映像業界の次代を担う、若き人材たちへ
2021.04.27 (Tue)
2021.04.27 (Tue)
映像業界の次代を担う、若き人材たちへ
弊社代表酒井靖之監督が、映像業界に飛び込んできた若き人材たちへ贈る、
熱きメッセージです。
夢を追い続けている人、壁にぶつかっている人、
自分を見失いそうな人も必読!
Contents
まずは、映像業界に飛び込んできた若き人材の皆さま、大変おめでとうございます。
皆さまの成長なくして、映像業界の未来はありません。
皆さまの活躍を心から期待しつつ、このコラムを書かせて頂きます。
僕たちの時代、映像業界に飛び込むのは、映画やミュージックビデオ等の、非常に高い感性や技術を要する作品に感化された人がほとんどでした。
時は移り、今ではユーチューバーの動画だったり、メイクのHOW TOものに影響を受けてこの業界を志す人も多いと聞きます。
いずれにしても、動画・映像制作は、作品を通して、人々に何らかの影響を与えていく仕事です。
時には、1本の作品が、その人の人生にまで影響を与えることもある。
だからこそ、若い人たちにはプロフェッショナルの意識を持って、この道を進んで頂きたい。
その中で、非常に大事だと思う点を幾つか挙げてみたいと思います。
「クリエイティブ」と言っても、あくまでもビジネスの世界だということを忘れてはいけないと思います。
クリエイティブ業界というのは、特別な才能を持った人たちが、ビジネスマンとは違うスタイルや格好で、独特な生き方をしている、と思っている方も多いと思います。
それはとんでもない間違いです。
広告だろうが、エンターテイメントであろうが、動画業界はビジネスで成り立っているということを忘れてはいけないと思います。
特に広告の世界というのは、業界の人やスタッフ間だけで打ち合わせをしたり、仕事を進めていくわけではありません。
一般の社会で勤めていらっしゃるビジネスマンと相対して、制作を進めていかなければなりません。
きちんとした挨拶や名刺交換もできず、コミュニケーションも取れない人が、果たして一般の社会で鍛え上げられている方々に、信頼されるでしょうか。
まずは社会人として当たり前のルールをしっかりと学ばなければいけません。
クリエイティブを学ぶ前に、まずは社会人としての心構えを学んでほしいと思います。
それには、しっかりとした、気持ちの良い挨拶が基本です。
挨拶こそ、コミュニケーションの基本中の基本。
特に、ビジネスの世界で修羅場をくぐり抜けてきている歴戦の勇士は、挨拶には非常に敏感です。
信頼を勝ち取るためには、まずは挨拶から。
また、相槌を打つにしても、ちゃんと相手の目を見て行うこと。
お客様や目上の人に対する所作や言葉遣いなど、これらをきちんと習得することが、はじめの一歩です。
話は飛躍しますが、この業界で冠たる名前を持っている人たちーー優れた俳優、監督、プロデューサーやスタッフは総じて、社会人としても一流の人たちです。
おそらくこの業界ではなくとも、大勢の部下を率いてトップに立てる存在だと思います。
アマチュア時代は自分の好きなことをやっていれば良いのですが、プロはそうはいきません。
僕も自主映画の経験がありますが、趣味を同じくする同世代の人たちで作った時の、ああでもない、こうでもない、と議論に花を咲かせたり、一致団結して頑張り抜いたりといった、楽しい思い出をお持ちの方も多いと思います。
僕の場合は、最初から賞を狙っていて、一緒に組んでいた仲間は、現在とんでもない撮影監督になっていたり、日本アカデミー賞を受賞するような人と現場をやっていたので、意見が合わない時はマジ喧嘩。
決して楽しい思い出ばかりではありませんでしたが・・。
まぁ、アマチュアは好きなことをやっていればいい。
しかし、プロはそれだけでは済みません。
最初からプロデューサーや監督という立場でやるなら話は別ですが(でも、そんな人はいません)。
まずはリーダー(演出志望なら監督。カメラマン志望ならカメラマン)としっかり呼吸を合わせて、きちんと助手を務められるかが第一です。
助手を務めるということは、ただ言われたことだけをやればいい、ということではありません。
それなら高校生のバイトで十分です。
「これを運んでくれ」「はい、運びました」
「〇〇を持ってきてくれ」「はい、持ってきました」
こんなことは誰にでもできる仕事です。
