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「プロデューサーの仕事とは」 ディレクターとの違いは?プロデューサーの仕事を徹底解説

2023.01.05 (Thu)

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映像、音楽業界から、服飾、飲食業界に至るまで、数多くの業種に「プロデューサー」という肩書きの人物が存在します。

 

今や、いわゆる「業界」だけではなく、一般の世界でも広く知られている、この「プロデューサー」という役職。

 

しかし、プロデューサーとは具体的に何をしているのか、と問われて、即答できる人は少ないのではないでしょうか。

 

今回は、弊社アーツテック代表・酒井靖之監督が、「プロデューサーとは何か」「真に求められるプロデューサーの資質」等々について、そのプロデューサー論を縦横無尽に語ります。

 

 

 

ディレクター(監督)とプロデューサーの違いは何?

 

これは、僕がこの業界に入ってから、何十回となく聞かれた問いです。

 

この違いは、一般の方には分からなくて当然だと思います。プロデューサーとは、それほど定義付けの難しい仕事なのです。

 

僕自身は、監督兼プロデューサーとして活動しています。

 

ですから、どこからどこまでが監督の仕事で、どこからどこまでがプロデューサーとしての仕事なのかは、はっきりと分けられないのですが、今回は、自分の中の「プロデューサー脳」を駆使して、僕が考えるプロデューサー論をお話しさせて頂きたいと思います。

 

 

プロデューサーの定義とは

 

企画、資金集め、予算管理、タレントとの交渉、あるいはクリエイティブのヘッドとして。

プロデューサーと名の付く仕事は多岐に渡ります。

 

脚本、演出をしているのかといえばそうではなく、作品全体におけるリーダー、“総責任者”のような存在、といえば分かりやすいかもしれません。

 

まさにプロデューサーという言葉は定義があって無いようなもの。

 

しばしば見かける例として、タレントさんの名前がついた「〇〇プロデュースの店」があります。

 

そのタレントさんが、実際にどれくらいこの店に関わっているのかは、正直、誰も分かりません。

タレントさんが店舗全体のイメージ、雰囲気づくりに積極的に関わっている場合もあるでしょうし、名前を貸しているだけの場合もあると思います。

 

 

建築もまた然り。

 

有名なプロデューサーによる建築だとしても、このプロデューサーが本当に自身で設計しているのか。

今ひとつよく分かりませんが、全体のイメージは、プロデューサーが決めているのだろうと思います。

 

僕自身の経験で言うと、プロデューサーと名乗る人には胡散臭い人が実に多い。

かつてバブルの時期には「〇〇プロデューサー」という人たちが至る所に現れました。

 

自分はプロデューサーだと名乗れば、誰もがプロデューサーです。

 

マネートレーディング・プロデューサー、アドバタイジング・プロデューサー、デベロップメント・プロデューサーなどなど、とにかく怪しい人(いわゆる、なんちゃってプロデューサー)が大勢いらっしゃった記憶があります。

 

彼らはバブルの崩壊と共に、文字通り泡のように消えていきました。

 

しかし当然、本物中の本物のプロデューサーも存在しているのです。

 

 

日本を代表するプロデューサーたち

 

現在、日本最高のプロデューサーといえば、秋元康さんを挙げる人は少なくないのではないでしょうか。

 

AKB48、乃木坂46をはじめ、数々のアイドルグループをヒットさせてきた立役者です。

 

秋元さんの、世の中のニーズに対する反応速度、時代を読む勘とセンスは唯一無二のものであると言えます。

 

AKB48を結成した頃、アイドルを数十人も集めることについて疑問を感じた人も多かったと思います。

 

しかし、秋元さんは、普通に学校のクラスにいるような女の子、決して美形すぎない女の子を集めたグループをプロデュースし、大成功をおさめました。

 

今の時代は、「銀幕のスター」よりも、「もしかしたら自分に手の届く子」の方が、結果的にウケたわけです。

 

「時代を読む」というより、「時代を創っていく」センス。

まさにプロデューサーの名にふさわしい仕事ぶりと、感服いたします。

 

 

映画業界においては角川春樹さんがその筆頭に挙げられるでしょう。

 

まさに、日本映画界最大のプロデューサーこそ、角川春樹。

 

自身が社長を務める角川書店の本を原作にした映画化で、映画、書籍共に大ヒットさせるという、現在ではメディアミックスとして当たり前に行われている手法の元祖。

 

「見てから読むか、読んでから見るか」というキャッチフレーズは有名になりました。

 

薬師丸ひろ子、原田知世をはじめ、角川春樹が発掘した映画俳優は枚挙に暇がありません。

 

また、数々の話題作を世に送り出した角川映画のヒットの要因のひとつには、その予告編作りのうまさにあると思います。

 

書店には映画の原作本が山積み。

 

テレビでは見事としか言いようのない予告編CMと、見事なキャッチコピーが大量に放映され、初日の映画館の前には、話題作をいち早く見たいという映画ファンで大行列ができたものです。

 

まさに稀代のプロデューサーと呼んでも過言ではないでしょう。

 

