企画が思いつかない。生成AIで「自分らしい企画」を生み出すプロンプト設計術
2026.10.08 (Thu)
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YouTubeチャンネルの運営や、企業への動画提案に携わっていると、企画のネタ切れは避けて通れない悩みです。「来週までに新しい企画を10本」。そう言われて、とりあえず生成AIに頼んでみた経験はないでしょうか。
たとえば「料理系YouTubeの企画を10個出して」と入力すると、数秒で一覧が返ってきます。「時短レシピ」「コンビニ食材アレンジ」「100均グッズで作る〇〇」――どれも間違いではありません。
しかし、どこかで見たことのある案ばかりで、そのまま提案に使えるものはほとんどありません。結局は自分で考え直すことになり、「AIは企画には向いていない」と感じてしまう人も多いはずです。
ただ、その原因はAIの性能ではありません。問題は、AIに渡している情報のほうにあります。「誰が」「どんな経験や視点を持って」企画するのかを伝えなければ、AIは誰にでも当てはまる平均的な答えを返すしかないのです。裏を返せば、渡す情報を変えるだけで、出てくる企画は大きく変わります。
本記事では、あなた自身の経験やこだわりを「素材」として言語化し、AIに渡すためのプロンプト設計の方法を解説します。自分らしさの分解から、プロンプトの型、対話で企画を磨く進め方、企業への提案に応用するコツまで、順を追って紹介します。AIを使いながら、あなたにしか作れない企画を生み出すための実践ガイドです。
生成AIは、膨大な文章から言葉のつながり方を学習し、入力に対して「もっともらしい」続きを組み立てる仕組みで動いています。ここでいう「もっともらしい」とは、多くの人が書いてきたことや、よく見かけるパターンに近いという意味です。
そのため、条件の少ないプロンプトには、多くの人が思い浮かべる答えが返ってきます。
「旅行Vlogの企画」と聞かれて、誰もが最初に思いつく案。それがAIにとっての「正解に近い答え」なのです。
AIが手を抜いているわけでも、発想力が足りないわけでもありません。与えられた条件の中で、最も無難な答えを選んでいるだけです。
実際に、同じテーマで条件だけを変えた2つのプロンプトを比べてみましょう(出力は一例です)。
プロンプトA
旅行Vlogの企画を考えてください。
出力イメージ
・1泊2日で巡る〇〇のグルメ旅
・予算1万円でどこまで行ける?
・地元の人に聞いた穴場スポット
プロンプトB
私は元・鉄道会社の社員で、10年間、駅員と運行管理の仕事をしていました。この経験を生かした旅行Vlogの企画を考えてください。
出力イメージ
・元駅員が選ぶ「乗り換えが美しい駅」ベスト5
・運行管理の経験者が教える、ダイヤが乱れた日の旅の立て直し方
・車窓ではなく「駅の裏側」を楽しむ途中下車の旅
Aの案は、どれも企画としては成立します。しかし、同じような企画はすでに多くのチャンネルで公開されているでしょう。一方、Bの案には「元鉄道会社社員」という立場からしか出てこない切り口が入っています。
2つのプロンプトの違いは、AIの性能でも、聞き方のテクニックでもありません。「誰が企画するのか」という情報が入っているかどうか、それだけです。AIは企画者のことを何も知りません。何も伝えなければ、誰にでも当てはまる答えを返すしかないのです。
つまり、AIから「自分らしい企画」を引き出すには、プロンプトに「自分」を入れる必要があります。では、その「自分」とは具体的に何を指すのでしょうか。「自分らしさ」という言葉は便利ですが、そのままではAIに渡せません。次章では、この曖昧な「自分らしさ」を、AIに伝えられる要素に分解していきます。
「自分らしい企画を」と言われても、多くの人は手が止まってしまいます。自分らしさは、才能やセンスのような捉えどころのないものだと思われがちだからです。
しかし、企画における「自分らしさ」は、もっと具体的なものです。本記事では、それを次の5つの要素の組み合わせとして考えます。
これまでに自分がしてきたことです。仕事の経歴、住んできた場所、続けてきた趣味に加え、失敗談も含まれます。第1章の「元・鉄道会社社員」は、この経験にあたります。特別な経歴である必要はありません。「飲食店で3年アルバイトをした」も、立派な経験です。
