【現場の話】第一回 ドラマができるまで
2023.08.28 (Mon)
2023.08.28 (Mon)
「ドラマ」
テレビドラマ、WEBドラマ、SNSドラマ等、近年はさまざまな形でドラマが配信されています。
そんなドラマはどのようにして作られているのか。
今回は、アーツテックで制作しているドラマ作品をもとに、ドラマができるまでを現在進行形で制作中の作品を基にほぼリアルタイムでお届けしていきます!
第一回目の今回は、ドラマができるまでの流れについてお話しします。
Contents
皆さんが日常で目に触れているドラマが皆さんのところへ届くまで、どのようなことが行われ、どのような人が関わってきているのか、アーツテックでのドラマ制作の一連の流れを基に説明していきます!
今回のドラマ制作は、ドラマ仕立てのブランディングムービーの制作を検討されている企業さまからご依頼をいただいたケースです。
「感動するドラマで、我々の新しいコンセプトをアピールしてほしい」
それが、今回の依頼。
アーツテックの代名詞とも言える感動動画は、特別なマーケティング施策などを行わずとも、視聴者のココロを動かすことで、自然にシェアされ、拡散していく作品がほとんどです。
その作品を視聴いただいた方からのご依頼も多く、私の肌感ではありますが、
「ドラマがとても効果があるのは知っている、だから作ってほしい。感動するものを」
といった、漠然とした形の依頼から入ることが多いです。
打ち合わせに同席していると正直、そこからどうやってひとつの物語を作り上げるんだ!?と頭の中が混乱することもしばしば。
また、アーツテックは毎年展示会に出展しており、今年のテーマは
“「感動」でブランディング”でした。
そこで、毎年行う酒井監督の特別セミナーは、来場者の方が何百名も足を止めて見ていかれるほどの盛況ぶり。
セミナーを聴いてくださった方から感動動画の依頼を受けることもあります。
(写真:今年出展したコンテンツ東京でのセミナーの様子 画像右:壇上に立つ酒井監督)
通常、ストーリーを作っていく上で、最初に書くのが、“プロット”と呼ばれるもの。
これからストーリーになるものの流れや設定を記したもののことを言います。
そこから、考えたストーリーがきちんと起承転結の物語として、成立しているのか、無理矢理な流れになっていないか、足りていないシーンはないかなど、客観視することで、シナリオ(脚本)を作る上での土台を固めていきます。
しかし、酒井監督のプロットは一度も見たことがありません。
なぜなら、酒井監督は、お客さまから依頼を受けた打ち合わせの段階で、頭の中にプロットを作っているのです。
でも、思い出してみてください。
①で説明したように、感動動画の依頼内容は、アバウトなこともしばしば。
そんな時に、すでにプロットを頭の中で構成するなんて。正直言って、超人技です(笑)。
そうしていつも、人の目に触れることのないプロットを基に、集中して考えていくことで、シナリオを仕上げているそうです。
打ち合わせから引き出したわずかなイメージソースを昇華させ、ひとつのドラマ作品として作り上げていく———。
酒井監督が構想を重ね、作り上げたひとつのシナリオを一番最初に読ませていただくとき、この瞬間、「この仕事をしていてよかった」と毎回思います。
・一読者としての感動
・打ち合わせに同席した人間としての「そうきたか」という驚き
・映像の世界で働く人として、すごいものに触れたという衝撃と自分の力の無さを感じる無力感
など、こういったさまざまな感情が押し寄せてくる感覚に襲われます。
ただその後で、作品を納品するまで強く思っているのが、
「この作品が完成したら、必ず誰かの元に届き、そしてその人のココロを動かす。
だからこそ、この作品を良い作品にするために自分にできることを最大限してみせる」
ということです。
この瞬間いつも、読者(未来の視聴者)としても制作スタッフとしても作品に背中を押してもらいます。
だから、私は、この瞬間「この仕事をしていてよかった」と思うんです。
酒井監督が執筆したプロットを基に絵コンテを制作していきます。
絵コンテは、映像のイメージを決めつけないよう、あえて制作しない場合もありますが、
今回はCM的演出内容であ理、絵コンテを制作するケースとなっています。
まず、絵コンテにする前に、シナリオを基に監督の映像イメージを聞きます。
例えば、「この夕焼けのシーンは、下町の川沿い。浅草のようなイメージ」等一つずつ、認識に間違いがないようにすり合わせしていきます。
また、プレゼンに向けて、プロットの中から、必要な役者の人数やエキストラの人数、撮影場所などを洗い出し、どれくらいの予算がかかるのか、という部分の同時並行で準備していきます。
絵コンテ関連コラム
▶︎▶︎▶︎「はじめての絵コンテ」 〜 プロが教える絵コンテの描き方 〜
今回は、企業さまからのご依頼のため、絵コンテとなったシナリを携え、プレゼンテーションへと向かいます。
ショートドラマの場合、読み語りのような形でプレゼンしていくことが多いです。
また、映像にした時の曲のイメージがある際は、楽曲を流しながらプレゼンを行うこともあります。
いかに、読者の第一印象で感情を揺さぶれるか、一切妥協せず、100%の形でお客さまに伝わる工夫を凝らしています。
そのため、プレゼンを終えると、お客様から拍手いただいたり、時には涙を流される方もいらっしゃいました。
ご提案した物語を気に入っていただき、無事受注いただいてやっと、撮影に向けたドラマ制作がスタートします。
撮影に向けた時間も項目が多く大変なこともありますが、やはり軸にあるのは、ストーリー。
ドラマにおいて、ストーリー(脚本)は、一番大事になってきます。
その大事なものを作り上げることができる脚本家は、ほんの僅かしかいないのだと、酒井監督は言います。
「CMを撮れる人は、たくさんいる。だが、人を感動させられる動画を作れる人は、そうはいない」と。
この感動を生む脚本を書き続けている脚本術、酒井監督の企画力については、
次回以降、私がしっかりと取材して頑張って引き出してきますので、お楽しみに!
