レシピ動画制作の要。シズル感ってなに?!
2020.08.27 (Thu)
2020.08.27 (Thu)
少し前はお料理やお菓子のレシピというと、紙面や雑誌などで見ていたと思いますが、
インターネットの普及により、レシピ動画サイトなるものや、食品メーカーさんの自社サイト、
スーパーなどの店頭サイネージでも動画によるレシピ紹介は当たり前の時代となっています。
そこで、レシピ動画の制作を考えている方、自社内で作ったことがあるけど撮影や編集が
上手くできないとお困りの企業担当者さまに、レシピ動画の戦略的な動画制作の要を徹底解説いたします。
シズル感って一体なに?!
思わず作りたくなる・買いたくなる購買心理につながるレシピ動画とは?
レシピ動画を見ていて、思わず「作ってみたい」「美味しそう」「買ってみよう」
など、視聴者の心理が働くところは、食の場合「シズル感」だと考えます。
シズル感という言葉を初めて聞く人もいるかと思いますが、
シズル感は、観る人の五感をすべて刺激し、目で見たその一瞬で美味しさを伝え、
食欲、購買意欲を高める魔法のような演出手法です。
語源は英語「sizzle」からきています。
食材のみずみずしさや、お肉の焼けるジューワァーという音、
お鍋から立ち上る美味しい匂いともくもくの湯気、
飲み物で言えば炭酸のシュワシュワ感、氷がカランッとなる音など、
その臨場感をシズル感といいます。
レシピ動画がこれまでの紙面から取って代わった要因は、このシズル音に尽きるのではないでしょうか?
紙面ではこの臨場感は見る人の想像にお任せするしかないからです。
動画であれば、そのものの臨場感を映像と共にシズル感あふれる音で五感を刺激することができます。
料理やお酒のシズルカットといえば、何を思い浮かべますか?
たとえば、ハンバーグ、ステーキ、ウィスキーハイボール。
これらは、全て見る人の心をとらえる、印象に残る音が入っていませんでしたか?
特にTV-CMの場合は、音効さんと呼ばれる専門の「音をつくる」人たちがいます。
この音効さんは非常に重要な役割を占めていると思います。
ウィスキーの注ぐときの音。
皆さまは実際のリアルな音よりも、CMの音の方が印象に残っているはずです。
「なかなかCMのような音がしないんだよな」とお思いではないでしょうか?
あれは、音効さんがリアルな音に更に加工を重ね、人間の五感(とくに聴覚)に記憶の残る音を
実に上手に作り出しているのです。
プロの映像制作の現場には、このような専門家(音効さん)が存在するのです。
鍋のグツグツっと煮える音。
ハンバーグやステーキが、熱い鉄板の上でジュ―ッと焼ける音。
ハイボールをシュワッと作る音。
夏の暑い日にカルピスを注ぐ音。
グラスの中の氷をカランッと回す音。
実際にはこうゆう音はしないのかもしれません。
リアルな音に近づけつつ、「記憶に残る」ようにプロの機材を駆使して更に加工を施しているわけです。
こうした、音という要素もシズルカットには重要になってきます。
魅力的でシズル感あふれる音、意識して映像を見てみるのも興味深いと思います。
・温かな料理や飲み物
ほわっと立ち上る湯気、グツグツと煮える泡立つ音、フライをカラっと揚げる音。
湯呑やマグカップの熱めの飲み物を注ぐ音。
・冷たい料理や飲み物
ひんやり、シャッキとした感じ、水滴の落ちていく様、カランッと氷が鳴る音。
お酒をトクトクトクッと注ぐ音。
・お肉
じゅわっと肉汁が溢れる様、ジュージューと焼く音、
チリチリと音をたてながら付く焦げ目、お肉のボリューム感。
お肉を切るナイフの音。
・フルーツや野菜
瑞々しさやフレッシュ感、美しい鮮やかな色、表皮や切り口の瑞々しさ。
ナイフでサクッと切る音。
・ソースやタレ
お菓子なら仕上げのソースやシロップをかける様、お料理にとろーっとタレをかける様、
垂れていく瞬間など。
美味しさを伝える要素として、ライティングも重要です。
料理撮影のライティングの基本は「逆光」か「半逆光」で撮ります。
たとえば、最近インスタなどで、料理の写真や動画を上手に撮っているかたも多く見受けられ、
一方では、なかなか料理の写真や動画がきれいに撮れないと、嘆いている方も多いのではないでしょうか?
