Q アーツテックを知ったきっかけ
プライムスター保育園グループのブランディングをする中で、単なる園の紹介ではなく、見て頂いた方の心に響く印象的な表現をしたいと思いました。
模索する中で目に留まったのが「感動ドラマ」形式の広告宣伝動画で、是非当グループもその形で動画を作成しようと決めました。
私は映画が好きで多種多様な映画を見てきましたが、作品のクオリティを決めるのは監督や脚本家の腕にかかっていると思います。ですから、心に響く本物のドラマや映画を撮れる、実力のある監督を探していました。
制作会社探しは難航しましたが、あるときインターネットでドラマ制作に強い会社についての記事を見ていたところ、数ある制作会社の中に酒井靖之監督の個人名を見つけました。
多方面で活躍している酒井監督率いる、「映像制作会社アーツテック」という説明があり、監督業として名の通った人であることが書かれていたのです。
個人名で記載されていたのは酒井監督だけでしたので、非常に興味をもちました。
私は園の仕事にかかわることをどこかへ託すときは、必ず舵をとる“人”を見ます。
結局、会社といっても最終的には個人の仕事だと思っています。やるのはひとりの人間です。
そういう意味では職人気質の人が好きというか、信用しています。商売として仕事をするだけではなく、こだわりを追求する人は自分の仕事に嘘をつかないと思うからです。
酒井監督について調べさせていただいたところ、その職人気質を強く感じました。
第一線でやってきたということは実績からも、作品からも良く伝わってきました。
一方で、うちは保育園という業態であり、そのなかでもしっかりとした保育理念をもっています。
たとえ酒井監督の腕が良くても、伝えたいことをしっかり伝えて頂けるのか、そこに不安を感じたことも事実です。正しい保育とは専門家であっても一朝一夕では理解しきれない難しい部分があります。
職人気質の方だと柔軟性に欠ける場合もあるかもと思ったので、そこをうまく汲み取ってくれるだろうかと。
だからこそ実際にお話しをしてみて、自分で確認しなければいけないと思いました。
Q 酒井監督に実際に会ってみて
いかがでしたか
すごい迫力を感じました。自身の仕事に対して「芯がある」ということが言葉の端々から伝わってきました。
実際のすり合わせの中で、映像の素人の我々がやりたいと思うことを「じゃあ、全部その通りにやります」ではなく、どうやったら理想のイメージにつなげられるかを真剣に考えてくださいました。
最初の話し合いの中で酒井監督が、プライムスター保育園グループが大事にしている、概念や理念、コンセプトを全てドラマで表現するのは難しいとおっしゃいました。
しかし、私はどうしてもドラマ形式の作品にしたかった。
なぜならそれは普遍的で一番難しい保育の表現を観る方々に最も分かりやすく伝えることが出来ると思ったからです。
その想いを伝えると酒井監督は、まずは園の全体の雰囲気を伝えるためのドラマ仕立ての動画を作り、それを観て興味をもった人がより理解を深められるよう、アニメーションを交えて理念やコンセプトを伝える動画の2本立てにしてはどうかと提案がありました。
提案どおり、まずはブランディング用のドラマ仕立ての作品を制作することになり、出来上がったシナリオの第一稿を拝見しとても驚きました。
自分の想像を超えた完成度だったからです。私の意向をよく汲みとっていただいた上で、伝えたかったことが伝わる理想的なシナリオでした。
実際の撮影におけるドラマの演出については細かく聞いてなかったのですが、撮影の途中からすこしずつその意図が見えてきたことで、さらに想像を超えたと思いました。
演出のことでひとつ印象に残っていることは、保育の専門書をどのようにしてドラマに出してくるかということでした。
※厚生労働省の「保育所保育指針」
保育業界でしか読まない厚生労働省の「保育所保育指針」を酒井監督は熟読し、徹底してリサーチしてきてくださいました。
保育で一番重要であり、プライムスター保育園グループの保育のキーワードでもある「愛着形成」にかかわる部分を「保育所保育指針」中からズバリ抜きだしてくれたのです。
「愛着形成」についての表現は「保育所保育指針」のなかでも数カ所しかないので、全部読んでいないと絶対にこの言葉は拾えない。
その時、「すごい、本気なんだなこの人は」と思いました。
ご自分がプロデュースした作品が完成して、感じられたことは
Q ロケ中に印象に残っていることは