秋元康、角川春樹の両氏に共通して言えるのが、彼らのプロデュース業が、決して順風満帆なものではなかったことです。

 

秋元さんの「AKB48選抜総選挙」には、批判の声も少なくありませんでした。

角川春樹さんも、その強引なまでの手法や私生活に批判が集まりました。

 

しかし、二人は結果的に圧倒的な数字を残し、周囲の雑音をかき消していったのです。

 

それは彼らが、自分自身のセンスを疑うことなく、世間と格闘し続けたが故の、当然の結果なのではないでしょうか。

 

 

 

映像制作におけるプロデューサー

 

◼️映画プロデューサーとは

 

ここからは、映画やCMにおけるプロデューサーの実際についてお話しさせていただきます。

 

一般的に、いわゆる「プロデューサー」が、大きな役割と権限を持っているのは映画業界でしょう。

 

「製作総指揮・スティーブン・スピルバーグ」などといった表現を聞いたことがあるかと思います。

日本では、プロデューサーを「製作総指揮」と訳します。

 

なせ、総指揮なのか。

プロデューサーには、まずは映画に掛かる一切の資金を集められる力を持っていることが求められます。

 

しばしば、プロデューサーと監督はどちらが上なの? と聞かれることがありますが、結論を言えば、どちらが上でどちらが下、ということはありません。

 

プロデューサーは、その映画をヒットさせるための、興行最高責任者であり、監督は、その映画を素晴らしい作品にするための作品最高責任者です。

 

そもそも役割が違うのです。

 

しかし映画は興行ですから、その観点からすると、ハリウッド等では、プロデューサーが大きな力を持っていることは否めません。

 

資金を集めるのもプロデューサー。

脚本はオリジナルにするのか、原作にするのか。

そして誰に書かせるのか、どのような内容を仕上げていくか、それを決めるのもプロデューサーの仕事です。

 

映画をヒットさせるための全ての要素を集められてこそ、プロデューサー“製作総指揮”たり得ると思うのです。

 

映画の全体の方向性が決まったら、スタッフの選定。

その代表たる監督の選定も行います。

 

監督にはジャンルによって得手不得手があるので、ヒューマンストーリーならこの監督、コメディならこの監督、と決定していきます。

 

一般的にプロデューサーは、自分が扱いやすい監督を使う傾向があります。

呼吸の合う監督と仕事をした方が、成功することが多いからです。

 

俳優の選定(キャスティング)も、ほとんどプロデューサーが行います。

 

売れっ子俳優との交渉。それが一筋縄ではいかないことは、想像に難くありません。

客を呼べて、かつ作品が成立する俳優をしっかりキャッチして、スケジュールの交渉、ギャラの交渉を一手に引き受けるのです。

 

プロデューサーとは、コミュニ―ケーションの達人の異名だと思います。

 

人望もあり、優れた人脈、交渉力、決断力を持っていなければ、この仕事を全うすることはできないと思うのです。

 

 

◼️プロデューサーの権限

 

ハリウッドの場合、プロデューサーには大きな権限があります。

そのひとつが、ラストシーンを変更できる権限です。

 

例えばハリウッドで映画化された『フランダースの犬』。

原作では主人公の少年と犬のパトラッシュは、飢えと寒さの中、ルーベンスの絵の前で、天へと召されていくという悲しいラスト。

しかし、ハリウッド版では、少年とパトラッシュが生き返る、という半ば強引なハッピーエンドを迎えます。

 

アメリカはバッドエンドを嫌う国民性があるので、あえてハッピーエンドにしたのではないかと推察します。

 

一般的に、監督は芸術肌の人が多いので、単純なハッピーエンドには拒否感を強く持つのも当然です。

 

しかしプロデューサーは芸術性よりも、いかに客を呼べるかが問われる仕事です。

彼らの論理では、作品は、ヒットしてこそ成功。

 

そうした意味で、ラストシーンを変える権限がプロデューサーにあるのです。

 

通常、世の中に公開される作品は、監督ではなく、プロデューサーが選んだ編集が採用されます。

後に「ディレクターズ・カット」と呼ばれる作品が公開されたりしますが、これこそが、監督がしたかった編集なのです。

 

 

◼️広告におけるプロデューサーの仕事

 

TV-CM、webCMなどの広告映像にもプロデューサーが存在します。

 

広告映像の場合、資金を提供するクライアントがいるので、映画と違ってプロデューサーが資金集めに奔走する必要はありません。

 

近年、プロデューサーの力が非常に弱まっていると僕は感じています。

船で例えると船長のような「この方向で行こう」と舵を切る事ができないプロデューサーが増えている。

 

映像としては成立していても、実際に視聴者に及ぼす効果については疑問を感じざるを得ない作品が非常に多く見受けられます。

 

CMプロデューサーは、どちらかというと、広告代理店やクライアントに寄り添ったポジションとなっていることが少なくありません。

 

プロデューサーは、クライアントの太鼓持ちではないはず。

 

クライアントとクリエイターの間にしっかりと立ち、全体を俯瞰しながら、作品を成功へと導く羅針盤のような存在でなければなりません。

 

