酒井監督への50の質問 前編
2024.07.04 (Thu)
2024.07.04 (Thu)
アーツテック代表・酒井靖之監督に50の質問をぶつけさせて頂きました。
今回は前半の25個の質問に答えて頂いています。
映像やクリエイティブに関わる仕事をしていらっしゃる方は、必読です。
Contents
僕はもともと格闘家を目指していました。
当時は格闘家が活躍できる舞台がほとんどなく、この道で生きていくのは本当に限られた人のみだったので、あきらめました。
次に進んだ道は演劇の世界。たまたま観に行ったつかこうへいの舞台にとてつもなく衝撃を受けました。
夢は、つかこうへいさんのような演出家になることに変わりました。
ある演出家の先生に師事して、演出助手として働き、自分の劇団も率いて、500人くらいのキャパを埋められる劇団に育てました。
しかし、格闘技と同じく、演劇で食っていくのは至難の業。
ひどい貧乏生活を送っていました。
そんなとき、先生から「お前は映像の才能もあるぞ」と言われたのです。
演出家の先生は、ドラマの監督でもあり、僕は助監督件俳優として、先生のそばにいつもいました。
ある自主映画のコンテストで賞をもらったこともあり、映像の道に進むことを決めました。
そして、撮影所の助監督として働き始めたのです。それがこの世界に入ったきっかけです。
全く想像がつきません。
おそらくサラリーマンにはなっていなかったと思います。
父親が商売をしていたのもあって、勤め人の生活というものは想像できませんでした。
映像の世界ではなくても、きっと何かしらの夢を追いかけていたのかなと思います。
動画制作をするにもYouTubeからTV-CMまでいろいろあります。
僕はそこに差はないと思っています。
どんなメディアでも、最終的に見るのは視聴者です。
広告だろうが、エンタメだろうが、観る人は一般視聴者です。
どんな種類の動画でも、何らかの良い影響を与えられたら良いなと思っています。
ジーンときたな、良かったな、感動した、と言ってもらえる作品、ココロに響く作品を作ることを1番大切にしています。
最近のAIの動画はすごいと思います。
僕たちを驚かせるレベルの映像が、簡単に作られるようになりました。
今後もますます進化していくことと思います。
でも、本当の意味で、ココロに響く作品づくり――感動させたり、泣かせたりする作品――これは人間にしかできないと思っています。
陳腐な発想では、AIに負けてしまいます。
人間にしかできない発想――血の通った、体温の伝わる作品は、AIに負けることは永遠にないと信じています。
かっこいい生きざまとは、自分自身に誇りを持って生きている人。
また、周りの人にも良い影響を与えられる人だと思います。
自分のことしか考えない人ですね。
映像はワンカットワンカットの集合体です。
僕は意味のないカットは撮りたくありません。
そのカットを入れることで、視聴者のココロがどう動くか。
それを緻密に計算して、ワンカットを大切に撮ること、それが僕のこだわりです。
朝の時間を大切にしています。
起きた時に、窓を大きく開けて、外の空気を吸いながら水を飲み、そしてお風呂に入ります。
どんなに朝が早くても、365日、湯船に浸かります。
それから、コーヒーを飲みながら、自分のテンションを上げてくれる音楽を聴きます。
良い気分で1日を始めることを、常に心がけています。
二度と同じ手を使わないことです。
「クライアントが違うんだから、どうせ分からないよ」と言われますが、それは禁じ手にしています。
過去にやった同じ手を使うことは、その作品にお金を払う方に失礼だと思っているからです。
常に新しい表現を使うことは苦しいことなのですが、それをマイルールとして自分に課しています。
僕がイメージしている人物像に限りなく近づいてほしいと思っています。
俳優としての技術や、個性はあっても、まずは、その役の人物像になりきっていただきたい。
そこから発するセリフや動きこそ、リアリティあるものになると信じているからです。
一番はありません。作品は自分の子供のようなものだから。
子供を比較しているようなものなので、どれが一番かは言えません。
住むとするなら、イタリア、スペインなど、ラテン系の国がいいですね。
日本はルールが少し厳しすぎるので、ルールに寛容な国が良いなと思います。
特に深く感じることはありません。
テレビ離れと言うなら、テレビに魅力がないのでしょう。
若い人は常に面白いものを求めています。
僕たちの仕事は、人に観てもらってナンボの世界なので、テレビがどう、YouTubeがどうというよりは、視聴者に選ばれる作品を作らなければならないと思っています。
仕事でひたすら映像を見ているので、家に帰ってまで観るのはあまり好きではないのですが、YouTube的な発想を研究するために、一日一時間は観るようにしています。
これといって特にありません。
最近、有名な飲料メーカーさんの博物館のシアター映像を作ったのですが、上映中、その映像を見て感動していらっしゃるお客さんの姿を見た時は嬉しかったです。
月並みですが、完成したときに、クライアントや視聴者から良い反応を頂いたときは、やっぱり醍醐味を感じますね。
睡眠時間が取れなかったことです。
これはきつかった!
翌日も早い(朝6時集合)のに、照明さんたちや技術スタッフに飲みに連れていかされて、深夜すぎまでお供して、また飲みに行って、の毎日。
ホント、きつかった!
テレビやYouTubeを見ている時に、どうしても撮影の裏側を考えてしまいます。
「これは、交渉が大変だな」とか、「モーションコントロールカメラを使っているな」とか、とにかく、裏側が見えてしまうんです。
本を読む時も、「これを映像化した時に、どういうカット割りにするか」と考えてしまいます。
そんなに観ません。
気に入った映画を、DVDやアマゾンプライムなどで何度も見るタイプなので、実際に映画館に足を運ぶのは、2か月に1、2度くらいですね。
家で見る場合は週に1〜2本くらいでしょうか。
え、少ない?
小説、漫画、雑誌を含めて、ひと月に15冊以上読むことを自分に課しています。
僕のバッグの中には、常に本が3冊入ってます。
一冊を通して読むのではなく、3冊をランダムに読み進めていく読み方をしています。
集中力を維持する努力は、特にしていないですね。
ただ締め切りがあると、自然に集中できます。
僕は経営者でもあるので、一日中作品作りに時間を費やすことはできません。
この時間からこの時間まで、と区切って、その中で、全力を尽くしています。
もしかすると、時間を決めて作品作りをする事が、集中力維持につながっているのかもしれません。
20代、30代の頃は、明確にライバルと言える存在がいて、どうやったら、こいつよりも良い作品を作れるか、競争意識をもっていました。
今でもライバルはいるといえばいますが、そこまでの競争意識は無いかもしれません。
すみません、沢山ありすぎてパスです。
ストレスをためず、なるべく楽しんで仕事をやることですかね。
あとは、適度な運動と、よく眠る事です。
たくさんあります。
過去、いろんな映像を作ってきましたが、映像は時代時代で変化しますし、いろいろな媒体も登場してきているので、ぜひ新しい映像表現にチャレンジしてみたいと思っています。
***
酒井監督に、赤裸々に答えていただきました。
次回は50の質問の後半をお届けします。
お楽しみに。
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