きれいに撮るコツは、自然光の入る窓のそばに料理を置き、「逆光」か「半逆光」になる角度に料理をおきます。
それだけでも、みずみずしく料理が際立ってくるはずです。
プロはもちろん自然光だけに任せることはなく、
人工的に自然の光をライティングのテクニックで作っていきます。
専門的な話になりますが、光には「色温度」というものがあります。
「太陽光」「蛍光灯」「白熱灯」これを「色温度」で表すと次のような数値になります。
太陽光:5300~5600 K(ケルビン)
蛍光灯:4200 K(ケルビン)
白熱灯(黄色い灯り):3200 K(ケルビン)
色温度の単位K (ケルビン)が低いほど暖色系の色を発し、高いほど寒色系の色を発します。
夕食時の暖かなイメージを出すときには、白熱灯(黄色い灯り)を使います。
一番避けたいのは、蛍光灯の色温度です。
プロは絶対に蛍光灯の灯りで料理を撮影することはありません。
たとえば、みずみずしいトマトなどの新鮮野菜のイメージを出す場合は、
必ず太陽光 5300~5600K(ケルビン)に近いデイライトと呼ばれるのライトを当てます。
カレーやシチューのような温かい夕飯どきの家族をイメージさせるときには
白熱灯(黄色い灯り)のライトを使います。
逆光や半逆光で角度をつけて画角を決めるだけでなく、プロ技のライティングが大変ポイントになってきます。
また、最近のレシピ動画の中で黒の背景にアーティスティックに映えている動画は、
プロの技でないと、あのようにはなりません。
レシピ動画のライティングはそこかしこに、なかなか真似できないプロ技が込められているからこそ、
本当に美味しそうなシズル感となるのです。
皆さんはTV-CMなどで、すき焼き鍋の具材がキレイに美味しそうに盛り付けられているのを、
見たことがあるかと思います。
それをいざ、自分で家でやってみるとまったく上手くいかない。
あれは、プロのフードコーディネート、フードスタイリストと呼ばれる人たちが、
実に上手く盛り付けているのです。
これはまさにプロ技です。
私たち、どんなに器用な人でも、TV-CMのようにすき焼きを
きれいに並べて盛り付けるのはとても難しいでしょう。
このように、美しい料理の盛り付けの裏には、フードコーディネート、フードスタイリストと
呼ばれるプロ技を持つ専門のスペシャリストが存在するのです。
また、料理のシズル感・盛り付けでもう一つ大事なのは、色、艶(つや)感です。
料理の盛り付けのプロ技を駆使し、色、艶で立体感を出すことがポイントなのです。
まるでそのお皿が目の前にあるかのような立体感は、自然な陰影が重要なポイントです。
よく、TV番組の食レポでレポーターの人が食べながらコメントしているシーンに、
別カットで、食材のアップがインサートしているのを見たことがあるかと思います。
たとえば、想像してみてください。
出来立ての美味しそうな湯気の立ち上る親子丼。
真ん中に落とされた卵の黄身。
そっと卵黄に箸を入れると、とろーっとつややかな卵黄が親子丼にゆっくり広がっていきます。
そこをお箸で一口分すくい上げ、アップになる。
このカットのことを箸上げと言います。
箸を使ってなくても箸上げと呼んでいます。
こちらも想像してみてください。焼きたてのピッツア。
冷めると固まってしまうチーズをいかに美味しく撮るか。
スピード勝負です。
ピッツアをカットし、1カットを上にあげると、とろーりと伸びるつややかなチーズ。
ちらりと見えるトマトソースも食欲をそそる要素です。
ここでは、箸上げのタイミングとライティングがポイントとなり、
食材の魅力を存分に引き出し、際立たせるのです。
この食べる直前のシズルの臨場感がレシピ動画のキモとなります。
温かいもの:
温かく、グツグツ煮込まれているビーフシチュー、湯気が立ち上るお鍋。
ホカホカの肉まんを手で割り、そこから立ち上る湯気と美味しそうな匂いまでしてきそうですよね。
温かいもののシズル感には、湯気、ソースが煮込まれてプツプツと気泡が立つさま、
キッチンや食卓の「温度感」が大事です。
冷たいもの:
冷たいもののシズル感は、ひんやり涼し気。
艶感、水滴、実際に器やグラスをキンキンに冷やすなど、色々な工夫が必要です。
温かいものよりは伝わりずらい、冷たいもののシズル感。
