【現場の話】第4回 ポストプロダクションとは?
2023.12.07 (Thu)
2023.12.07 (Thu)
ポストプロダクション(略称:ポスプロ)とは、撮影後、編集〜納品までの作業のことを言います。
また、編集作業を行うスタジオや制作会社のことを指す言葉として使われることもあります。
今回は、アーツテックのドラマ制作 ポストプロダクション篇。
作品が完成するまでの最終工程についてご説明していきます!
ポストプロダクションといっても、実際にどういったことをするのか、イメージがつかない方も多いのではないでしょうか。
撮影が終わると、映像制作の大半が終わったように感じるかもしれませんが、山登りに例えるとまだ7合目あたりでしょうか。
富士登山であれば、ここで一度打ち上げもしつつ、喝を入れ、頂上に向けて呼吸を整えた、2つ目のスタートラインのようなものです。
ポストプロダクションでは、主に映像の編集、カラーグレーディング、楽曲収録、MAを行います。
それらの合間で、試写会も行い、映像作品をブラッシュアップしていくのです。
ではこれらの工程を一つずつのぞいてみましょう。
編集作業は、聞きなじみのある言葉でイメージがつきやすい方も多いのではないでしょうか。
その名の通り、撮影した素材をつなぎ合わせ、作品にしていく作業です。
ドラマの場合、撮影時に緻密にカット割りをしているため、カット割り通りにつなぎ合わせると、それなりの作品になるのかもしれません。
しかし、ただ単につなげるだけでは良い作品はできません。
そこに、音楽や映像の色味の調整等、さまざまな要素が合わさって、良い作品に仕上がっていくのです。
さらに、今回の作品の場合、使用媒体に合わせた想定尺が決まっていたため、その尺内に収める必要もありました。
「でも、もし大幅に尺がずれていたらどうするんだろう?」と思いましたか?
そこも徹底した準備が生きてきます。
実は、プリプロダクションのタイミングで、準備していました。
台本が仕上がった段階で、セリフを声に出して読み、その尺を計測。
それをもとにおおよその映像尺を想定し、台詞の取捨選択を行っていたのです。
カット割のタイミングをおおよそに決めていたとはいえ、最後は編集で緻密に演出を施していきます。
編集の大まかな流れとしては、
①OK出し:順不同に撮影した素材、さらにNGカットも含まれているすべての素材からOK CUTを抜き取り、台本順に並び替える。
②仮編集:全体尺を決め、編集を繰り返す。
②整音:カメラで収録されている音ではなく、録音部が収録した音データと荒編で並べた映像データを合わせていく。
③本編(本編集):音楽や効果音等も追加し、演出的に映像構成を編集していく。
このような流れになっています。
編集という工程は、映画のような映像の場合、編集さんという人が任される。
膨大な量の映像素材から、取捨選択し、第一荒編を仕上げる人。
そのため、クリエイティブ能力も求められるのが、この役目。
また、TV番組の場合は違い、編集オペレーターという役職の方が、ディレクターの演出指示に従い、本格的な機材を操作し、編集を進めていく。
YouTube動画の編集等と違い、大体の場合、ワンオペではない点が、映像制作の編集のあり方です。
ここで、さらに作品のクオリティをあげるために必要になってくるのが、カラーグレーディングという工程です。
では、次は、そのカラーグレーディングについてご説明します。
撮影時にどれだけ良い瞬間を切り取っても、場所や時間によって映像の色調が異なってくることがあります。
そのため、カラーグレーディングと呼ばれる工程を踏むことで、映像全体の色調を調整し、作品に統一感を持たせることが必要になってきます。
また、一つの作品として仕上げる際に、どういうイメージを持ってほしいのかによっても統一する色味は変わってきます。
例えば、シズル感のある食品の映像であれば、鮮やかな色調で野菜のみずみずしさを表現していたり、ホラー映画であれば寒色系の色調に統一していたりと、作品の雰囲気を作り出すのにも、カラーグレーディングは必須です。
また、統一感のみならず、世界観を作り出すためにも、カラーグレーディングは、効果を発揮します。
撮影の際、監督とカメラマンとの間の打ち合わせで一番最初に検討される点は、Lookです。
「今回は、シネライクでいきたい」
「レッドな感じで」
「全体的にブルーの世界観にしよう」
といった具合にです。
映画通の方なら、 北野監督が作品で醸し出す独特な空気、色彩表現が『キタノブルー』と呼ばれているのを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それこそまさに、Lookです。
このように、プロがつくりあげる作品は、ほぼ全てこのカラーグレーディングが施されています。
それだけ、「色」が映像に与える影響が大きいということでしょう。
酒井監督ももちろん、色調の細部までこだわり、映像作品をつくりあげています。
それは、撮影した映像素材自体のグレーディングはもちろん、撮影前の小道具の選定や衣装の選定のときから、すでに念頭に入れ、考えていると、酒井監督は言います。
撮影後、グレーディングでなんとかしようとすると、現実味のないうそくさい世界が広がってしまいます。
酒井監督は、ナチュラルに見えることにこだわりを持ち、グレーディングをはじめ、映像の中に映り込む、色を全て操っているのです。
また、アーツテックでは、カラーグレーディングの際、「DaVinci Resolve 」というソフトを使用しています。
カメラメーカーとしても有名な Blackmagic Design(ブラックマジックデザイン)社より提供されている動画編集ソフト。
これは、数ある動画編集ソフトのなかでも、プロ仕様の8K編集やカラーコレクション、VFX機能等も含まれており、一流の映像制作を目指す人に人気なソフトの一つ。
簡単なシステムは、無料から利用することが可能なので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
DaVinci Resolve ▶︎▶︎▶︎ https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve
アーツテックには、このDaVinci Resolve 編集専用のキーボードとカラーパネルが備わっており、これらを駆使し、緻密にカラーグレーディングを行なっています。
(写真左:カラーパネル 写真右:キーボード)
グレーディングは、奥が深いので、プロのカラーグレーディング術について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください!