話が逸れてしまいましたが、ここから撮影へ向けた準備が始まっていきます。
撮影をするにあたり、作品ごとに準備で必要なことは当然変わってきます。
今回の作品では、この日までにこれをしよう、と小さなところまで見ていきます。
ここから、映像に直接関わる演出部と撮影を円滑に行うことに注力する制作部とに役割が分かれていきます。
演出部は、監督のイメージを伺い、キャスティングやロケハン、美術道具や衣装のイメージなども一つずつ、ネクタイの色一本まで詳細にしていきます。
制作部は、ロケハン、ロケ弁の手配、香盤表の作成など、撮影時に最高の画を撮るために、もれなくバックアップしていきます。
キャスティングイメージを監督からキャッチアップし、それを各事務所に展開。
出演者が多い作品では、キャスティング会社さんにご協力いただき、
100社以上の俳優事務所に打診します。
そこから、集まった数百名を超える俳優の方たちのコンポジットと呼ばれるプロフィールデータを確認し、書類選考を行います。
どれだけたくさんの人がいても、酒井監督は、必ず全員の資料に目を通し、書類選考を行います。
書類選考が終わると、次はオーディションへ。
オーディションでは、シナリオに近しい内容で演技をしてもらいます。
私はまだ数えられるほどしかオーディションに立ち会ったことがないですが、それでも主役に選ばれる人は、他の人とは違う空気、いわゆるオーラを持っているように感じます。
オーディションについての酒井監督執筆コラムはこちら
▶︎▶︎▶︎「オーディションとは何か」 ~激戦を勝ち抜くための、オーディション必勝法~
キャストと同じくらい肝になってくるのが、ロケ地です。
映像の雰囲気を左右する大きな要素でもあります。
まず初めに聞いていたロケ地イメージから想定できるロケ地をさまざまな方法で探します。
(ロケハンの詳細は、こちらのコラムにまとまっていますので、ぜひご覧ください。)
ロケ地候補があがったら、写真などで確認してもらい、さらに候補地を絞っていきます。
次に、絞られた候補地を回る監督ロケハンに移ります。
監督ロケハンで、最終的なロケ地が決まります。
しかし、監督のイメージに合わないロケ地であれば、当然探し直しですし、
いざ決まったと思い、撮影許可を申請すると、地域のイベントや近隣学校の長期休みの期間と被り、撮影ができないといったケースも出てきて、トライアンドエラーを繰り返す時もあります。
その先で、最高のロケ地は決まっていくのです。
直前で探すと本当に大変なので、普段からテレビドラマを観るときも、ここのロケ地いいな、どこだろうと調べるのが癖になりました笑。
インプットあるのみですね!