特に氷は難しく、私たちは氷を使うシズル感の時には、家庭で作るような製氷は使用しません。
なぜならば、氷が不透明だからです。
氷を使用する際は、必ず純氷を使用します。
美しい透明の氷は、シズル感を出すのには必要不可欠です。
最近は、YoutubeなどiPhoneで撮影し自分で編集しレシピ動画をアップしている人も多くなりました。
しかし、TV-CM 企業サイト 店頭サイネージなどの動画ではiPhoneで撮影したものを全編に
使うわけにもいかない事だろうと思います。
レシピ動画の制作費用は、実際はピンキリだとお考え下さい。
どのようなレベルのものを求めていくかで桁が変わってきてしまいます。
プロが使用しているライティングも然り、演出方法によってはカメラも変わってきます。
たとえば、テレビCMや街中のサイネージなどで流れる、ビールのCM。
白く滑らかな泡立ち、ゆっくりとビールが注がれ、タレントの喉にゴクゴクっと入っていくさま。
暑い日には、それを通勤途中に観ただけで、「早く飲みたい!」と思うでしょう。
その他にも、ミルクが注がれたコップに一滴のミルクの雫が落ちて
表面が白い王冠のような形になっているのを見たことがあるかと思います。
これを「ミルククラウン」と呼んでいます。
このようなスローモーションの映像は、ハイスピードカメラ(スローモーション撮影)
と呼ばれる機材で撮影します。
とんでもなく高価な機材です。
たとえば、キューピー3分間クッキングのオープニングやTV-CMで
野菜がみずみずしく踊るように撮られたハイスピード撮影(スローモーション撮影)。
これは、相当の難易度の高い撮影手法で、何度もNGを出しつつ何テイクも続けたことと思います。
CGだと思った方も多いかと思いますが、逆にこの手法はCGではリアルにみずみずしく表現できないのです。
プロではないと扱えない機材だからこそ、魅せる演出が可能になるのです。
皆さまはシズル屋さんって聞いたことありますか?
私はこの業界に入るまで、「シズル屋さん」と呼ばれる職業は知りませんでした。
日本に数人しかいないと言われるシズル屋さん。
とてつもないプロフェッショナルな人たちなのです。
このシズル屋さんたちは、一般的にフードコーディネーターと呼ばれる人たちとは一線を画しています。
TV-CMなどで「きっとこれってCGでしょ?」って思ったCMの中には、
CGではなく実写で撮影したものが数多くあります。
たとえばビールのTV-CM。
キンキンに冷えたビールグラスに水滴が付いて、図ったかのような黄金比率のきめ細やかでなめらかな泡。
ビールのCMには必ず出てくる常套手段のシズルカットです。
これは、我々素人には絶対に創り上げられない技術で、こうしたものは「シズル屋さん」
と呼ばれるプロフェッショナルが介在しています。
「シズル屋さん」は彼ら独自のオリジナルの機材、オリジナルの器具、材料、オリジナルのノウハウで高度なテクニックを要するシズルを作り上げています。
一度私も、「どうやってやっているんですか」と無邪気に聞いてみたことがあるのですが、
当然、教えていただけませんでした。
シズル屋さんのテクニックは傍らで見ていても習得できるようなものではありません。
いわゆる企業秘密なので、我々制作スタッフも知り得ないことが多々あります。
「シズル屋さん」だけでなく、フードコーディネーターさんの役割としては、
野菜やフルーツをみずみずしく見せるために、霧吹きをかけフレッシュさを出したり、
食材に油を塗って艶感を出したりして、さまざまなテクニックを使っています。
美味しく見せるためのプロ技は、ライティングなどで「色温度」を見極めることも重要ですが、
その食材を見た目以上に美味しそうに艶やかに見せるためには、
こうした、水や油、時には口にしてはいけないものまで、様々な細工が必要かつ不可欠なのです。
ですから、シズルカット用と実際に食べるシーンではきちんと分けて準備しています。
何故なら、シズルカット用のものはおおよそ食べることができないものを混ぜて、
滑らかに見せたり、艶を出したり、泡を立てたりとありとあらゆる手段が使われているからです。
一度、ホワイトシチューのシズルカットでアクリル絵の具を混ぜているのを見たことがあります。(笑)
シズルカットにはいかに美味しそうに見せるか?