経験や立場によって身についた、ものの見方です。たとえば同じ家電のCMを見ても、元営業職の人は「この説明の順番は、店頭の接客と同じだ」と気づくかもしれません。そこから「元営業マンが、家電CMのセールストークを採点する」という企画が生まれます。経験が「何をしてきたか」なら、視点は「その結果、何が見えるか」です。
人に頼まれなくても、つい詳しくなってしまうことやものです。文房具、昭和の団地、特定のバンドの機材など、ジャンルは問いません。大切なのは、世間での人気よりも「自分がどれだけ語れるか」です。熱量のあるテーマは、それだけで動画に説得力を与えます。
世の中の「普通」に対して、自分だけが引っかかっていることです。「なぜ旅行動画は、どれも観光地ばかりなのか」「なぜレビュー動画は、褒めてばかりなのか」。こうした小さな疑問は、裏返すとそのまま企画の切り口になります。
予算、人数、機材、時間など、手持ちの条件です。一般的には弱みと思われがちですが、企画では個性になります。撮影機材がスマホ1台しかないなら、「スマホ1台縛り」を企画の軸にすればよいのです。大きな予算をかけたチャンネルには、かえって真似できない企画になります。
この5つの要素は、1つだけでも企画の種になります。しかし、本当に強いのは掛け合わせたときです。
たとえば「元営業職(経験)」「文房具好き(偏愛)」「レビュー動画への違和感(違和感)」を組み合わせると、「元営業マンが、文房具メーカーの売り文句を本音で検証する」という企画になります。ここまで具体的になれば、同じ企画が他のチャンネルにある可能性はかなり低くなるでしょう。掛け合わせ方をプロンプトに落とし込む方法は、第4章で詳しく扱います。
ただし、こうした要素は頭の中にあるだけでは、AIに渡すことができません。また、自分にとって当たり前すぎることほど、個性だと気づきにくいものです。次章では、この5つの要素を書き出し、AIに渡せる「自分素材」として整理する方法を紹介します。
第2章で紹介した5つの要素を、AIに渡せる形に書き出したものを、本記事では「自分素材」と呼びます。この章では、自分素材の作り方と、それを繰り返し活用する方法を紹介します。
まずは5つの要素ごとに、思いつくことを2〜3項目ずつ書き出してみましょう。たとえば、ホームセンターでの勤務経験がある企画担当者なら、次のようになります。
| 要素 | 書き出した内容 |
| 経験 | 地方のホームセンターで5年間勤務。引っ越しを7回経験 |
| 視点 | 売り場の棚の並びを見ると、売れ筋と店の戦略がわかる |
| 偏愛 | ネジと工具の種類。週末の銭湯めぐり |
| 違和感 | DIY動画は完成品ばかり映して、失敗を見せない |
| 制約 | 撮影は平日の夜だけ。撮影も編集も1人 |
書き出すときのコツは、できるだけ具体的に書くことです。「料理が好き」では、AIは一般的な料理企画しか返せません。「週3回、冷蔵庫の残り物だけで夕食を作っている」と書けば、切り口が一気に絞られます。数字や固有名詞を入れることを意識しましょう。
また、自分にとって当たり前のことほど、書き出す価値があります。本人には普通でも、視聴者にとっては新鮮な情報であることが多いからです。
「書き出そうとしても手が止まる」という人は、AIに質問役を任せる方法がおすすめです。自分で考えるより、質問に答えるほうがずっと楽に言葉が出てきます。たとえば、次のようなプロンプトを使います。
あなたは経験豊富な動画プロデューサーです。私のYouTube企画の「個性」を見つけるために、インタビューをしてください。 ・経験、視点、偏愛、違和感、制約の5つについて質問してください ・質問は1問ずつ行い、私の答えを聞いてから次の質問に進んでください ・答えが抽象的なときは、具体例を求めて深掘りしてください ・最後に、インタビュー内容を5つの要素ごとに表にまとめてください
ポイントは「1問ずつ」と指定することです。指定しないと、AIは20個の質問をまとめて並べてしまい、結局は自分で全部考えるのと変わらなくなります。1問ずつのやり取りなら、会話の流れで思わぬ経験を思い出すこともあります。
一度作った自分素材は、企画のたびにゼロから考え直す必要がありません。プロンプトの冒頭に貼り付けるだけで、AIは毎回「あなたが企画する前提」で考えてくれます。新しい経験や違和感に出会ったら、そのつど追記していきましょう。素材が増えるほど、企画の引き出しも増えていきます。
