想いの強い作品であってこそ、再生数という結果となって現れてくるのだと思います。
表現の世界にはどこまでいっても、「これで良し」というものはないと思います。
「自分のやり方は、本当に正しいのだろうか、間違っていないだろうか」。
そういう想いとの、戦いの毎日です。
ぼくも、いろんな想いをしてきました。
今でも、「いつまでこんなことをやっていなければならないのだろうか」と思う時もあります。
でも、その愚痴が出たときに、常に思うようにしているのが、
自分がやりたいと思っていることで、まがりなりにも飯が食えているという境遇に感謝しなければならない、ということです。
フリーに成り立てで仕事が無かったとき、
「今度仕事が来たら、どんなにつまらない仕事でも、一生懸命にやろう」と誓ったときの想いを忘れないように、なんとかやってきました。
そして、高い壁をのぼっても、のぼっても、またその先には高い壁がそびえる毎日を過ごして、自分はここまでこられたのだ、と思います。
心配事、悩みは尽きないかと思いますが、だからこそ成長できるし、人のココロを打つ作品も作れるのだと思います。
苦労や悩みは、クリエイションの肥やしになります。
目の前の困難に負けずに、共々にがんばっていきましょう!
(取材 ライターS)