心を掴んで期待を呼ぶ『オープニングムービー』徹底解説
2020.09.30 (Wed)
2020.09.30 (Wed)
みなさんは、オープニング動画と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
音楽フェス、ファッションショーなどの始まりに流れる映像。
テレビ番組の初めに流れるタイトルコールの映像。
作品の導入部分の映像。
など、身近なところで見た覚えのあるものを思い浮かべて下さったかと思います。
映像の世界では、例えば番組の冒頭に番組名が紹介される動画のことを「タイトルコール」、プロレスなどで選手の登場前に流れる映像を「煽りVTR」
映画やドラマなど、作品の導入部分のことを「オープニング」「プロローグ」、
と呼ぶなど、一口にオープニング動画と言っても一体何を指すのかわかりません。
しかし、全てに共通していること。
それは、イベントや物語の始まりを期待させ、続きを見たいと思わせるような映像である、ということです。
では、どのような動画が、人の心を掴むオープニング動画となるのか。
オープニング動画を制作するコツや手法を、実例も交えて紹介していきます。
Contents
映像には、起承転結、序破急など様々なパターンがありますが、変わらないのは導入、つかみと言われる部分の役割です。
アバンやオープニングタイトル、また映画では最初の導入部分。
まず、ここで心を掴まないと、人はその先を見ようとは思いません。
ここで続きを見てもらうためのポイントは、
30秒以内にこのオープニング動画で心を掴む、ということです。
心を掴むことができなければ、最後まで作品を見てくれない恐れがあります。
実は、人間は意識するしないはさておいて、およそ5秒ほどで、
見るに値するものかどうかという判断をしてしまいます。
例えばYouTubeで動画を見ていると、途中に挟まれる5秒後にスキップできる広告動画。
その動画は5秒後にスキップする人も多いと思います。
たった5秒であっても、心が掴まれなければとても邪魔で、もったいない時間だと感じてしまうでしょう。
この広告動画に限らず、動画は最初の5秒が勝負となります。
例えば映画などは、まずファーストカットにインパクトのあるシーンがくることがほとんどです。
その物語が進むにつれて冒頭で描かれていたシーンが繋がるような、本編を見てなるほどと思わせるような映像が、必ず導入部分で詰まってます。
2時間の映画も、冒頭の5秒程度の映像が、世界に入れるかどうか、その世界に入り込んでいけるかどうかの足がかりとなります。
30分以内に入れなかったら、もうずっとその映画を集中して見ることができないという方も多いかと思います。
つまり、オープニング部分で、観ている人の心を掴む、ある種の仕掛けをしていかないと、後味の悪い動画と評されてしまいます。
それでは、どのようなオープニング動画だと、人はその先を楽しめなくなってしまうのか。
一番わかりやすいのは、全体感をつかむような絵から入ってしまうことで、たった5秒でなんとなくこんな作品だなと分かってしまうような映像です。
また、ただあるものを並べるだけ、という動画は、記録ビデオと呼ばれてしまうようなつまらない内容となってしまいます。
動画というのも、映像というのも、その世界に突き入れるためには、演出というものが必要不可欠なのです。
好きな映画を思い浮かべてください。
そのファーストカットは何だったのか。
初めて見たその瞬間、何か引きずられるようにその映画の世界に引きずられていかなかったですか。
また、自分がつまらない、席を立ちたいと思った映画は、導入でその映画の世界に入れてくれなかったことがほとんどではないでしょうか。
オープニング動画では、その世界に引きずり込む様々な再考をする仕掛けをする必要があるのです。
そしてその仕掛けこそがディレクター、監督の“演出”であり、演出が詰まっているものがその作品となるのです。
コマーシャルであれば、15秒という短い尺の中に、ありとあらゆる仕掛けをしていかなくてはなりません。
全く演出がなされず、ただひたすらに商品カットだけが映し出され、商品の特徴を述べられているだけの動画を見せられて、どう思うでしょうか。
コマーシャルだったら、その商品は全く売れませんし、番組だったら視聴率を取れず、イベントであれば入場者数は増えないでしょう。
良いオープニング動画とは、冒頭で人の心を掴む仕掛けがきちんとなされた動画である、と考えます。
CMには、アテンションと言われるものがあります。
最初に〇〇のCMだという決まったフレーズが冒頭に入ることを指します。
毎回、同じフレーズが入ることによって、我々は〇〇のCMだ、と咄嗟に理解をし、なぜかそこに目線がいってしまうという仕掛けの一つです。
