【新人必見】〜現場の成否99%を決めるロケハンのコツ〜
2024.06.13 (Thu)
2024.06.13 (Thu)
映像業界に限らず、どんな仕事でも準備はとても大事です。
いかに完璧な準備をして、本番当日を迎えられるか・・・
とくに映像制作の世界では、撮影前の準備とどれだけ真剣に向き合うかが、現場の成否99%を決めると弊社代表の酒井監督は語ります。
そんな撮影前準備の中でも、とくに必要不可欠な工程のひとつに、「ロケハン」があります。
この「ロケハン」という言葉、映像業界に入りたての方でも、一度は耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
一流のクリエイターになるためにはまず“一流のロケハン”から。
今回のコラムでは、監督のそばで撮影に参加する「助手の目線で見たロケハン」にフォーカスを当てて語っていきたいと思います。
これからロケハンに行く予定がある方はもちろん、「映像の世界に興味がある!」という方も必見です。
Contents
そもそも「ロケハン」とは「ロケーション・ハンティング(location hunting)」の略。
「ハンティング(hunting)」は日本語で「狩る」や「追う」の意味を持ちます。
“見る” だけでは終わらせず、狩猟のごとく、獲物(ロケ地)を追い、狩ってこそロケハンには意味が生まれます。
では、「ロケハンをすること」、その目的は何なのでしょうか。
そもそも撮影は、主に大きくスタジオ撮影とロケーション撮影に分けられます。
スタジオ撮影は、撮影することを目的としたスタジオで行われるもので、撮影が行いやすい環境に整えられていることが多いです。
一方、ロケーション撮影は、街中、企業さまのオフィスや工場などをはじめとした撮影用のスタジオではない場所で行われるため、スタジオ撮影と比べると光環境、音環境など色々な面で難しさがあります。
撮影は全て、「一期一会」。
一番良い瞬間を逃さず、より良い作品に作り上げることができるように、万全の準備が必要です。
撮影用につくられたスタジオで撮影を行う場合は、ホームページに、部屋のサイズや機材の搬入経路を記載している場所がほとんどですが、ロケで撮影を行う場合、上記のような細かな記載をしている場所はないため、撮影を行う際には必要な情報を自分で調べるしかありません。
もちろん、スタジオ撮影を行う際にも、ロケハンは行いますが、ロケーション撮影を行う際にはより一層、“一流のロケハン”が求められます。
窓はどの方角を向いているのか、どんな形で取り付けられているのか、機材搬入経路はどうなっているのか、などを事前に把握しているか、当日初めて知るかでは撮影の進行、もっと言えば作品の完成度がまったく異なってきます。
つまり、ロケハンは作品の完成度に直結する、とても大事な工程なのです。
繰り返しになりますが、一流のクリエイターになりたいなら、まずは“一流のロケハン”から。
「ロケハンは作品の完成度に直結する」と繰り返していますが、作品の完成度をより良いものにする“一流のロケハン”を行うためには、さらなる前準備が必要です。
では、ロケハンに向かう前にどのようなことを確認しておくべきか。
ポイントは大きく4つあります。
ロケハンをするにあたり、これから撮影する映像が、どのような意図から企画されたものか、どのようなコンセプトであるのかを把握しておくことは必須です。
企画した内容が想定通りに撮影できる環境であるのか、特に監督が考えている映像のイメージを叶えている場所であるのか、ロケハンに行った際には、しっかりと確認しておきましょう。
時間帯によって、窓から差し込む光はまったく異なります。
とくに、インタビュー形式の撮影がある場合には、とくに光・音環境の把握が必須です。
当日インタビューをしてみたら、部屋に日が入らなくてなんだか暗い雰囲気になってしまった…や、はたまた、近くで工事をしていてせっかく録音したのに工事の音が入り込んでしまった…なんてことがあったら大変です。
どこからどのような光が当たるのか、ロケハンで見極めることが重要になってきます。
