一流の撮影術、演出術 〜一流と二流の差は、どこで生まれるのか〜Vol.2
2023.02.06 (Mon)
2023.02.06 (Mon)
映像業界で高みを目指す全ての人へ!
二十数年に渡り、映像業界の第一線で活躍を続けてきた、弊社代表・酒井靖之監督が説く
「一流の撮影術、演出術 〜一流と二流の差は、どこで生まれるのか〜 Vol.2」
実体験から心得まで、あらゆる角度から、“一流” について、語り尽くしていただきます!
映像の監督、また写真家として、僕が大事にしていることがある。
構図やライティングなどの撮影技法ももちろん大事だし、出演者やモデルとのコミュニケーションももちろん大事。
あ、入念なロケハンももちろん大事ですが、もっと大切にしていることがある。
なぁんだ、と言われてしまうようなことだが、それは、決まった時間にちゃんとご飯を食べること。
しっかりご飯を食べて、しっかり睡眠をとる。
心豊かに毎日を生きていく延長線上に、仕事というものがあると思っている。
誰かに正念を乱されることなく、心がいい状態でこそ、良い画が撮れる。
だから、心身ともに良い状態であることは、僕にとって非常に重要である。
「他人は自分を映す鏡」という言葉がある。
「他人が自分のことをバカにしている態度をとる。
そういう時は自分も他人をバカにした態度をとっている」という、心理学で用いられる言葉だ。
僕は「写真や映像も、自分を映す鏡」であると思っている。
ポートレート等で、笑顔が素敵な写真があるとする。
プロのモデルなら、素敵な笑顔など朝飯前。
ならば、「誰が撮っても同じじゃん」となるが、ところがどっこい、そうはいかないんだなぁ。
やっぱり、ポートレートの、いや写真の達人ともなると、モデルさんが持っている能力以上の魅力を引き出す。
モデルさんが、同じポーズ、同じ笑顔をしていても、撮る人が変われば、写真はまるで別なものになる。
当たり前だけど。
言い方は悪いが、一流と二流の間には、見えない厚い壁があると思う。
僕はその秘密が知りたくて、様々な技法を学んだ。
一つには、構図や照明。これは撮影者にとって、基本中の基本だ。
次に、ポージング。自分が良いと思う表情やポーズをとってもらうために、注文をつけるコミュニケーション技術。
僕はわりと恥ずかしがり屋な方なので、これを身につけるには、けっこう時間がかかった。
ただ、この技術が身に付いたところで、写るものが大きく変わったわけではなかった。
転機となったのは、僕の師匠のお言葉。
「人の心を打つ写真が撮れるかどうかは、映す側の『心のレンズ』が磨かれているかどうかによる」
僕は、足りない頭を振り絞って、師匠の言葉を考えつづけた。
「人として一流になることと、一流の技術を身につけるのは、別次元の話しではないのか?」
「いや、師匠の言葉にいままでウソはひとつも無かった。自分が分からないだけだ」
そのありがたい言葉も薄らいできた頃、その言葉の意味がやっと少し分かったような感じがした。
(本当に分かっているとは、今でも思ってない。不肖の弟子で申し訳ありません)
そのきっかけとなったのは、俳優や声優、ナレーターといった表現者たちが通うワークショップで講師をつとめたこと。
表現者たちが落ち入りがちな思考というものがある。
僕も、若き日は俳優をやっていた。
その頃の感情を想い出してみた。
「ディレクターやプロデューサーたちは神。
この人たちに気に入ってもらわなければ、この世界でメシを食っていくことはできない」
忘れてはいけないのは、ディレクターやプロデューサーは、
表現者よりも優位なポジションにいるということ。
モデル、俳優、声優、ナレーターなどの表現者たちは、基本、フリーの立場。
事務所に所属をしていても、給料をもらっているわけではない。
よほどの大物ではないかぎり、表現者たちは、制作サイドや写真家の言うことを聞く。
それがたとえ、『良くない注文』であっても。
僕は、どうしたら同じ立場、同じ気持ちで表現者たちと仕事ができるかを考えていった。
映像の監督として。
また、写真家として。
モデルさんや役者などの表現者たちと、同じ目線、対等な立場で仕事をする事が、
良いものを創れるのではないか。
とは言っても、立場や役割りが違う。
彼らにとっては、僕はやはり優位な立場にいる事に変わりはない。
ならば、立場を超えて、お互いに尊敬心を持って、そしてお互いに成功を目指していけばいい。
そう考えるようになった。
監督にとってのカメラマン、助監督のように、絶大の信頼をおけるパートナーとして。
だから僕は、キャスティングには厳しい。
命を預けるつもりで、出演者を選ぶ。
そういう信頼関係が成り立つ表現者たちとの仕事は、極限の集中力を生む。
結果、最高の出来となるのである。
その信頼関係の奥底にあるものこそ、「人間力」ではないだろうか。
人間のダメなやつに、誰も信頼は置かない。
クリエイティブや表現の世界と言っても、ビシネスなのである。
ビシネスとは、人と人が関わるもの。
人間力の高い人は、どの業界であれ、高いポジションに就く。
「そうか。心のレンズを磨くとは、人間力を高める事なんだ」
師匠から教えて頂いた意味を、長い時間をかけてようやく理解し、実行した。
実行と言っても、大それたことではない。
いつも謙虚に。
感謝の気持ちを忘れない。
人との約束は、必ず守る。たとえ、自分の部下であっても。
人を裏切らない。当然、自分の誓いも裏切らない。
これだけである。
これだけでも、自分の創るものは大きく変わった。
いつしか、自分の作品は、
「酒井さんらしいね」
と言われるようになった。
僕らしさ、自分の人柄を作品に乗せられるようになったのかもしれない。
だから、今は、役者やモデルさんとのコミュニケーションなどに、あまり悩むことはない。
信頼関係さえあれば、何も問題はないのである。
僕は、役者には結構厳しい。
でもそれは、信頼関係の上にしっかりと成り立っていると思う。
逆に、意見を言われても、いっこうに構わない。
お互い、目指すところが同じであれば、そこに対立などは生まれないから。
そして、命の状態が良い方向にさえ向いていれば、必ず良いものを創れることが分かっている。
ご飯をちゃんと食べる。
良い睡眠をとる。
よく笑う。
どんなに忙しくても、いつも感動できる感性を保つ。
命の状態を、いつも良い方向にフォーカスすることが、僕にとってとても大切なことだ。
技術的にもあまり悩むこともなくなった。
技術の壁を突き破る源泉も、もしかしたら人間力なのかもしれない。
「良い作品が撮れるかどうかは、心のレンズが磨かれてるかによる」
師匠に教えて頂いた最大の財産。
作品とは、自分の命が投影されたものにしか過ぎない。
だから僕は、もっと心のレンズを磨いていきたい。
慢心する事なく、さらに成長します!
(文:酒井靖之)
引用:酒井靖之ブログ どっこい、俺は生きている。
『良い写真を撮るには』 https://ameblo.jp/sakaiblog/entry-12273793842.html
『「撮影、演出」という仕事に大切なこと』
https://ameblo.jp/sakaiblog/image-12009794215-13265217282.html
『「撮影、演出」という仕事に大切なことVOL.2』
https://ameblo.jp/sakaiblog/image-12011380650-13269256989.html
『一流になるには、一流を知る』
https://ameblo.jp/sakaiblog/entry-12268397219.html
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