 

本物のプロデューサーとは

 

僕がディレクターになったばかりの頃、ある素晴らしいプロデューサーとの出会いがありました。

 

後に僕がプロデューサーの仕事をする上で、大変参考になった方でもあります。

 

そのプロデューサーの素晴らしかったところは、まず圧倒的な企画力。

今のプロデューサーは、企画書ひとつまともに書けない人がホントに大勢いらっしゃいます。

 

それでは、スタッフの信頼を集めることはできないと思うのです。

 

建築業界でも、0から1、設計図を書ける人、すなわち設計者が一番偉い。

メーカーでも、商品を開発できる人が偉いのです。

 

なせ偉いのか。

誰でもできる仕事ではないからです。

 

1から100は、頑張ればできます。

しかし、0から1は、ある種の才能と努力が必要。

 

プロデューサーたるもの、脚本の執筆とまではいかなくても、せめて、プロット、企画書くらい上手に書けなければなりません。

 

そして、その企画を通すプレゼン力も求められます。

そのプロデューサーの方は、ホントに素晴らしいプレゼンテーターでした。

 

ある国営企業のCMのプレゼンの時。

僕は自分の企画に自信が持てずにいました。

プレゼンに入る前、彼は

「俺がプレゼンやるから。大丈夫、絶対通すから」

と言い切って始めたプレゼン本番。

 

ある時は情熱的に、ある時は軽妙なジョークを入れ、担当者全員が笑い、また大きくうなずく姿に、僕も見入ったものです。

 

 

撮影前におけるプロデューサー

 

良いプロデューサーには人望の厚い方が多いのは事実。

分かりやすく言えば「デキる人」です。

 

仕事は、大きな仕事になればなるほど、関わる人々が増えます。

プロデューサーは、何十人、何百人といった人たちと、短時間で正確な意思疎通をしなければなりません。

 

卓越したコミュニケーション力、プレゼン力があってこそ、プロデューサーなのです。

 

 

また、良いプロデューサーは絶対に現場でドタバタすることはありません。

あらゆることを想定した完璧な準備をしているから。

 

こうした力があってこそ、素晴らしい撮影が出来るのだと僕は思っています。

 

 

撮影時におけるプロデューサー

 

良いプロデューサーは、監督やスタッフに対して、いちいち細かいところまで口出しすることはありません。

 

現場に素晴らしいプロデューサーがいると、周囲が監督よりも、プロデューサーの顔色をうかがうケースが出てしまいます。

そうなると監督はやりづらくなってしまう。

 

前述した、僕の尊敬するプロデューサーは、いつも

「これから別件があるから、あとよろしく。昼過ぎには戻ってくるよ」と現場から姿を消したものです。

 

昼過ぎ、大量のアイスクリームを抱えて、

「どう?やってる?」とまた顔を出してくれました。

 

若かった僕は、演出に煮詰まった時にそのプロデューサー顔を見ただけで、安心したものです。

その時のアイスの味は、千金に値する一品でした(ありがとうございました!)

 

優秀なプロデューサーは、スタッフ皆に安心感を与えてくれます。

困難にぶつかった時にも、この人がいるから大丈夫だ、最後までやり切れる、という空気にもなるものです。

 

とどのつまり、圧倒的な“人間力が要されるポジションという事です。

 

 

 

撮影後のプロデューサー

 

ここから、編集、MAの作業と進んでいくのですが、プロデューサーは、いつも最高のリーダーとして、クライアントに、スタッフに頼られる存在でいなければなりません。

 

世の中には、あまりに細かすぎるクライアントがいらっしゃるのも事実。

散々、プレゼンしたのにも関わらず、演出家気取りの、ワケの分からない思いつきのイメージを伝えてくるクライアントもいらっしゃいます。

会社都合とか、大人の事情は、視聴者にとってどうでも良いことです。

 

ここがプロデューサーの腕の見せ所。

 

お客様を傷つけないように、監督の持つイメージや、視聴者にとって良い作品に戻していく。

こうしたことも大事なプロデューサーの力。

 

そして、作品が終わった後には、クライアントはもちろん、スタッフにもお礼の言葉を忘れません。

 

「〇〇君のおかげで、いい作品になったよ。ありがとう」。

この一言で、次の仕事も頑張ろうと思える。

モチベーションを高める力も、プロデューサー力なのだと思います。

 

 

最後に

 

僕の考えるプロデューサー論を、つらつらと綴って参りましたが、僕がこの通りにやれているかというと、汗顔の至りです。

 

でも僕は、作品の真のリーダーとして、皆から慕われ、信頼されるリーダーになりたいといつも考えています。

 

要は諦めずにやり続けることが大事だということ。

才能はなくても、道は遠くても、やり続けるしかないと思っています。

 

自分をたゆまず磨き続けて、皆様のココロに響く最高の動画をお届けできるよう精進していきます。

 

それこそが、自分の使命だと考えているからです。

 

 

 

(文 酒井靖之)

 

 

 

 

日本屈指のクリエイター、酒井靖之監督が

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