「はじめての絵コンテ」 〜 プロが教える絵コンテの描き方 〜
2022.02.21 (Mon)
2022.02.21 (Mon)
スマホさえあれば、だれでも撮影できてしまう時代。
映画好きの仲間で集まり、ドラマを撮ってみようということで、いざ撮影しようとカメラを構えると、どこを背景に、どのように撮るのかが全く分からず、みんな困惑してしまう。そんなことが少なからずあるようです。
それは、スタッフ間での情報共有、コミュニケーションがなされていないのが原因です。撮影においてコミュニケーションの手段はいくつもありますが、絵コンテというのはその一つの強力なツールです。今回は、はじめての人でもわかる、プロが教える絵コンテの描き方を伝授したいと思います。
Contents
コンテと言われるものは、映画・テレビドラマ・CM・動画制作など、撮影をする前に作成するいわゆる設計図や指示書のようなものです。映像のカメラワークやカット割りをラフ画などで表します。
クライアントや撮影・編集に関わるスタッフの間で、イメージを共有することが目的です。これらのコンテには3つの種類があり、「絵コンテ」「字コンテ」「ビデオコンテ」に分けられます。
今回は絵コンテについての解説をします。
絵コンテは、映画やテレビドラマ、CMなど監督や演出家が撮りたいと思い描く動画の構成や、世界観を出演者やスタッフに伝えるための重要な資料になります。
絵コンテを共有することによって、その後の制作スタッフは必要な撮影場所やどんなスタジオが必要なのか、衣装から消えモノと呼ばれる食事などの小道具、機材などを具体的にイメージし、準備することができます。また、キャストやスタッフ全員が撮影の内容や構成を理解することができ、撮影現場の進行をスムーズに行うことができます。
また、絵コンテはクライアントに制作する動画の構成を提案する際にも使われます。コンペなどの参加の際には、提案書の中にイメージしやすい絵コンテをつけることにより、競合に差をつけコンペで勝ち取ることができます。
またクライアントから撮影後に「イメージと違う」などのトラブルを回避するためにも、動画全体の構成イメージの共有をし、事前にコンセンサスを取ることがたいへん重要になります。
動画・映像制作において絵コンテは、いわゆる設計図です。基本的に絵コンテは監督が作るものです。絵コンテを作ることによって、頭の中のイメージを整理し、作りたいものを明確にしていきます。自分一人で好きなものを好きなように撮影する場合であれば、絵コンテは必要ありません。
仕事上で動画・映像制作を行う場合は、たくさんのスタッフが関わる場合が多いです。その際に、監督の頭の中にあるイメージを他の制作スタッフと共有する意味で、絵コンテが必要となります。絵コンテがあれば制作スタッフ全員が完成イメージを共有できるので、動画の完成度も高くなります。
また絵コンテはクライアントに対し企画提案する際にも、わかりやすく伝えることができます。このように絵コンテは動画・映像制作において、特にチームで動画・映像制作をする場合には欠かせないものです。
絵コンテに描くのは、頭の中にあるイメージを動画・映像化するために必要となる、すべての情報です。
出演者の動きやセリフ、場所の状況、ライティング、カメラアングル、場面ごとに見せたいものなどの情報を集約して描いていきます。制作スタッフがどんな映像を作るのか、共通の認識で、動画・映像制作を進めていけるようにすることが目的です。
「私は絵が描けないから敷居が高い…」と考えている方は、ご安心ください。どんな動画・映像を撮るのかをイメージできることが絵コンテの目的なので、その手段は問いません。イメージしている写真を探して貼り付けても良いですし、実際に写真を撮って貼り付けてもかまいません。どうしてもイメージ通りの写真がない場合は、いろいろな写真を切り貼り加工して近づける方法もあります。とにかく、工夫することです。
実際に絵コンテを描く際に、基本となるポイントがいくつかあります。そのポイントごとに、一つずつ解説していきます。
絵コンテを描くときには、実際の映像と同じ縦横比で描くというのがポイントです。動画を放送する媒体によって、縦横比のサイズが異なる場合があるためです。
たとえば、テレビ、YouTubeの縦横比は16:9、instagramは、1:1、TikTokは9:16の縦長です。
絵コンテを描く際にも、実際に動画を放送する媒体の縦横比に合わせ、コマ割りをしておく必要があります。縦横比によって、映り込むもののサイズが違ってくるので、カメラ、レンズの使い方が全く異なるからです。これを間違ってしまうと、撮影現場で機材が足りていないことがあったり、画角を決めるのに余計な時間がかかってしまうことになります。
絵コンテを描くときには、絵のうまさではなく第三者へのわかりやすさ、伝わりやすさを意識することがポイントです。
絵が下手でも問題ありません。スタッフなど自分以外の人が見たときに、必要な情報がきちんと伝わることがもっとも大切です。人の絵がうまく描けないという場合には、丸と十字線を使って描けばOKです。いわゆる棒人間です。十字の交わる部分を鼻にすれば、顔の向きもわかります。
また、絵で描ききれない部分は、文章によって補足を入れることも可能です。これをト書きと言います。とにかく第三者にわかりやすい絵コンテとすることがポイントです。
絵コンテは、作品を作る上での設計図で、最終的な作品になるわけではないですから。そこは、絵にこだわり過ぎず、割り切ってやることも重要です。
撮影のイメージを「具体的に描く」というのが、もっとも重要なポイントです。