優れた助手というのは、例えば監督の助手に就くならば、この監督が今、頭の中でどういうことを考えているのかを察知して、監督が手を出せば、欲しいものをすぐに渡せられるくらいにならなければなりません。
また、助手とメインの人間の仕事は違います。
たとえば、監督が脚本を書くとします。
助手の方は、監督が脚本を書きやすいように、資料を全部コピーしておき、重要な部分にマーカーを付けておく。
編集もやりやすいように、監督の構成台本に従って、カットを用意しておく。
撮影の時は脚本を読み込みつつ、必要な小道具のリストを提出して、「必要なもの、不必要な物があったら言ってください」と言うくらいの気の回し方をする。
そうした訓練を経て、メインに立っていけるのです。
まずはツーと言えばカーという関係を、メインの人と構築できるような力を養っていかねばなりません。
また、僕の場合、いきなりテクニックは教えません。
社会人としての心構え、気の使い方、気の回し方を、僕は重視しているのです。
なぜなら、撮影現場で一番必要とされるのは気が利くことだからです。
特に撮影スタッフは、ほぼ肉体労働と言っても過言ではありません。
例え40℃の炎天下でも、「そろそろ休憩させて下さい」なんて言うスタッフは一人もいません。
監督、もしくはプロデューサーが「休憩!」と言うまでは、トイレにも行かないようなプロフェッショナルな人たちです。
そういう人たちに、どのように気を回せばいいのか。
例えば、言われなくてもクーラーボックスに飲み物を用意しておく。
寒い時は温かい飲み物を出せるように、いつでも準備しておく。
気遣いをして嫌がる人は一人もいません。
こういう気構え、心構えが、やがて自分がトップになった時に生きてくる。
話はそれますが、たとえばAさんという一流のカメラマン、Bさんという一流の編集マンがいるとします。
そしてC監督。このC監督はやり手です。
C監督は、Aさん、Bさんを従え、最高の作品を作り上げていきます。
しかし、例えばD監督という人がAさん、Bさんと組んだとしましょう。
同じように、良い作品を作れるでしょうか。
そうとは限らないのです。
それがクリエイティブの世界の難しいところです。
特にトップに立つ人、監督やプロデューサーと呼ばれる人は、やはり、演者やスタッフから、ある種のリスペクトをされていないといけないと思うのです。
Aさん、Bさんが一流の技術を持っていたとしても、全員の監督に同じ技術を提供したり、必死になってくれるわけではありません。
例えば黒澤明監督が映画を撮るとしましょう。
きっと、全スタッフが、今まで培ってきた技術の粋を尽くそうとするでしょう。
僕もスタッフの一員になったら、恐らくそうします。
黒澤監督の能力を私たちは知っているし、そんじょそこらではOKを出してくれないことは、この業界ではなくても分かると思います。
ところがD監督が、作品に対してさしたるイメージもなく、何でもOKを出す人だとしましょう。
それではスタッフが全力を尽くしてくれることはありません。
つまり、リーダーとしての資質が無ければ、大勢のスタッフの本気を出させることはできませんし、良い作品を作ることは難しいのです。
つまり、一流のクリエイターは、一流のリーダーであるということです。
僕の教育方針は、一流のリーダーになるための訓練といっても良いと思います。
ウチの会社はロケ弁にこだわりを持っています。
スタッフからも、出演者からも、「アーツテックさんはいつも愛のある弁当を出してくれる」というありがたいお言葉を聞きます。
毎回、プレッシャーを感じながらも、その期待に応えようと頑張っています。
“強い将は戦術だけではない。闘う人たちを想う気持ちがなければならない。”
これは、僕の師匠から学んだ人生学、将軍学です。
戦の最中。
寒空で暖をとる兵士たち。
明日の命も知れぬ中で、「殿から一杯の豚汁が届いたぞ」との知らせ。
それだけで、闘っている側の士気は格段に上がると思います。
兵法は術だけではないのです。
いかに闘う人たちを想いやれるか。
僕はそれを若き日に学びました。
僕も助手時代に、皆が当たり前のように食べ慣れたロケ弁を注文している時に、自分だけは知り合いの馴染みの居酒屋に頼んで、温かい釜めしを何十個も作ってもらったりしました。
現場で豚汁を作ったこともありました。
夜明け前からの仕込みで、数十人分の豚汁をみな「美味しい」と言ってくれたことは、良き思い出となっています。
別に人気取りでやっていたわけではありません。
