「動画クリエイターのためのお悩み相談室」 第二回
2024.06.06 (Thu)
2024.06.06 (Thu)
ご好評につき、今回も「お悩み相談室」をお送りいたします!
若き人材が壁にぶち当たるのは前進している証拠。
今を生きるクリエイター達の悩みに、アーツテック代表・酒井靖之監督が全力で答えてくれました!
Contents
A
ドラマにとって大事なのは、なんといってもリアリティ。
ドラマの中には、現実ではありえないような会話や設定というものがありますよね。
実は、僕はそれが苦手なんです。
「現実では、夫婦はそんな会話をしないよな」
「友人同士でそんな言葉遣いしないよな」
といちいち気になってしまうタイプ。
おかげで、一時期、テレビドラマが観れなくなりました‥‥。
僕は、脚本というものは人間をしっかりと描けていないといけないと思っています。
「キャラが動き出す」という表現がありますよね。
キャラを動きださせるためには、自分がよく知っている人物であるかのように、そのキャラクターに細かなディテールを加えていきます。
どんな部屋に住んでいるのか、どんな趣味があるのか、どんな食べ物が好きなのか、等々。
(ショートムービー「春よ、恋」より)
そこを細かく詰めていくと、キャラが勝手に動き始めるんです。
そうすると、そのキャラが、リアリティのある言葉をしゃべってくれます。
また、登場人物にリアリティのある言葉を話させるためには、日頃から様々な世代の人と会話することが必要だと思います。
同年代の人とばかり話していると、同年代にありがちなテーマしか書けなくなります。
独身で実家を出たことがない人に、地方から出てきて十数年働いている人の気持ちがわかるでしょうか。
シングルマザーで子育てに奮闘している人の気持ちがわかるでしょうか。
その逆もまた然り。
ですから、なるべく様々な年代、経歴、職種の人と対話、会話するように心がけてください。
そして、自分の趣味嗜好にとらわれない読書も大事だと思います。
男女問わず、さまざまな年代が登場する小説を読むことで、その世代特有の悩みや考え方を理解するようにしてください。
こうしたことを地道に積み重ねることで、力がついてくるのだと思います。
最初から上手に脚本を書ける人はいません。
かくいう僕も、心から満足できる作品は未だに書けていません。
自分もまだまだ発展途上。
お互いにがんばっていきましょう!
A
大事な質問ですね。
効率良く動けるようになるのは、ある種の慣れです。
全体を見て、自分が動くべきことを察知する力、状況判断をする力。
このような力は、単に映像制作だけではなく、様々なビジネスにおいて必要な力です。
この力は一朝一夕に得られるものではありません。
僕は、若いときには、ただがむしゃらに走ってばかりでした。
先輩が指示を半分くらい言いかけたところで、もう走って行ってしまい、先輩が必要としていたものとは全く違うものを持ってきて叱られたこともありました。
せっかちが故に、ちゃんと人の話を聞けていなかったのです。
今考えると汗顔の至りですが、ただあの時の、何事も一生懸命にやるのだ、という自分の姿勢は間違っていなかったと思います。
要領とコツは慣れですから、何百と現場を繰り返すうちに身についてくるはず。
それよりも大事なことは、今、目の前のことを一生懸命にがんばること。
これが成長にとって一番大事なことなのです。
安心してください。いつかかならず、自分が求める力がついてきますよ。
A
どういった編集だったのかは分かりませんが、自分では良いと思っていたのに、相手にはよく伝わっていなかった、ということでしょうか。
映像も会話も、自分の想いを他人に伝えていくものです。
要するに、結局のところ、コミュニケーション力なんだと思います。
編集の問題以前に、あなたは普段から、自分の想い、大事にしていることを明確にして、それを相手に上手に伝えることができているでしょうか。
できてないとしたら、編集も同じようになるのだと思います。
例えば広告映像の場合、この商品はどういう特性を持っていて、どういう人に向けたものなのか。これを使うことによって、私はどうなるのか。どんな素敵な未来が待っているのか。
これらをロジック立ててしっかり伝えないと、まず間違いなくその商品は売れません。
どういう演出やビジュアルで伝えるかは何千、何万通りの手法があります。
しかし、その商品の核になる魅力をしっかり伝えなければ、CMとして成立しないのです。
視聴者の感情をよく捉えた編集をしてください。
「カッコよくできた」だけではだめなんです。
観る人の感情を常に考えてください。
詮ずるところ、編集とはコミュニケーション力。
自分の想い、考えを、百人中百人が意味を取り違えないように伝える力。
それが良い編集につながっていくのです。
がんばってください。
A
僕はそもそも最初からフリーでした。
どうやって自分の人脈を築いて仕事につなげていったかというと、特別な手段を使ったわけではありません。
最初は小さな仕事でも、とにかく誠実に、スピード感を持って、仕事をいただいたことに心から感謝しながら臨んでいました。
その時の自分自身の、最大限の力を注ぎました。
とにかくがむしゃらに誠実に仕事をしました。
そして、完了した折には、先方へのお礼のハガキも欠かしませんでした。
これは僕の師匠から教わったことです。
次第に、「君は一生懸命がんばってるね、今度はもうちょっと大きな仕事をやってみるか」と身の丈に合わない仕事をいただけるようになりました。
その都度必死に、脂汗をにじませながらがんばりました。
すると、徐々に「ウチの仕事をやってみないか」「テレビCMをやってみないか」と声が掛かるようになりました。
後ろを振り返る暇もなく、一生懸命がむしゃらにがんばった。ただ、それだけなんです。
答えになっているかは分かりませんが、今貰っている仕事を精一杯やり切り、もっと良くなるにはどうすればいいかを模索しながら、これ以上の事は今の自分にはできない、というくらいにがんばってください。