テレビのCMというのは、必ずしもそのCMが見たくてチャンネルを合わせているわけではありません。
そのため、CMはCMで、そこに目を行かさせて釘付けにさせるためのありとあらゆる仕掛けを詰めこんでいます。
大事なのは、ファーストカットや、ファーストアテンションと言われる、「つかみ」の部分です。
ここに仕掛けをして、そこで目にぽっと行かせるようにする。
台詞や音楽など、様々な仕掛けはあらゆる作品に詰まっており、目を離せず、チャンネルを変えさせないようにしているのです。
短いCMであっても、大事なのは冒頭、最初に人の心を掴むことなのです。
そしてオープニングであっても、冒頭になにか鮮やかな仕掛けをすることが重要と言えます。
番組などでよくあるタイトル仕掛けでは、タイトル自体でまず登場人物が出てきたり、本編に出てくる名シーンを繋いだりしています。
さまざま例はありますが、ドキュメンタリーでは、
本編に出てくるドラマチックなシーンを羅列していくのが常套手段です。
突然、「何考えてんだ!」などという恫喝のセリフや、涙のシーンが映し出され、ナレーションでは「彼らに一体何があったのか」と情感たっぷりに視聴者をそのドラマの世界に引き摺り込むのです。
そして、この先に大きなドラマがありそうな雰囲気を演出し、最後に結論を言わずに「彼らの波乱万丈のストーリーを追ってみました」と続きを期待させて提供に移るのです。
冒頭のオープニングからその本編も見てもらうための努力は、テレビ番組に顕著に出ていると感じます。
「何か面白そうだ」と思ってもらう、そして期待感を煽るために本編のナイスカットを予告編のように編集する…など、様々テクニックはあります。
今から面白いもの、良いものを観れるのだという期待感を煽るために、ドラマチックにするのはとても効果的です。
淡々として何のドラマも生まれなさそうなオープニングがあったら、おそらく次のCMタイムでチャンネルをチェンジされてしまうでしょう。
テレビ番組でも、このアバンタイトル部分で一番エッセンスとなってるカットを登場させて、何かドラマが生まれるんだなという期待感を作るのがとても重要となります。
CEATECという日本最大級のIT企業のイベントで、毎年村田製作所という会社が1位を取っていました。
イベント会場でその集客するための動画を引き受けていたのが、私たちです。
そこにこのムラタセイサクくんセイコちゃんちゃんという企業のキャラクターを物語に出して、それを映画館のようなスタイルで流しました。
それがどのような仕掛けをした動画なのか、ご紹介いたします。
村田製作所様
この動画の一番の目的というのは、集客です。
集客をした人たちが「面白かった」「とてもよかった」と言ってくれれば、それがどんどんシェアされ、入場者がさらに増えていくといういい循環が生まれます。
こちらは少し前の作品なのですが、この時代はエコというのが最大の社会の課題でもありました。
そしてこのキャラクターたちが親子連れにとても人気だったので、
『子供でもわかるエレクトロニクス』というテーマで、村田製作所の製品が社会にどのように活躍しているのかを描いていきました。
まず冒頭は、風を感じられるような素敵な自然の映像から入っています。
自転車と一輪車に乗ったムラタセイサクくん、セイコちゃんがその森の中を散歩し、そこで妖精に出会います。
そして、その妖精と共にエコを探る旅に出ていく。
そのアバンタイトルに、映画「ET」をオマージュした月に浮かぶ3人の姿を映し出しました。
これが私の考えた冒頭の掴みです。
この冒頭で、観ている子供たちを一気にムラタセイサクくん、セイコちゃんの世界に引きずり込もうという演出意図があってのことです。
これは見事成功し、IT企業の堅いイベントであったにも関わらず、土日になると親子連れが行列を作って観に来るほど人気の動画となり、集客数第一位という結果に貢献しました。
ウォータースタンド株式会社様は、未来の子供たちに、良い地球環境を引き継ぐために、ペットボトルをマイボトルに変えてプラスチックゴミを削減することに本気になって挑戦している企業です。
このブランディング動画を制作させていただきました。
ウォータースタンド株式会社様
「MISSION&VISION Promotion Video」
こちらの作品の冒頭では、
「大地は、祖先から受け継いだものではなく、未来の子供たちからの借り物である。」
というアフリカのことわざを引用しています。
こちらは、ある本を読んだときに大変感銘を受け、いつか自然や地球環境をテーマにした作品で使おうと心の中にストックしておいた言葉です。
こちらの動画を作るにあたって、企業様の理念や思いを聞いた瞬間、このことわざが引用されるときが来たな、と直感いたしました。
そしてその掴みはやはりアフリカでなければいけない。