ということが重要で、そのテクニックには味や実際に食べられるかどうかは関係ないわけです。
シズルカットの映像の裏方では、
制作スタッフ、カメラマン、ライトマン、音効さん、シズル屋さん・フードコーディネーターさんたちの
経験値と秘密のプロ技で、魅力的なシズルカットが実現しています。
撮影手順を踏まえ、タイミングを調整し、最高の瞬間を作り上げる。
シズル動画には重要な役割となっています。
さまざま技術やプロ技が要されるシズルカットですが、どうゆう手法で見る人の五感に訴え
「食べたい!」「おいしそう!」という欲求を起こさせる、
いちばん大事な要素は、「演出」であり「設計図」です。
この「演出」「設計図」という、映像監督が作り上げるイメージが一番大事なのです。
それを叶えるためのさまざまなスタッフのプロ技が生きてくるのです。
https://www.artstech.net/works/1564
この伊藤園の水出し緑茶のCMのイメージは、
こどもの頃の夏休みが、楽しくて楽しくて仕方がなかった無邪気な頃。
昼下がり、お母さんが出してくれる冷たい飲み物。
そんなノスタルジックな想い出は皆さまにもあるでしょう。
ただ単にお茶が美味しく見えるだけでなく、あの時の想いや雰囲気、
懐かしく幸せだったあの頃の空気感を大切にしながら、このシズル感を出した作品です。
https://www.artstech.net/works/1047
ここで一番こだわったのは、シングルモルトウイスキーの高級感、セレブな世界観を大事にしています。
その上質な世界観を出すために、リッチなイメージの落ちついた音楽をセレクトし表現しました。
シズル感自体で、いちばん気をつけたのは「音」です。
氷がカランっとなる音、ソーダのシュワッーとした音。
サントリーの昔のCMは、音をとても印象的で魅力的に使っている企業でした。
サントリーのウィスキーを注ぐ「音」は、ある一定の年代の方であれば、
すぐに映像までも思い浮かべられることと思います。
それと同じくらい、魅力的で強い音をこの作品に入れてみようという、監督の狙いがありました。
店頭サイネージから聞こえてくるこの魅力的な音でお客さまが立ちどまり、美味しそう!と購入していく。
このシングルモルトハイボールが普及した要因はやはり、足を留めて魅入ってしまう聞いてしまう
シズル感の効果と考えます。
1949年に創業された老舗「やきとり 宮川」
https://www.artstech.net/works/1803
「鶏へのこだわり」「日本酒へのこだわり」「食材へのこだわり」「人へのこだわり」。
リアルなそれらを意識して、間近で「やきとり」を焼く臨場感を意識した、シズル感溢れる映像です。
「やきとり」を食べたいと思わせるには、
間近で見たことがない「やきとり」が焼けていく様子、焼いている音、たちこめる煙、
「やきとり」の匂いまでしてきそうな臨場感が、特に外国人観光客にウケました。
狙い通りのインバウンド向けプロモーション動画となりました。
2020年新型コロナの影響で、飲食店などの自粛要請、ステイホームでの中食需要など、
食とのかかわりも随分と様変わりしています。
レシピ動画や飲食業界のPR動画は単なるレシピサイトでの需要だけでなく、
飲食業や食品・飲料メーカーなどでも、ユーザーの購買意欲を掻き立てる
重要なファクターとなりつつあります。
飲食に関わる動画制作をお考えの広報担当の皆様へ、アーツテックは「戦略的」に
購買意欲を掻き立てる、シズル動画をご提案できます。
アーツテックが考える、動画戦略の根幹は、
人と人の距離(ソーシャルディスタンス)が離れても、
心と心の距離は、近づいていきたい。
こんな時だからこそ「体温と想いの伝わる動画」が有効であると考えます。
それが、アーツテックの「動画戦略」です。
この機会に、アーツテックの動画・映像戦略にご興味のある、ご担当者さまに
弊社の事例も交えてご案内させて頂きます。
広告戦略の拡大へ、ぜひ、つなげていただきたく思っております。
お気軽にアーツテックまでお問い合わせください。
詳しくはアーツテックまで!