僕は、助手でしたが、良い作品にしたかったのです。
力のない自分が、どうしたら作品に貢献できるか。
ただその気持ちだけで、豚汁を作りました。
誰の目にもつかないところで努力していると、おもしろいもので、誰かがちゃんと見てくれているのです。
その時のカメラマンや照明さんが「お前は将来、すごい監督になるぞ」と言ってくれました。
その当時はよく分かりませんでしたが、やはり自分の仕事の姿勢を見て頂いていたのかも知れません。
だからこそ僕は、若い人たちには弁当ひとつ、飲み物ひとつ、お菓子ひとつを提供するにも、もっと知恵を振り絞ってほしいと思っています。
単に自分の好き嫌いだけではなく、
この年代の人たちに、この食べ物はどうなんだろうか、皆に喜んでもらえるものは何だろうか。
もっともっと考えてもらいたいと思っています。
そういう努力は、必ず自分に良いカタチで返ってくる。
僕はそう確信しています。
お弁当にしても、大人な人が多めの現場では揚げ物系じゃないものを選ぶべきだと思うし、若手のスタッフが多い場合は、がっつり系と半々にするとか、相手に対して、きちんと気を利かせること。
それは映像の作品をつくるのと同じです。
見る側、受け取る側に、思考や目線を合わせていかなければならない。
これがものづくりの基本だと思います。
今はコロナ禍でなかなかできないのですが、飲み会の場所は若い人に決めさせていました。
食べログなどを使って調べる人もいましたが、グルメサイトほど当てにならないものはないと僕は思っています。
周りのスタッフから、けちょんけちょんに言われる人もいましたが、それも全て勉強。
ちなみに僕は初めて入る飲み屋で、ほとんど失敗したことがありません。
看板、雰囲気、メニュー構成を見極めるのです。
これも長年培ってきた審美眼のなせる技?だと思っています(大して自慢もできませんが・・)。
クリエイターになりたい人は、審美眼を養う努力を怠ってはいけないと思います。
僕が師匠から教わった最も大事な事は、
「一流に触れていけ」
ということ。
絵画、音楽、映画、食やファッション、サブカルチャーに至るまで、すべて一流のモノに触れて、それを基準にすること。
基準値が高まれば、自ずと審美眼が養われていきます。
この世界に入って半年、1年、2年位は、毎日が自分のなすべきことで精一杯でしょう。
3年目位になると、「果たして自分は、自分の目指している立場にいけるのだろうか」という現実の壁にぶつかります。
それは、当然だと思います。
人も羨むような人気職業が、そんな簡単なはずがありません。
十代、二十代の時に、壁にぶち当たった経験の無い人は、そこでくじけてしまう人が多い。
本当に残念です。
壁は必ず来るのだ、ということを自覚していただきたい。
そして、その壁は自分の努力次第で、必ず越えられるのだ、ということも知っていただきたい。
自分の話で恐縮ですが、壁を越えたら、次の壁が必ず来ました。
その壁を必死になって打ち破ろうと、這いつくばるように、よじ登るように越えて行った先に、また壁が立ちふさがる。
この業界に身を投じてから十数年は、過去を振り返ったことはありませんでした。
いつもいつも壁にぶち当たり、壁を乗り越えることに必死だったから。
そして十数年が経ち、はじめて過去を振り返った時に、自分はここまで登って来たのか、ということに気付いたのです。
目の前の壁を越えるということが、やがて大きな山を越えていくということ。
一歩一歩の前進がやがて大きな実を結んでいくのだ、ということ。
そうした事実に、その時初めて気が付きました。
自分が成長するに従って、壁は大きくなっていきます。
しかし、何度も壁を乗り越えていくと、壁は絶対に乗り越えられる、という確信も芽生えてくるものです。
すなわち、自分自身を信用できるようになる。
結論を言うと、自分を信用できる人が、夢をつかめる人なのだと思います。
自分もまだまだ越えるべき壁があります。
しかし、それは絶対に乗り越えられるという確信もあります。
若い皆さんたちにも、壁を越えて、さらなる高みへ昇って頂きたいと願っています。
クリエイティブ、特に映像の世界でディレクター、監督になりたいという人には、勉強すべきことが山ほどあります。
何から手を付けていいのか、途方にくれてしまうのも無理はありません。
なぜなら、映像というものは総合芸術だから。