アフリカの壮大な映像からスタートし、そしてそれに映像に合う格調の高い音楽を選曲し、企業様の信念の大きさを予感してもらう演出をしています。
オープニング部分がなかったとしても、作品としては十分成立しています。
しかし、作品の深み、またウォータースタンド様の理念の深さをより深く理解してもらうには、この冒頭の掴みであるオープニング部分は必要不可欠だったと考えています。
トプコン様
こちらの動画は、会社案内としては異例の、ベルリン映画祭のショートフィルム部門にて予選を通過し、本選まで通った作品です。
その冒頭は、情熱大陸で有名な窪田 等さんのナレーションで、測量の歴史という部分から始まり、ダイナミックに展開されていきます。
ここに込めたのは、測量という遥か昔に生まれた技術が連綿と受け継がれ、革新を深めてきた、その魂を知らしめたいという想いです。
最初のナレーションで測量機のイメージを膨らませ、一気に世界に引きずり込み、企業の案内を、誕生秘話を交えて行いました。
会社紹介動画でいうと、実際に会社の説明を淡々と述べられても、次の話を聞きたい、もっと会社の話を知りたいというようにはいきません。
この動画で仕掛けたのは、その会社にしかない強みを、ドラマチックに描くこと。
そしてこの先にドラマがあるのだということをオープニングで感じさせることです。
これが、視聴者に「観たい」と思っていただくための大きなポイントだと考えています。
少し昔の作品ですが、こちらは、音楽で何かが始まる予感を作ろうとしたオープニングです。
NTT 東日本様
タイトルだけでもオープニング動画というものは成立しますが、それだけでは人の心を掴むには至りません。
繰り返しますが、タイトルで世界に引きずり込むことが何より大事なのです。
どんな感情が、どうその世界に引きずり込んでいくのか。
様々な演出をして、まずそのビジュアルから何かが始まる予感をさせるのも一つの手です。
こちらの動画では、ある1人の登場人物がカメラに向かい、様々な光だったり人だったり、違うものが交差していく。
そしてそれを引きずり込んでいくための音を、こだわって制作しました。
1990年代に世界を席巻したドイツのエニグマというアーティストにインスピレーションを受けた世界観で、心に訴えかける音を作ろうということでこの音を作りました。
これは実は四つ、五つ程の音を元に作っています。
尺八など、いろんなサンプリングを重ねてミックスし、出来上がった音です。
冒頭でこの印象的な音を鳴らしたことで、一体何が始まるんだという緊張感を演出することができた例であると考えます。
テックウインド様
「Reach the real 本物に届く。WESTONE」
白い空間の中、広く冷たい雰囲気の家で、不思議な女性がたたずんでいる。
これはなんだろう、どんな世界観なんだろう」と視聴者が疑問を抱いたタイミングで、ギター音が入り、音楽が始まります。
ある種、これはPVの中にオープニングの要素を入れた作品となっています。
前述したように、五感の一つに呼びかける音楽は、オープニング動画でその力を大きく発揮する重要なキーとなります。
例えば、ホラー映画の「サスペリア」では、ピアノの音で心に恐怖感が植え付けている最たる例と言えます。
ピアノのメロディが、静けさと怖い雰囲気を見事に演出し、怖いもの観たさや、そこから何かが始まっていくという予感を視聴者に与えます。
オープニング動画で大切なことは、視聴者のイマジネーションを借り、ほんの少しのエッセンスを大きくして、続きに期待していただく。
最初からわかりやすく視聴者に提示してしまっては、ただの押し付けにしかなりません。
視聴者のもつクリエイティブな部分を借りる仕掛けこそが演出であると考えています。
全ての答えを言ってしまうのではなく、想像する余地を与える動画を作る。
わかりやすく、ここでこう動くんだろうなという展開ではなく、何となく何かが出てきそうな怖い感じがする。
このように自分で想像し、期待をすることで、感情は揺れ動くのです。
見た人の心が動くと、その動画の内容を心にずっと大事にしていく。
またはこの感動を、この喜びを、この動画を人に知らせてあげたいというアクションを起こしていく。
これが実現する動画のことを、わたしたちは戦略的な動画と呼んでいます。
企業様の目的を汲んだ、真に効果的な動画を作ることができるのも、プロフェッショナルの自覚と経験によって成されるものだと考えています。
このように、オープニング動画は作品、CMやこの後に控えるイベントへの期待をより高め、注目していただくために大事なものとなっています。
日本屈指のクリエイター、酒井靖之監督が
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