ロケハンに行く際には、窓が付いている位置や方角の確認はもちろんのこと、カーテンか、ブラインドか、それは取り外し可能かなど、これらをロケハン時に確認しておくことで、撮影部や照明部とも事前に情報を共有することができ、円滑な現場進行につながります。
ロケ撮影では、現場周辺の情報収集も重要です。
撮影のほとんどは車移動。
機材を多く積む撮影部や照明部ももちろん車移動です。
制作部はどの駐車場が一番効率的に、現場に機材を運ぶことができるのかを考えてスタッフに駐車場の案内をする必要があります。
場所によっては駐車場がないロケ場所もあるため、ロケハンに行った時に車の駐車スペースに困らないためにも事前に近隣の駐車場情報は調べておきましょう。
たんに調べて終わりではなく、ロケハンに行った際には、調べた情報と実際の情報の確認が必要です。
そんな中でも個人的にとくに重要だと感じていることは、“最大料金の確認”です。
インターネットに載っているデータは発信元・発信日が不明確。
掲載されている写真には、最大料金の表記があるのに、実際に行ってみると、「最大料金はありません」などの表記に変化している可能性も少なくありません。
長時間の撮影を予定している時はとくに、せっかく良い撮影ができても、帰る際に駐車料金を確認して落ち込む…なんてことがないように、ネットの情報を鵜呑みにせず、ロケハンに行った際には、事前に下調べした情報と実際の表記を照らし合わせるようにしましょう。
また、撮影とは内容が離れてしまいますが、周辺の飲食店情報も調べておくと、打ち合わせの用事で来たけど、「早く着きすぎてしまった…!」なんて時に近くにあるカフェをすぐにご提案することができるのでおすすめです。
ロケハンに行く前に、持ち物を忘れていないかを確認しましょう。
カメラ、 方向磁石、絵コンテ、テープ類はもちろん。
ロケハンではメジャーを最も使用します。
窓や部屋のサイズを測る時はもちろん、インタビュー時に置く小道具類のサイズを測る時にも、ロケハンでは色々な局面でメジャーが必要になります。
とにかく、メジャーだけは絶対に忘れることがないようにしましょう…!
こちらは酒井監督が教えてくださった距離を測る秘密兵器、レーザー距離計です。
ロケハン時に部屋の縦・横・高さを一人で測るのはとても大変ですよね。
そんな時に、このレーザー距離計があれば、一人でも簡単に長さを測ることができます。
使い方もシンプルで、距離計を持っている位置からレーザーの点がついている場所までの距離をすぐに測ってくれます。
明日からすぐに使える道具になるのでみなさんもぜひお試しください!
メジャーやレーザー距離計など長さを測ることができるものは必須で必要になりますが、それぞれの撮影で必要な持ち物が変わるように、ロケハンでもそれぞれの場所で必要な持ち物は変わります。
例えば、「機械の分解はできるか?」などもロケハン時に確認を行うため、小型のドライバーセットを持ち歩いておくなども考えられます。
事前に自分で撮影内容、撮影場所を確認した上で、必要な持ち物を整理してからロケハンに向かうようにしましょう。
一流たるもの、スピード感を持った仕事が常に求められます。
ロケハンでは、短時間でいかに多くの情報を得られるかが重要です。
得られる情報は多いに越したことはありませんが、情報収集に気を取られて、肝心なことの確認を忘れてしまった…なんてことがないように、“これだけは外せない!”という3つのポイントをご紹介していきます。
前述した通り、ロケーション撮影において、窓位置の把握は必須事項のひとつです。
窓はどこに取り付けられていて、どの時間帯にどんな光が入ってくるのか、窓の外にはどんな建物が建っていて、その建物が光にどう影響するのか、周辺の音環境はどうか、ロケハン時に確実に確認しておきましょう。
また、反射は撮影においてとても危険です。
せっかく良い映像が撮れていたのに、反射でスタッフが映ってしまっていた…なんてことがないように、ロケハン時に反射が危険な場所も合わせて確認しておきましょう。
制作部が現場の空間を把握することは必須です。
