「美の法則」 〜女性をキレイに撮る撮影術〜
2020.12.24 (Thu)
2020.12.24 (Thu)
「美の法則」
〜女性をキレイに撮る撮影術〜
インスタグラム、TikTokを始め、SNS全盛の現在は、まさに自撮りの全盛時代とも言えると思います。
自分で自分をキレイに写すための技術は、皆さん、よく研究されてると感心します。
しかし、第三者の立場で女性を撮影する場合となると、相手をキレイに撮ることはまだまだ難しいのではないでしょうか。
今回は「美の法則」〜女性をキレイに撮る撮影術〜と題して、数々のビューティCMや動画で名を馳せてきた、弊社代表・酒井靖之監督が、女性を美しく撮るためのテクニックを大公開いたします。
Contents
広告動画でいうところのビューティ動画とは、化粧品メーカーや美顔器メーカーなどが、自社の製品を購入してもらうために、モデルを使ってイメージを訴求していく動画です。
ここでは、モデルや女優を、いかにキレイに撮影するか。
そして、その人の持つ魅力を最大限に引き出していく方法論について解説していきます。
モデルさんをキレイに撮るためにはいくつかの方法論があります。
まず、ひとつにはメイク。
これは、メーキャップ・アーティスト、ヘアメイクと呼ばれる方々が担当するものです。
映像作品の場合は、監督が作品のすべてを担っているので、まず監督がメイクさんにどのような雰囲気の映像にしたいのかという狙いを説明します。
フェミニンなイメージにしたいのか、自立した強い女性のイメージにしたいのか、といったイメージをしっかりと伝え、意識あわせを行います。
いくらキレイに撮れても、商品の持つ魅力を訴求できなければ、その動画に意味は無いからです。
次に撮影技術です。
後述しますが、ビューティ撮影には、カメラワーク、被写体深度などを計算した上で、肌の質感をしっかりと捉える、撮影術的な側面が必要とされます。
そして何よりも欠かすことのできないものが照明です。
これはどんな撮影にも当てはまりますが、特に女性を美しく撮ることに関しては、照明の力こそ、最も大切なものになります。
さらには演出力。
相手の魅力を引き出すために、また、自分でも知らない魅力を引き出すためには、優れた演出の力が必要です。
監督自らモデルの気分を持ち上げたり、具体的な目の位置や眼力の強弱といったものを、言葉や雰囲気で伝えながら、被写体を輝かせていきます。
もちろん本人力も非常に大事です。
本人にまだまだキャリアや力が無い場合には、前述した演出力で、カバーしていくことになります。
しかし、本人力がある場合、演出力と相まって、誰しもが憧れるような、唯一無二の画が撮れるのです。
ヘアメイクという仕事に憧れを感じる女性は非常に多いのではないでしょうか。
この世界には、様々なヘアメイクさんがいます。
売れてるメイクさんもいれば、そうでもない人もいる。
僕の見る陰り、技術面ではそれほど差があるように思えないのです。
考えるに、モデルさんやタレントさんに信頼されるに足る人間力やコミュニケーション力を持っている人が、いわゆる売れっ子になっているように見受けられます。
「私のことを分かってくれている」という信頼感は、お互いに仕事がやりやすくなるだけではなく、“良い画を撮れた”という結果を生みだす。
モデルさんにとって、ヘアメイクさんが頼れる人であることは、とても大事なのです。
信頼できるヘアメイクさんだと、モデル側からも意見が言いやすいし、相乗効果も生まれるので、非常に良い状態で、撮影に臨めます。
現場に入るとモデルさん、タレントさんの味方はヘアメイクさん、スタイリストさんです。
同じ楽屋にいると、本音も言いやすい(監督への愚痴とか?)ので、コミュニケーション力や、相手の懐に入っていけるような力も、ヘアメイクとして必要な力なのだと思います。
逆に信頼感が生まれず、ギスギスした関係になると、最高の状態でモデルが撮影に臨むことができなくなります。
僕がよく一緒に仕事をするヘアメイクのTさんは、撮影前にスチーマーを使って、顔筋マッサージを行っています。
これがすこぶる好評らしく、たった一日ですが、はっきりと分かるくらいにフェイスラインがスッキリするのです。
お亡くなりになりましたが、田中宥久子さんという顔筋マッサージで一世を風靡した方がいらっしゃいました。
この顔筋マッサージによって、むくんだ顔が一瞬にしてスッキリしていくので、田中宥久子さんにお願いしたいという女優さんが非常に多かったと聞きます。