1カットずつ、どんな構図にするのか、顔の向きはどうするのか、衣装やセリフはどうするのか、場所はどこなのか、セリフはあるのかなど、できるだけ具体的に描いていきます。重要な情報から描くようにして、後から振り返り、少しずつ情報を加えていくようにすることも完成度を上げる上で重要です。
それでは、具体的な手順をご説明します。
絵コンテを描くには、まずフォーマットを用意します。
自分でコマ割りをして作成しても、ネット上でフォーマットをダウンロードしても良いです。その際には、動画・映像の縦横比をしっかり意識しましょう。
絵コンテはシナリオに沿って描いていきます。今回はシナリオがあるという前提で話を進めさせていただきます。
絵コンテは、シナリオに書かれた文章を具体的な絵に起こす作業とも言えます。文章から捉えたイメージを、イマジネーションを膨らませ、具体化します。
ここで余談ですが、ドラマの撮影では、台本は用意しますが、絵コンテは用意しません。なぜかというと、スタッフは絵コンテに描かれた絵をそのまま再現しようとし、実際に撮影された絵が、それ以上でも以下でもなくなるからです。つまり、現場での発見や、さらにいい提案、さらに撮影方法が見つかる可能性をなくしてしまうからです。
プロの現場では、常に上を目指し、さらにいい絵を撮る戦いを繰り返しているのです。絵コンテの表現方法にルールはありません。手書きでなければならない理由もありません。絵が描けないかたは、写真を駆使しても良いです。前段でもお伝えしましたが、とにかく伝わることが最重要です。
絵・画像を描き終えたら、その説明を文章で書いていきます。これをト書きと言います。
さらに、人物のセリフ、ナレーションを加えます。ト書きは絵の左側、もしくは真下に、ナレーションは右側に書きます。セリフであれば誰のセリフかわかるように、名前+「セリフの内容」というようにセリフはカギカッコ内に入れて記載します。ナレーションの場合は、「Na:」と略して書いても問題ありません。
ト書き、セリフ、ナレーションまで書き終えたら、それぞれのカットごとに、どれだけの時間が必要なのか、秒数を記載していきます。テレビCMや番組などの場合は、全体の時間が決まっているので、精密に1カットの長さを決めていく必要があります。
間違った秒数にしてしまうと、撮影した後に15秒に収まらない…なんてとんでもない事態になりかねません。そのため、フレームレート単位(1秒間は30フレーム)で記述していきます。
シーン番号、カット番号を記載する理由は、スタッフ全員の共通認識のため、さらに、編集段階で撮影素材を整理する上で必要だからです。編集するスタッフは現場に来ないことがほとんどです。そのために共通記号として使用します。カチンコに書かれたシーン番号、カット番号を見て、編集マンは素材を繋いでいくからです。
シーン変わりのタイミングは、場所が変わるタイミング、カット変わりのタイミングは、カメラアングルが変わるタイミングと覚えておいてください。音声を別撮りする場合は、必ずカチンコにシーン番号・カット番号を記載してください。
最後に、すべてのカットの秒数を合計した合計時間を記載します。合計時間が予定していた秒数になればOKです。
TV-CMの場合は、合計が15秒、または30秒ジャストになるようにカットを構成しなければなりません。また、ページ数を記載しておくことも必要です。「何ページ/ 全体のページ数」と記入すると、だれもが全体を把握しやすい絵コンテとなります。
以上を踏まえて、弊社の実例をご紹介します。
こちらは、プリントパックさんのTV-CM「日本中のお役に立ちたい」篇です。
誰かに何かを伝えたい―
自分の想いを、気持ちを伝えたい―
印刷って、そのためにある
オープン当日の夫婦の想いを描いた、プリントパックのTV-CMです。
酒井靖之監督は制作秘話として以下のようなことをコメントしています。
「印刷というものが社会でどのように役に立っているのか、そしてプリントパック様が目指しているものは何なのかを、ドラマ仕立ての構成でわかりやすく伝えたいと思いました。
たとえば、街中でたまたま目にしたポスターでピアノに通い始めた、空手に通い始めた、たまたま目にしたパンフレットで志望校を決めたなど、印刷物というものは人生の大事な節目に関わっているものです。私自身もそうでした。
だからこそ、この価値ある印刷を誰もが発注できる世の中にするという想いをどうやって 画にしようか、まずそれを考えました。そして辿り着いたのが、「オープン初日を迎えるパン屋の夫婦」のストーリーです。
この監督の考え、世界観をコンテの中に表現しなければなりませんでした。そこで、ある人気イラストレーターさんにお願いし、その世界観を再現してもらいました。
そのカットで何をして、どのアングルで撮るのかを具体的に描くのはもちろん、作品全体のトーンだったり、世界観までを表現することが、このコンテには必要でした。
さらに出演者のイメージや、お店の雰囲気、そこに置かれているもの、空気感までも表現しました。
このコンテを元に実際に完成した作品がこちらです。
絵コンテは、スタッフ間で情報を共有するための強力なツールです。
紹介した実例の場合は、画力が必要なケースでしたが、多くのケースでは、絵がうまいどうかは問題ではありません。絵が下手でも伝えたいことが全員に伝われば問題ないのです。伝わればその手段は問わない、というのが結論です。
上記をお読みいいだだき、絵コンテ作成は、まだちょっとハードルが高いなとお思いの方は、アーツテックをご用命ください。絵コンテのみならず、企画から撮影、編集、納品まで、1ストップで制作させていただきます。
お気軽に、ご連絡を。
筆者:アーツテック制作担当 伊藤