カメラの基本的なことはもちろん、構図、照明、光、音楽、衣装、脚本を書く人ならば、経済の仕組み、世界情勢、専門的な分野なども知っておかなければなりません。
知らなければ「監督、これはどうしましょうか」と聞かれた時に、何も答えられないでしょう。
CMなど、広告に携わる人は、基本的にビジネスというのは、どう成り立っているのかも学ばなければなりません。
経済の仕組み。需要があって供給がある。
では、どうやって需要を作っていくのか。
こうした経済の当たり前の論理から学ぶべきだと思います。
具体的なクリエイティビティに関しては、僕は最初からムービーカメラを使うことには反対です。
全ての映像の要素は一枚画(スチール)に凝縮されているからです。
ぜひ、スチールカメラを学ぶことをお勧めします。
スチールカメラと言っても、iPhoneではなく、できうる限り、一眼レフやミラーレスカメラのようなものを使い、シャッタースピード、露出を操作できるようになることがまず大事だと思います。
そうしないと、運が良ければ良い画が撮れる。運が悪ければ撮れない、といった“運を天にまかせる”クリエイターになってしまう。
もちろん、シャッタースピードや露出を知らないディレクターもいます。(ちなみに、結構います)
ただし、そうなると撮影は全てカメラマンまかせになってしまう。
たとえば曇天の日があったとしましょう。
曇天の日に、人物をシルエットにしてほしいと言われても、原理的にできないわけです。
日中の晴天(ピーカン)の時に明るい背景をバックにするならともかく、曇天の日にシルエットにするのは難しいこと位は、カメラを撮ってる人にはすぐ分かります。
それくらいの事が分からなければ、カメラマンに「この監督は何もわかってない」と馬鹿にされ、モチベーションも下げてしまう結果になりかねません。
この監督はなんでも分かってるな、誤魔化せないな、というくらいの能力を身に付けて頂きたい。
撮影に関しては、最低限、フレーミング(構図)、露出、シャッタースピードとは何か。
光を操る、とはどういう意味か。
こうした最低限のことは知っていてもらいたいのです。
それには、何百年の歴史を持つ写真の世界を学ぶことが近道です。
少し値段は張りますが、最高機種ではなくていいので、シャッタースピードや露出をマニュアルでコントロール出来るカメラで狙って良い画を撮る練習をして下さい。
何気なく撮るのではなくて、こういう写真を撮ろうと決めて、撮影するのが一番勉強になると思います。
最初はなかなか自分のイメージ通りにはいきません。それが普通です。
なぜ、狙った画にならないのか。
どのような条件、要素が足りないから、撮りたい画に近づけないのか。
それを知ることも大きな勉強になります。
そして、いつも言っていることですが、引き出しを増やすために、様々な本を読むこと。
遠回りだと感じるかも知れませんが、これが結局一番の近道です。
これも毎回言っていますが、アイデアというものは導き出すもの、辿り付くものだと考えています。
何も無いところから、啓示が降りてくるようにアイデアを思いつく、ということはあり得ません。
とことん考え抜いて、集中力が極限までに達した時に、自分の中に培ってきた引き出しーー様々に見たり聞いたり影響を受けてきたものが、見事に繋がって、新しいカタチへと生み出される瞬間があるのです。
これが、僕がいつも経験している「出来た!」という感覚です。
だから、インプットの無い人は、そもそも発想することが難しい。
また、映像で見たインプットというのは、どうしても模倣になりがちなので、自分の頭で想像できる読書というものが、発想を磨く上では、非常に大事になってくると思います。
よくウチに入りたいという人で「私は〇〇のソフトが使えます」という方がいますが、結論から言うと、編集ソフトというものは、現在では素人の方でも使えるように出来ているので、基本的な編集ソフトの使い方はそれほど難しいものではありません。
ただし、良い作品を編集するのは大変難しい、と言えます。
それはソフトによって成し遂げられるものではないから。
あくまでも、ソフトというものは、作品を作る上での道具でしかありません。
肝心なのは、発想力やクリエイティビティの方です。
どういうリズムで編集すれば、人が心地よく感じるのか。
格好良く感じるのか。
それは何千回、何万回とカットを繋いで会得していくしかありません。
全てはコツコツと一歩ずつ前に進んで行くしかないのです。