このように、何かしら、自分なりの技、強みを持っている人が、この世界で生き残っていける人。
“自分ならでは”の能力を磨くことも、売れていくためのコツなのではないかと思います。
また、相手の欠点、また美点を一瞬にして見抜くことができる眼力、悪いところをカバーし、良いところを引き立たせられる人は、モデルさんからの信頼も厚くなることでしょう。
いずれにしても、被写体、特に女性を輝かせるには、ヘアメイクの力は最も大切なものであるのは間違いありません。
フォトグラファーは、映像で言えば監督兼カメラマンのようなものですので、今回は映像・動画に限った撮影術をお話しさせていただきます。
映像の世界では、スチールと違い、被写体にカメラマン自身が具体的な注文を出すということはあまりありません。
被写体が10代、20代、30代、40代と年代に合わせて、使うカメラや仕上がりのトーンも違ってきますので、監督と入念に打ち合わせをしながら、機材を選択していきます。
肌の調子の良くない人には、ドイツ製やアメリカ製の高価なフィルターを使い、撮影時になるべくカバーしていきます。
現在は、なんでも後処理でカバーしようという風潮があります。
しかし、後処理された人工的な映像が、モデルの本当の肌の質だとは誰も思わないでしょう。
SNSのような世界ならそれでもいいのでしょうが、CMや動画だと、やり過ぎの後処理には、「レタッチし過ぎ!」「いじり過ぎじゃない!?」という声を生むことになってしまう。
本当の肌質であるかのように、ナチュラルに見えてこそ、プロ技。
そのためには、撮影時にカバーできることは、撮影時にやる、が鉄則。
カメラマンは、その女性が一番輝くカメラの構図を見つけて、適切なフィルターを用いて撮っていくということが大事になってきます。
前述したように、照明こそが、ビューティ動画の決め手であると言っても過言ではありません。
資生堂なりエスティ・ローダーといった化粧品の大メーカーのCMや動画をぜひご覧ください。
恐ろしいくらいの美しい照明に照らされたモデルが、眩いばかりの輝きを放っています。
こうした一流の化粧品メーカーを担当する照明さんは、その世界ではトップクラスの存在であることは間違いありません。
僕もありがたいことに、若い時代からトップレベルの照明さんと仕事をさせて頂いたことで、「照明とはかくありき」を学ばせて頂いたと感謝しています。
基本的な照明術を解説します。
まず、白ホリと言われる白いスタジオに女性が立っていたとします。
一方向から光を当てると、当然ですが、光と反対側に影ができてしまう。
反対側からも光を当て、影が無い状態にします。これが基本です。
ビューティ系の照明においては、強い光をそのまま生で当てることはありません。
必ず、ディフューズと言われる、光を拡散させるペーパー等でライトを覆い、光を柔らかくします。
例えば、夏の燦々たる太陽の下では女性は絶対にキレイに写りません。
なぜなら光源が強すぎるために、目の下や鼻下に影が出来てしまう。光も硬いので、肌が美しく輝かないのです。
薄い雲が太陽の前をさえぎると、これらの影は消え、は柔らかいトーンで写ります。
これがディフューズの原理です。
このような柔らかい光を被写体に当てていくと、不思議なくらい柔らかいトーンに映像が変化するのです。
さらには、キャッチライトという、目の中に光を入れるためだけのライトや、欠点をカバーするためにポイントだけに当てるライト。
さらには、背景にくっきりと人物を浮かび上がらせるために、後ろから当てるライトや、肩や首などの一部分に当てるためだけのライトなどもあります。
このように、ビューティライティングは非常に大がかりになることが多い。
また、ライトの種類も、タングステンと言われるものから、LED、または太陽光に限りなく近い、HMIと言われるライトもあり、千差万別です。
LEDも最近は高性能になってきましたが、女性の肌質感をきれいに浮かび上がらせる点では、まだまだタングステンやHMIに一日の長があります。
またファッションライティングと言われているものには、全体に照明を回すだけではなく、一方に暗部を作ることで、女性の強さを表現したりもします。
作風や演出意図によって、ライトの当て方は何千、何万通りもあるのです。
いずれにせよ、モデルや女優さんがまばゆく輝くようにライティングができてこそ、プロフェッショナルな照明と言えます。