毎回貼り付けるのが面倒なら、AIの機能を使って素材を保存しておく方法もあります。多くの対話型AIには、メモリ、カスタム指示、プロジェクト機能など、情報を保存しておける仕組みがあります。
ここで知っておきたいのが、よく言われる「AIを育てる」の正体です。一般的なチャットAIでは、あなたと会話をしても、その場でAIそのものが賢くなるわけではありません。実際には、保存された情報が毎回自動でプロンプトに添えられ、AIはそれを前提に答えているのです。
つまり「AIを育てる」とは、自分素材をAIの側に置いておくことにほかなりません。育てる対象はAIではなく、渡している素材のほうなのです。ただし、この仕組みには注意点もあります。企業案件での情報の扱いは第6章、AIに頼りすぎることのリスクは第7章で触れます。
素材がそろったら、いよいよプロンプトに組み込んでいきます。次章では、自分素材を生かして「自分らしい企画」を引き出すプロンプトの型を紹介します。
自分らしい企画を引き出すプロンプトは、次の5つのパーツで組み立てます。
この中で見落とされやすいのが、3の目的・視聴者です。自分素材だけを渡すと、AIは素材を盛り込むことを優先し、企画者の自分語りのような案を出しがちです。「誰に、何を届けたいのか」を書いておくことで、視聴者にとっての面白さと自分らしさを両立した案が出てきます。
もう1つ、特に効果が大きいのが5の除外条件です。AIは何も指定しないと、最も無難な案から出してきます。そこで、ありがちな案を先に禁止しておくのです。たとえば料理系の企画なら、「時短、コンビニ、100均を使った案は出さないでください」と書くだけで、AIはそれ以外の切り口を探し始めます。
5つのパーツを組み合わせると、次のような形になります。
【役割】あなたはYouTubeの企画プロデューサーです。
【前提】以下は私の自分素材です。(自分素材シートを貼り付け)
【目的・視聴者】DIY初心者の20〜30代に向けて、気軽に挑戦したくなる動画を作りたいです。
【制約】10分前後の動画で、平日の夜に1人で撮影できる企画を5つ出してください。
【除外条件】「100均DIY」「初心者向けおすすめ工具紹介」のような、よくある企画は除いてください。
役割は「企画プロデューサー」に限らず、「辛口の編集者」「競合チャンネルの担当者」など、欲しい視点に合わせて変えてもかまいません。
この基本形の末尾に、目的に応じた指示を1文加えることで、企画の方向性を変えられます。ここでは、第3章のホームセンター勤務経験者の素材を使って、3つの型を紹介します(出力は一例です)。
自分素材の中から異なる要素を選び、組み合わせるよう指示する型です。
企画者
「経験」と「偏愛」を必ず1つずつ組み合わせた企画にしてください。
出力イメージ
・元ホームセンター店員が、銭湯の設備をネジ1本から観察する
・引っ越し7回の経験者が教える、賃貸でも原状回復できるDIY
意外な組み合わせほど、他のチャンネルにはない企画になります。距離の遠い要素どうしを組み合わせたいときは、「普通は結びつかない組み合わせを優先してください」と添えるのも効果的です。
自分が抱いている違和感を出発点に、それを解消する企画や、逆をいく企画を考えさせる型です。
企画者
私の「違和感」を起点に、それを解消する、またはその逆をいく企画を考えてください。
出力イメージ
・失敗だけを集めたDIY動画「やり直し記録」
・完成品を一切映さず、つまずいた工程だけを解説する
違和感は、視聴者も薄々感じていることが多いため、共感を得やすい企画になります。違和感が複数あるときは、1つずつ指定して試すと、案の方向性がぶれにくくなります。
制約を、企画のルールや見どころに変えるよう指示する型です。
企画者
私の「制約」を、弱みではなく企画の見どころに変えてください。
出力イメージ
・平日の夜2時間だけで挑むDIY。終わらなければ翌週に持ち越し
・撮影も編集も1人だからこそ見せられる、手元だけの作業記録
制約がそのまま「縛り」や「挑戦」になり、続き物のシリーズにもしやすくなります。制約が多い人ほど、この型で個性的な案が出やすくなります。
3つの型は、どれか1つを選んで使うものではありません。同じ基本形のまま、末尾の1文だけを差し替えて3回試せば、方向性の違う案を一度に比べられます。気になった案には印をつけておきましょう。
ただし、ここで出てくる案は、まだ企画の「原石」にすぎません。次章では、AIとの対話を重ねて、原石を提案できる企画へと磨いていく方法を紹介します。