キャストが決定したら、衣装合わせと本読みを行います。
この場は、キャストの方々が初めて顔合わせする場でもあります。
事前に衣装部さんと打ち合わせしていた内容を基に衣装さんが衣装候補をたくさん準備してきます。
その中から、1シーンの衣装を決定するのに数着試して、決定。試して、決定。を繰り返していきます。
主役の方の衣装合わせだと、1人の衣装を決めるのに2時間以上かかることも。
そうして、全役の全シーンでの衣装を決定していきます。
本読みでは、本番台本を基に、演技をします。
キャストの方々には、酒井監督から役のイメージが伝えられ、本気で役に入り込んだ本読みが行われていきます。
酒井監督からキャストの方々に伝えられるイメージは、言い方よりはむしろ設定。
「この時、お父さん、怒ったふりして実は心配なんですよ。自分はずっと公務員で、芸能の世界目指すなんて突然言う娘がね」
「あなた、クズ男に振られて今人生ドン底って感じ。相手にも腹立つし、そんな自分も嫌になるしって」
というように、セリフの言い方を教えるより、その時の感情、想い、立場を詳細に伝えることで、セリフにリアリティが生まれると酒井監督は言います。
大きく、キャスティングとロケ地探し、本読み衣装合わせをあげましたが、それ以外にも撮影準備ですることは盛り沢山。
香盤表の作成やロケバスの手配、ロケ弁の手配などなど。
準備が9割と言いますが、まさにこのことですね。
(酒井監督は、準備が9.9割と言います)
撮影準備がどれだけ正確に詳細にできていたかで、撮影当日の動きが変わってくるといっても過言ではありません。
準備も完了し、スタッフとの度々の打ち合わせ、ロケハンも完了し、酒井組のココロがひとつになり、いざ撮影スタートです。
酒井監督はよく、何事にも一つひとつ勝負感を持って挑みなさい。と言います。
良い作品にするため、良い作品を作り上げる良い撮影現場にするため、
映像の隅から隅まで確認し、
エキストラの動きを何度も微調整し、
ロケ弁はスタッフ・役者皆に喜ばれているか、
天気を味方にできているか、
そうして、一人ひとりが全てに対して勝負感を持って撮影に臨むことで初めて良い作品作りに貢献できるのだと思います。
大袈裟かもしれませんが、夕陽のシーンの撮影日当日、天気が悪く夕陽が狙えなかったら、
それは天気を味方にできない自分の責任だと思うほど、勝負感は大切だと私は感じています。
ドラマ撮影の詳細は、「現場の話」シリーズの続編で公開していきますので、お楽しみに!
撮影を無事終えたら、次は編集です。
良い作品に仕上げるために、切り取るカットや見せ方を工夫していきます。
私は、「あれだけみんな頑張ったのに、こんなにもバッサリ、、」と最初、思ってしまいました。
私なら、一言しかセリフのない人のセリフは入れてあげたい、みんなができるだけ映るようにしてあげたい、と
撮影現場にいたからこその映像にいるキャストの方々への想いで、ストーリーとして必要のないシーンも入れてしまうと思います。
しかしながら、撮影した全てのカットを入れ込めば良い作品になるとは限らないということを、私はこの眼で見てきました。
あくまでも監督の演出で、作品は仕上がっていきます。
シナリオよりも良いものが撮れたらそれを選ぶ。撮ったものよりも良い構成が思いついたらそれを選ぶ。
という感じでしょうか。
そんな取捨選択と発想の繰り返しで編集が進んでいきます。
さらにここで大事になってくるのが、色味です。
酒井監督は特にグレーディングには徹底的にこだわります。
作品の世界観を圧倒的なものにするために、グレーディングも酒井監督自身の手で行います。
編集と同時進行で進むこととして、作曲があげられます。
作品のイメージをかたどる音楽は、映像において重要な存在です。
作曲家さんとの打ち合わせを重ね、イメージを擦り合わせていきます。
「音楽次第で、作品の世界観は決まってしまう」
「作品が感動できるものになるかどうかは、音楽が握っている」
というほど、酒井監督は、音楽を重要視しています。
作品が完成したら、クライアントにお披露目する試写会が行われます。
試写会の折、拍手して下さったお客様や、中には、涙を流されたお客様もいらっしゃいました。
ここで、お客様から気になる点などを伺いますが、演出部分でのご指摘はほとんどありません。
商品のロゴをもう少しはっきり見せてほしいなど、広告的な観点での細かな修正をいただくことがあります。
そういった修正点を修正し、納品へと向かいます。
映像が校了したあとは、MAと呼ばれる音の最終調整作業を行い、納品へと進みます。
ここまでで、短いものだと2ヶ月、長いと半年かかることもあります。
今回は、ドラマができるまでの流れについてお話してきました。
大枠だけでも15項目になり、本記事を書きながら私、びっくりしております。
そこからさらに枝葉に分かれて、関わる方の数だけ、さらに行われることが増えていくのです。
今回は、大枠の流れだけをお話ししましたが、まだまだ細いことは
お伝えできていません。
【現場の話】シリーズ、数回に分け、ドラマの撮影の裏側を全公開していきます!
次回は、撮影の前までの段階、プリプロダクションと呼ばれることについてお話しします!
【現場の話】第二回 ドラマ制作現場のプリプロダクション
ぜひ、お楽しみに!