現場では、制作部が監督を次の撮影場所へ案内するのはもちろんのこと、撮影部や照明部の方々にも機材部屋の案内や次の現場の案内を行うので、スムーズな現場進行となるように、ロケハン時に移動経路や部屋の位置をしっかりと確認しておきましょう。
とくに機材経路はどの程度の幅であるかは重要です。
エレベーターの広さや高さも合わせて確認して、ロケハン時に当日の動きの流れを頭でイメージしておきましょう。
部屋の大きさによって、撮ることのできる映像は変わってきます。
例えば・・・
・人が立つ場所はどこか、背景は問題ないか
・カメラを乗せるクレーンを十分に動かすことはできるのか
・照明機材を置く広さはあるか など
こんな画を撮ろう!と現場に向かって、当日に「イメージしていた映像が撮れなかった・・・」なんてことのないようにロケハン時に部屋のサイズを確実に把握、四隅からも部屋全体がわかる写真を撮っておき、技術打ち合わせの際に撮影部や照明部と事前に情報共有をしておきましょう。
繰り返しになりますが、ロケハンでは短時間でいかに多くの情報を得られるか、が重要です。
そこで効率的に情報を得ることができるアプリケーションを2つご紹介いたします。
Sun Seeekerは、総合的な機能を備えた太陽追跡・コンパスアプリです。
太陽の1時間ごとの方角、春分・秋分、冬至・夏至の経路、日出没時刻、薄明時刻、日影、ゴールデンアワーなどを表示できます。
※ただし、あくまでもアプリケーションであることを忘れずに!
正確ではないことも大いにありえるため、アプリケーションの情報だけを信じることはおすすめできません。
実際に、同じ場所から3人で同時に見ていても異なる表示になってしまう、なんてこともありました…(笑)
Sun Seekerは便利なコンパスアプリではありますが、携帯は磁気体であるため正確性でアナログの方位磁石に勝てません。
メジャーと一緒に方位磁石も忘れず持っていくようにしましょう。
3D Scanner Appは、3Dスキャン機能を搭載しており、簡単にオブジェクトをデジタル化できます。
メジャーの機能を用いることで、後からでも部屋の縦×横×高さなどを知ることができえる便利アプリです。
この機能があれば、「現地のサイズを測り忘れてしまった……」なんてことがあったとしても、とりあえずは一安心です。
※こちらは対応機種が限られます。
〈酒井監督から教えていただいた豆知識〉
自分の大股で1mの感覚を覚えておけば、足でも十分におおよその部屋のサイズを測ることができます。
ぜひ、試してみてください!
ただし、どんなものでも正確に測るに越したことはありません。
メジャーは絶対に忘れずに、ロケハン時にはすぐに出せるように持ち歩いておきましょう。
ロケハンから帰ってきたら、詳細を覚えているうちにロケマップと準備するもののリストを作成しましょう。
ロケハン時にカメラ位置が決まっている場合にはカメラマークもつけて、丁寧で見やすいロケマップにすることを心がけましょう。
全体がわかる写真とは別にカメラ位置から撮影した写真を矢印に沿って載せておくと、ロケハンに同行していない撮影部や照明部にも監督のイメージしている画が一瞬で伝わり、伝達に便利です。
また、その他のスタッフに共有するためのロケマップとは別に準備リストの作成も行いましょう。
準備するべきもの全てがすぐに手に入るものとは限りません。
発注をしなければいけないものもあるため、必要であることが確認でき次第、準備リストを作成し、制作部内で共有するようにしましょう。
本日はロケハンのコツについて語ってきましたがいかがでしたでしょうか?
撮影の本番当日をいかに良い雰囲気で締めくくることができるかは、ロケハンなども含めて、制作部がどれだけ完璧に準備をしてきたかにかかっていると言っても過言ではありません。
新人のみなさん、一流のクリエイターになるために、まずは一流のロケハンから!
一緒に頑張っていきましょう。
(アーツテックスタッフ 植野)
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