監督が照明さんとコミュニケーションを取る際は、どういう風に見せたいのか、明るく健康的に見えるライティングなのか、屹立した強さを感じる女性にしたいのか、またはボタニカル系なのか、モード系なのか、といったイメージを伝えていきます。
事前に「技打ち」と呼ばれる技術的な打ち合わせを行った上で、どういうライティング、どういうトーン、ルックにするのかという話し合いをしっかりと行っていくことが、僕たちの世界では当たり前になっています。
監督が、現場で照明の具体的な方法を指示することは、ほとんどありません。
餅は餅屋。彼らもプロですし、越権行為は、彼らのプライドも傷つけてしまうからです。
どんな作品でも、仕上がりイメージを唯一理解しているのが、演出を担当する監督です。
演出において重要なことは、重複しますが、ヘアメイク、撮影、照明の方と、事前に意思の疎通、コンセンサスをしっかり取っておくこと。
現場においては、女優さんやモデルさんの魅力をいかに引き出してあげるか、それが演出力の重要な部分になってくると思います。
僕の場合は楽屋に挨拶に行った時に、さりげなくモデルさんの顔を見て、「ここから撮ったら彼女は輝く」といった部分をしっかり盗み見します。
もう一つは、仕事上の打ち合わせだけでなく、多少の私語的な会話も入れつつ、フランクに話をして、距離感を縮めるといったこともします。
お互い壁を作ったままでは、遠慮して、なかなか踏み込んだことを言えないことが多い。
だからこそ、楽屋の中では、自分を信頼してもらえるような会話を心がけます。
また、そのモデルさんが色気のある方なら、明るい色気なのか、エロい色気なのか、どういう色気が本人に似合っているのか、どうすれば視聴者に受け入れてもらえるかも、瞬時に見抜くようにしています。
撮影時、僕たちはモニターを見つつ、「カメラがこう来たら、ここで目線がほしい」というような具体的なタイミングを伝えたりします。
僕は、皆さんが想像するような「いいね! いいね!」というような言葉掛けは、恥ずかしくて、あまりしません。
そのかわり、その作品の雰囲気にそった音楽を、スタジオ中に響き渡る大音量で掛けています。
色気を出して欲しい時には、そうした気分になれる音楽をかけますし、元気な表情が欲しい際には、元気の出る音楽をかけます。
それだけで勘のいいモデルさん、女優さんなら、演出意図にそった表情や仕草をしてくれるものです。
なんと言っても最後の決め手は本人力です。
例えばドラマで、どんなにすごい監督であっても、役者が棒読みだとどうにもならないのと一緒。
モデルさんが一流の人であれば、口角の上げ方、手の仕草まで、自分が美しく見える方法を知り抜いています。
バレエダンサーのように、頭のてっぺんから足先までちゃんと神経が行き届いているものです。
訓練がまだ足りていない方は、表情が硬かったり、背中が丸まっていたり、歩き方にして、もモデルウォークとは程遠い、膝の出た歩き方だったりします。
これでは、演出力、撮影テクニックに頼るにも限界があります。
映像に写る商売をしている以上、常日頃から、努力、研究を重ねて頂きたいと思います。
自分を俯瞰して見ることも大切。
こうなりたい、ではなく、自分の本当の強みとは何なのか、ちゃんと第三者から本音を話してもらい、アドバイスを頂くことが大切だと思います。
唯一無二のビューティな画を作り上げるのは、本人の力が何よりも大事。
そこに撮影術、照明術、演出術、ヘアメイクが相まって、視聴者の心を鷲掴みにして離さない画が作られていくのではないか、と僕は思っています。
「美しくいたい」
これは古今東西変わらぬない、女性の欲求。
現代は、女性の時代となり、この欲求に、さらに拍車がかかっているように見えます。
ビューティ動画も、その需要が廃れることは無いだろうと、僕は思っています。
女性を美しく輝かせる仕事をさせて頂いており、僕は非常に光栄だと感謝しています。
モデルさんや女優さんから、「今まで撮った中で一番キレイに写ってます」と言ってもらえるように、僕も日々努力をしていかなければなりません。
より具体的なテクニックは、また続編でご紹介させて頂きます。
日本屈指のクリエイター、酒井靖之監督が
最前線のクリエイティブの話題から、
人生に役立つ情報まで縦横に語り尽くす!
クリエイティブに生きたいすべての人に贈るYouTubeチャンネル「sakaiTV」。
売れる動画・映像制作のパイオニア