第4章のプロンプトで出てきた案は、まだ企画の「原石」です。原石を提案できる企画に磨くには、AIと何度かやり取りを重ねる必要があります。この章では、その対話を「発散」「選別」「深掘り」「検証」の4つのステップで進める方法を紹介します。
最初の段階では、質より量を優先します。第4章の3つの型を使い、合わせて15〜20案ほど出してもらいましょう。この段階でAIの案に細かく注文をつける必要はありません。
「もっと出して」「さっきとは違う方向で」と頼むだけで十分です。数を出すことで、AIの「無難な案」を出し切り、その先にある意外な案に届きやすくなります。
次に、出てきた案の中から、自分が「撮ってみたい」と思えるものを2〜3案に絞ります。ここは必ず自分で判断しましょう。
AIに「どれが一番いいですか」と聞くと、多くの場合、最も無難な案が選ばれてしまいます。選ぶ基準は、正しさよりも自分の熱量です。選んだ理由を一言メモしておくと、後で企画の意図を説明するときに役立ちます。
選んだ案を、AIへの質問を通して具体化していきます。ここでは、第4章で出てきた「失敗だけを集めたDIY動画」を例に、やり取りの流れを見てみましょう。
企画者:「失敗だけを集めたDIY動画」を深掘りしたいです。この企画で、私にしか撮れないシーンは何だと思いますか?
AI:ホームセンターでの勤務経験を生かし、失敗の原因を「材料の選び方」から解説するシーンが考えられます。たとえば「このネジを選んだのが失敗だった」と、売り場目線で振り返る構成です。
企画者:いいですね。では、毎回の動画の流れを、視聴者が真似しやすい形にしてください。
AI:「失敗した作品を見せる→原因を材料・道具・手順に分けて解説する→売り場で正しい材料を選び直す→やり直す」という4部構成はいかがでしょうか。
最初は「失敗を見せる」だけだった案が、2往復のやり取りで「元店員が、売り場目線で失敗を解剖する」企画に変わりました。深掘りの質問は、「私にしか撮れないシーンは?」のように、自分素材に立ち返る形にするのがポイントです。
最後に、企画として成立するかを確かめます。ここで特に重要なのが、「この企画は、他のチャンネルでも成立するか?」という代替可能性チェックです。AIに次のように聞いてみましょう。
この企画を、私以外のYouTuberが同じように作れるとしたら、どの部分ですか?逆に、私にしか作れない部分はどこですか?
他の人でも作れる部分が大きいなら、まだ自分らしさが足りないということです。その場合はステップ3に戻り、自分素材をもう一段階盛り込みます。この往復を繰り返すことが、企画を「育てる」ということです。
あわせて、「この企画で10本続けられるか」も確認しておくと安心です。YouTubeでは、単発のヒットよりも、シリーズとして続けられることがチャンネルの成長につながるからです。
ここまでは、自分のチャンネルの企画を前提に進めてきました。しかし読者の中には、企業に動画企画を提案する立場の人も多いはずです。次章では、この方法を企業案件に応用し、クライアントの「らしさ」と自分の「らしさ」を重ねる方法を紹介します。
企業に動画企画を提案する場合、主役は自分ではなくクライアントです。しかし、だからといって自分らしさが不要になるわけではありません。むしろ、提案者ならではの視点こそが、他社の提案との差になります。
企業案件では、次の3つの素材をプロンプトに入れます。
企業素材は、第3章の自分素材シートと同じ要領で作れます。5つの要素を、企業に置き換えて書き出せばよいのです。「経験」は創業からの歴史、「偏愛」は社員が語り出すと止まらないこだわり、「違和感」は業界の常識に対する疑問、といった具合です。ヒアリングの段階で、この5つを意識して質問しておくと、素材が集めやすくなります。
地方の工務店の例
たとえば、地方の工務店からYouTubeチャンネルの企画を依頼されたとします。プロンプトは次のようになります。
【企業素材】創業50年の工務店。職人による手刻みの木工に強みがある。社長は「家は完成後より、作る過程にこそ価値がある」と考えている。撮影に使える予算は少ない。
【視聴者インサイト】家づくりを検討中の30〜40代。住宅メーカーとの違いがわからず、工務店に相談するのをためらっている。
【提案者の視点】インテリアが好きで、素材の質感や手仕事の映像に強い関心がある。 この3つが重なる企画を5つ出してください。