繰り返しますが、ソフトを覚えることは難しくありません。
しかし、良い作品を作るのは、いつになっても難しい。
ただ私たちはプロなので、狙った上で、良い物を作らなければなりません。
運が良ければいい作品になる、というのではプロではありません。
プロとして何百万、何千万ものお金を頂いて作品を作る以上、必ずプレゼンテーションした以上の作品を提出しなければなりません。
メインに立つ人は、いつでもこのプレッシャーを抱えて仕事をしなければならない。
夢にまで見た、その立場になるその時のための、毎日毎日の訓練なのです。
映画やドラマの世界には、十年、二十年と助手を務めている人が少なくありません。
あえて言わせて頂きますが、こうした人たちに巣くっているのは、「助手根性」です。
僕は若い頃から助手根性を捨て去るように、自分に言い聞かせてきました。
もちろん、メインの立場は、メインになってみないと、現場での緊張感やプレッシャーをなかなか感じづらいと思います。
しかし、僕は助手時代から、メインと同じ緊張感を持つように心掛けてきました。
いつまでも助手でいたくなかったからです。
早くメインの立場に立ちたかった。
僕のことではありませんが、優秀な助手には、“助手根性”はないのです。
メインの人と同じ気持ちで仕事に取り組み、メインを最大にアシストできる人が、やがてメインに立っていける人です。
それには、普段の仕事の姿勢が大事。
映像制作会社の普段の仕事というものは、非常に地味なものです。
スポンサーとのメールのやり取りだったり、資料集めだったり、香盤表を作成したり、といった地味な仕事のひとつひとつを上の方に見せた時に、当然、
「ここを直して、あそこを直して」と言われる。
新人なら当たり前です。
でも、2年目、3年目でも、相変わらず同じ所を指摘されているようでは、考えものです。
そのままにしておくと、助手根性から抜け出せなくなってしまう。
メインに立つ人の場合は、誰も直してくれない。
自分がOKを出したものを、提出しなければならない。
だからこそ、全てにおいてシビアになる。
シビアに仕事をするから、さらに成長する。
この差なのだと思います。
だから、上長に見せるちょっとした書類でも絶対に赤を入れさせない、という気持ちを持って、一つひとつの仕事に臨んで頂きたいと思うのです。
結局、大事なことは覚悟だと思います。
今は人生100年時代。
本当に夢を成し遂げたいのなら、僕らの時代のように週に3回徹夜しろ、とは言いませんが、ただ3年間くらいは、自分の仕事を第一にしてほしいと思います。
もちろん、人生観の違いや多様な考え方もあるでしょう。
しかし、この業界で何かを成し遂げたいのであれば、せめて3年間は、自分の仕事と自分の訓練を最優先にしてほしいと思います。
今でも、俳優志望者は、アルバイトをしながらオーディションを受ける日々。
収入は、普通のフリーターの方よりも少ない人も多い。
そうした中で、夢をつかもうと努力を続けている人もいっぱいいる。
これが、映像の世界なんです。
ごく基本的な事ばかりで「なんだよ、もっと具体的なテクニックを教えてくれよ」と思われた方もいるかと思いますが、これは、僕が映像業界で二十年以上に渡ってやらせて頂いている中での、ひとつの確論です。
僕自身、肝に銘じていることは、感謝の心を忘れないこと。
そして、いつも冷や汗をかき、脂汗を流し、時に涙まで流しながら壁をよじ登っていた時の、あの初心を常に忘れないこと。
その気持ちがあれば、何歳でも、まだまだ成長していけると思っています。
素晴らしい作品を創るのは、リーダーとしての資質が大事。
もっと言えば、「人間力」が大事。
詮ずるところ、「人間力」が、そのまま作品の質に色濃く反映するのです。
だからこそ、僕も人間としてもっと一流になりたいと思っています。
それはとても難しいことだけれども、僕は挑戦し続けます。
どうが、若き人材の皆さまも、自分自身に誇りを持って、自分に嘘をつかず、自分の夢に生き切って下さい。
そして、素晴らしい作品を、社会に提供してください。
心からそう願っています。
また機会があれば、第二弾を書かせて頂きます。
(文・酒井靖之)
日本屈指のクリエイター、酒井靖之監督が
最前線のクリエイティブの話題から、
人生に役立つ情報まで縦横に語り尽くす!
クリエイティブに生きたいすべての人に贈るYouTubeチャンネル「sakaiTV」。
売れる動画・映像制作のパイオニア