誠実に真面目に、感謝を忘れずに。
その気持ちがあれば、絶対に誰かが見てくれています。
大丈夫です。
自分を信じてがんばってください。
A
その気持ち、分かります。
僕も演劇の世界から映像に入ってきた時、同い年の人たちが、自分よりもはるかに上の立場にいて、焦りを感じたことがありました。
ただ、どうか一年、二年といった短いスパンで、ものを考えないでください。
あなたの本当の勝負は、30歳を越えてからだと思います。
使い古された言葉かもしれませんが「敵は相手でなく、自分」です。
昨日の自分より、今日の自分、今日の自分より、明日の自分です。
昨日よりも今日は、1ミリでも前に進めたか。
ここに勝負してください。
僕の話で恐縮ですが、27歳ころの時、毎日毎日成長していることが実感できた時がありました。
この世界に入って5年以上やってても、成長している事が全くわからなかったのに、
急にそれを感じられるようになったのです。
今まで、どうしても書けなかったものが、書けるようになった。
わからなかった事が、わかるようになった。
自分には無理とあきらめていた事も、急にできるようになったのです。本当に驚きました。
今考えると、5年の努力が一気に花を咲かした、というところでしょうか。
努力は嘘をつかない、と心から思えた時でした。
その上で皆様に言いたいことは。
自分に対して、自分はどうせこんなものだろう、この程度だろう、という制限を掛ける必要は全く無い、ということです。
人間は誰しも、ものすごい可能性を秘めています。
それを取り出すことができるかどうかは、あなた次第。
他人と比べることは、金輪際無しにしてください。
つねに、弱き自分と闘うこと。
それが成長の因となると思います。
A
正直、いつもしんどいです(笑)
二十代の頃、自分で言うのもなんですが、売れっ子のディレクターとして活動していました。
月に10本ほどの仕事がありました。
が、毎日、毎日、疲れ切っていました。
身も心もボロボロ。
一本仕上げても、また次の一本。
寝る暇も喜びに浸る暇もありませんでした。
しかし、監督、プロデューサーという立場、また制作会社の代表という立場でお客様からの信頼と期待を背負ったとき、不思議なことに疲れを感じなくなりました。
疲れてはいると思うのですが、お客様の喜びが疲れを癒してくれるのです。
がんばれば、がんばった先の希望が見えてきます。
やりがいと希望に満ちた日々は、疲れなど感じません。
また、体の耐久性も上がってきます。
僕の言っている事が実感できる日が、必ずきます。
お互いがんばっていきましょう!
A
厳しい先輩は、僕の若い時代にもたくさんいました。
今振り返ると、その先輩達には感謝の思いしかありません。
厳しいとは何をもって厳しいのか。優しいとは何をもって優しいのか。
厳しさと優しさは紙一重です。
優しい一言を掛けてくれること、それは単なる人気取りです。
本当に優しい先輩は、あなたが間違った方向に行こうとしている時、厳しい言葉で道を正してくれる人です。
あなたが事故を起こさないよう、厳しく教えてくれる人です。
本当の優しさとはそういうものです。
あなたの厳しい先輩はあなたを一人前にしようと、心を鬼にして、あなたに指導しているのです。
指導するということは、大変なエネルギーを要します。
それをあなたにしてくれてるとしたら、その人は素晴らしい人です。
厳しい、優しい、それを単に表面的に受け取らないことです。
あなたがもう少し成長したら分かりますよ。
厳しいことを言ってくれる先輩にどうか感謝してください。
またあなたも、後輩を成長させてあげられる立派な先輩になってください。
あなたの成長を心より祈っております。
A
ひとつは責任感ですね。「責任力」です。
これはプロに求められる一番大切な力だと思います。
誰がやらなくても、自分がやる。すなわち一人立つ精神。
この力こそが一番大事。
責任感が強い人が、将来作品を背負って立てる人になるのだと思います。
二つ目は「誠実力」。
スタッフやお客様へのご挨拶、などといった端々から、誠実さというものは、相手に伝わるもの。
常に感謝の気持ちを忘れず、誠実に全力でがんばってください。
三つ目は「自分を信じる力」。
いつも失敗ばかり、怒られてばかり。
そういう自分を信じられなくなっても不思議ではないです。
僕もかつてはそうでした。
しかし、自分には何かの使命があるはず。
自分にしか、成し遂げられないことが必ずあります。
人の真似ではなく、自分にしか書けないものが必ずあります。
僕は不器用で才能のない自分を呪いながら、一歩一歩、進んできました。
ハードルを一つひとつ乗り越えていくうちに、少しずつ自分を信じられるようになりました。
今日やろうと決めたことは必ずやることです。
ランニングを平気でさぼってしまうスポーツ選手が、栄光をつかめるでしょうか。
人生も同じことだと思うんです。
目標に逃げずに、歯を食いしばって乗り越える。
何がなんでも、目標をやり遂げる。
そのうち自分に自信を持てるようになると、仕事もお金も引き寄せられて集まってきます。
とにかく何がなんでも前に進む、という執念を持ってがんばってください。
責任力、誠実力、自分を信じる力。
この3つを大事にしてください。
偉そうなことを言って申し訳ありません。
僕も襟を正して、謙虚にがんばっていきます。
ありがとうございました。
今回も色々と言いたいことを言わせてもらいましたが、僕もまだまだ成長の途中。
お互い、頑張って参りましょう。
皆様の健闘を祈ります!
(聞き手 佐々木一郎)
https://youtu.be/Hno-dS6F8NI?si=Q_yESPxOdPTgTpy7
日本屈指のクリエイター、酒井靖之監督が
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