すると、「職人の手元だけを映すASMR施工記録」のような案が出てきます。工務店の強みである手仕事、作る過程に価値を置く社長の考え、質感にこだわる提案者の視点が、1つの企画にまとまっています。企業素材だけでは「施工事例の紹介」で止まりがちな企画に、提案者らしさが加わった形です。
提案の場では、この3つの重なりをそのまま企画の説明に使えます。「御社の強みは何か」「視聴者は何に困っているか」「なぜこの切り口なのか」を順に伝えれば、企画の根拠がクライアントにも伝わりやすくなります。第5章の代替可能性チェックも、「他の工務店でも同じ企画ができないか」と置き換えて使えます。
ここで注意したいのが、第3章で触れたメモリやプロジェクト機能の扱いです。複数の企業を担当していると、A社の情報を前提にした回答が、B社の企画に混ざってしまうおそれがあります。クライアントの情報は、プロジェクト機能などを使って案件ごとに分けて管理しましょう。
また、未公開の商品情報や社外秘の数字をAIに入力してよいかは、クライアントとの契約や社内ルールを確認してから判断してください。利用しているAIサービスの、データの取り扱いに関する設定も確認しておくと安心です。
このように、AIを使いこなすほど、人が判断しなければならない場面もはっきりしてきます。次章では、企画づくりの中でAIに任せてはいけない3つの判断を整理します。
AIは企画づくりの強力なパートナーですが、すべてを任せてよいわけではありません。ここでは、必ず人が担うべき3つの判断を整理します。
どの企画を採用するかは、必ず自分で決めましょう。AIに選ばせると、無難な案に落ち着きやすくなります。
また、メモリ機能などでAIに自分素材を覚えさせていると、AIは過去の好みや傾向に沿った案を出し続けます。便利な反面、気づかないうちに企画が自己模倣に陥り、マンネリ化することがあります。新しい経験や違和感を素材に足し続けること、そして「なぜ今、この企画をやるのか」を自分の言葉で説明できるかを確かめることが大切です。
AIは、もっともらしい誤りを混ぜることがあります。たとえば、企画の根拠として「〇〇の視聴者の7割が△△を求めている」といった、出典のない数字を示すことがあります。数字や事例は、必ず元の情報源で確認しましょう。
実体験についても同じです。AIに台本や紹介文を作らせると、話を盛り上げるために、あなたが経験していないエピソードを書き足すことがあります。自分らしさを売りにする企画で体験を偽れば、視聴者の信頼を一度に失いかねません。書かれた内容が本当に自分の体験かどうか、一文ずつ確かめましょう。
AIが出した案が、既存の人気チャンネルの企画とほぼ同じということもあります。公開前に、類似企画がないかを自分で調べましょう。AIに「似た企画はありますか」と聞くだけでは不十分です。AIは、公開されている動画をすべて把握しているわけではないからです。出演者の肖像、使用する音楽や素材の権利、表現が誰かを傷つけないかも、人が責任を持って確認すべき点です。
AIが担うのは、あくまで発想を広げる部分です。判断と責任は、企画者の手に残しておきましょう。最後に、本記事の内容を振り返ります。
AIに企画を頼むと、どこかで見た案ばかりになる。その原因は、AIの性能ではなく、AIに渡している情報にありました。
本記事では、「自分らしさ」を経験・視点・偏愛・違和感・制約の5つに分解し、AIに渡せる「自分素材」として整理する方法を紹介しました。さらに、素材を生かすプロンプトの型、対話で企画を育てる4つのステップ、企業案件への応用、そして人が担うべき判断までを見てきました。
AIは、あなたの代わりに自分らしさを生み出してくれる道具ではありません。あなたが渡した自分らしさを、何倍にも広げてくれる道具です。渡すものが空っぽなら、返ってくるのは誰にでも当てはまる平均的な案です。渡すものが具体的であるほど、AIはあなたにしか作れない企画へと導いてくれます。
最後に、企画をつくるときのチェックリストをまとめます。
・自分素材を作り、プロンプトに入れたか
・ありがちな案を、除外条件で先に禁止したか
・「他のチャンネルでも成立しないか」を確かめたか
・数字や事例、実体験の内容を自分で確認したか
・「なぜ自分がこの企画をやるのか」を言葉にできるか
まずは、自分素材シートを1枚書くところから始めてみてください。最初から完璧に埋める必要はありません。思いついたことを数行書くだけでも、AIから返ってくる企画は確実に変わります。その1枚が、あなたらしい企画を生み出す出発点になるはずです。