ドラマ撮影は初めての経験でした。ロケというものに密着させてもらい、酒井監督の一声で全てが動いていく様や、1分1秒を争う緊張感のある撮影の中で、酒井監督が瞬時に決断し、端的な言葉で指示をしていく。
それに連動してスタッフが一丸となっていくことに感動を覚えました。
また一番印象的だったのは、皆さんの情熱や真剣さが“運”も呼び寄せたことです。
ラストの夕日のシーン。今でも思い出しますが、ぎりぎりまで曇り空でいつ雨が降ってきてもおかしくない天気でした。
酒井監督の判断で夕日が出てくるのを待っていたのですが、本当に絶妙なタイミングで美しい夕日が現れて最高に感動的なシーンを演出してくれました。
映画やドラマでも夕日を撮っているシーンはよくありますが、制作者の皆さんの想いが届いた「子どものゆいと30歳のゆい」のこの夕日が、私の中で一番美しく感動的な夕日のシーンとなりました。
Q 作品を公開してからの反響は
いかがですか。
保護者面談のときや採用面接のときにこのドラマが話題になるのですが、皆さん一様に
「心を動かされた。感動した。」とおっしゃっていただいています。
保護者にも、求職者にも動画が一番イメージを伝えることができるようです。
ドラマを見てもらえれば、プライムスター保育園グループの理念や大切にしていきたいことが、しっかり伝わる。
そしてこのドラマには、「優しさが溢れている」のです。
ともすると、保育所保育方針に基づく保育の表現は、現在の保育業界に当てはめると“アンチテーゼ”として理解されてしまうことがありますが、それがある意味 “悪く伝わらない” 。
このドラマの凄いところはその “アンチテーゼ” の本質を捉えていることです。
“おとな都合の保育” も実は、子どものために良かれと思ってのことなのです。その考えが間違っているとしても誰も責めずに正しい方向に導いていく。
そこに「優しさが溢れている」と感じています。
言葉による説明だけでは伝えるのが難しい保育の表現を、動画を通してこの「優しさが溢れている」雰囲気で伝えることができるのがとても効果的だと感じています。
Q.応募される保育士の方や
働かれている保育士の意識が変わったと
感じられることはありますか?
「子どものゆいと30歳のゆい」を観ていただくと、プライムスター保育園グループの “ 想い ”というのを感じてもらえます。 “乳幼児教育” として、「こういう風に接していけばいいんだ」というイメージをもってもらいやすくなりました。
保育士になるなら、厚労省の「保育所保育指針」をまずは読むのですが、これが結構ボリュームもあって読み切るのも理解しきるのもむずかしい。
厚労省の「保育所保育指針」の内容を、一企業のブランディングCMに前面に出すというのはなかなかないですし、これは結構斬新だなと思っていて、求職者の方に対しては我々がこの「保育所保育指針」を真に理解したうえで、園を運営しているという裏付けにもなっています。
ただ単に「感動的なドラマ作りました」ということではなく、実直な組織だという外部資料にもなると思いました。
もともと最初のシナリオでは、「保育所保育指針」をテロップに出して、母親役に読ませるという件はなかったと思います。
「保育所保育指針」は、制作を進めていく中で我々が一番伝えたい“イメージ”だったので、イメージを具現化する演出方法として酒井監督が我々と同じように真に理解して「保育所保育指針」をこのような形でドラマの演出に加えてくださったことにとても感心しました。
「保育所保育指針」はかなり分厚い本でしたし、その中に書かれている内容のどの部分を引用するのかは、本来プロの立場である我々が、「ここを使ってください」と提示するものですが、酒井監督には一切、聞かれなかったです(笑)
酒井監督が真に理解し、引用部分を選んでいただき、それがばっちりイメージに合った。
これには私も驚きました。
Q ご自分がプロデュースした作品が完成して、感じられたことは
一番感動したのは社内で試写をした時です。うちのスタッフは、みんな感動して涙を流したり、
ドラマの完成度に驚いていました。
作品の仕上がりは、私の想像のはるか上をいきました。本当に満足しています。
酒井監督にお願いしていなければ、私が考えていた動画の形にならなかったなと、お願いしてよかったなと、完成した作品を見て改めて思いました。
企業ブランディングとしての成果もそうですが、表現をするにも時間と予算の制限がある厳しい現実のなか、実効果をあげなくてはいけない。
普通の映画を撮るよりも、企業ブランディングとしてドラマを撮るということは、本当に難しい仕事だと思います。