▶︎▶︎▶︎ https://www.artstech.net/column/2785
テレビドラマを見ていて欠かせないものの一つに、「主題歌」があります。
この歌を聴くと、この作品を思い出すといった具合に、作品と密に関わっており、作品作りに欠かせない要素の一つではないでしょうか。
今回の作品では、酒井監督自らが作詞した楽曲を使用。
そのため、ボーカル収録も行いました。
私は、初めて楽曲収録の場に立ち会ったのですが、私たちが普段耳にしている楽曲は、このようにしてつくり上げられているのかと感動しました。
何度か歌っていただき、その度に酒井監督の持つイメージ、良かった部分や改善点を共有し、その場でブラッシュアップ。
回を重ねるごとに、心に沁みてくる歌声。
完成した楽曲を作品に合わせて流したときは、鳥肌が立ちました。
それまでは、AIボーカルを仮入れし、編集を進めていたのですが、AIとは思えないほど滑らかな歌声だったのです。
しかし、やはり本物の声にしか出せない音の奥行きが生まれたような感覚でした。
(写真:楽曲収録の様子)
楽曲も仕上がり、音の最終調整。
モノローグや効果音、現場音、BGM、楽曲のバランスを調整し、作品は完成です。
ところで、撮影の現場を想像すると先にモフモフのマイクがついた長い棒を持ってる方がいませんか?
一般的にTV番組やドラマ等では、音声さんと呼ばれる役割になります。
映画などの本格的な映像の場合、それは録音部さんとも呼ばれます。
録音部さんの撮影現場の大切な一員。
私が映像業界に入ったばかりの頃は、マイクの上手い下手が正直わかりませんでした。
しかし、上手な人は、拾いたい音がきれいに拾えている。ノイズも少ない。声がオフっていることはほぼないのがよくわかるようになりました。
なおかつ、タイミングを読むのが上手な方が多いなと感じます。
現場では、撮影部がカメラを動かし、照明部がライトを動かし、そこまで動きが多くはない録音部さんですが、セッティングの合間も様子をきちんと把握しており、監督の「よし回そう」の声で、パッとスタートができるよう裏で準備をしています。
まさに、現場と阿吽の呼吸で意思疎通をしているような雰囲気です。
こういった作品づくりに関わる一人ひとりのプロフェッショナルな仕事が、作品に大きく影響しています。
ちなみに余談ですが、マイクのモフモフは、風の「ゴー」といった音を拾わないようにするためのもの。
静かなスタジオの中での撮影では、モフモフがついていないマイクを使うこともあるんですよ。
ドラマが完成するまでの道程、いかがでしたか?
想像通りでしたか?それとも、知らない世界が見れたでしょうか?
あくまでも、アーツテックでのドラマ作品づくりのご紹介のため、制作の現場の数だけ、形があると思います。
映画やドラマを見ても、クレジットにはたくさんのお名前や企業名が流れてきますよね。
一つのドラマ作品をつくるために、それだけ計り知れない人が関わり、その一人ひとりの想いがこもった作品ができあがっているのだと感じています。
今回は、映像作品の制作という点でお話ししましたが、これは映像作品に限ったお話ではないのかもしれません。
世の中に溢れるさまざまなものにも、必ずドラマ制作と同様にたくさんの方が関わり、その一人ひとりの想いがこもっているでしょう。
ものからクレジットは流れないですが、そう思うと普段の景色も少し違って見えてくるかもしれません。
私の好きな言葉に、
「僕のした単純作業が この世界を回り回って まだ出会ったこともない人の 笑い声を作ってゆく
そんな些細な生きがいが 日常に彩りを加える モノクロの僕の毎日に」
という言葉があります。
酒井靖之監督のつくる感動動画は、疲れた心に優しさをくれるものがたくさんあります。
きっと今回制作させていただいた作品もその一つになると私は、確信しています。
日々、目の前のことに追われて視野が狭くなってしまっていたり、心が少し疲れてしまっている方もいるかもしれません。
そんな皆さんのもとに届き、心に温もりが生まれればなと思いながら作品の公開を待っています。
(アーツテックスタッフ 栗本)