【現場の話】第3回 ドラマ撮影現場に潜入!!!
2023.11.07 (Tue)
2023.11.07 (Tue)
普段メイキング映像などで見ることができるドラマの撮影現場。
今日は、普段はなかなか入ることのできないドラマの撮影現場に潜入します!
現場の話シリーズ第一回、第二回と撮影前の準備について詳しく解説しているので、興味がある方はぜひこちらからご覧ください。
▶︎【現場の話】第一回 ドラマができるまで https://www.artstech.net/column/5629
▶︎【現場の話】第二回 ドラマ制作 プリプロダクションとは https://www.artstech.net/column/5941
ロケハン、技打ち、衣装合わせ、ホン読みが終わり、ついに撮影が始まりました。
今回のショートムービーの撮影は計3日間撮影の予定。
3日とも全て夕方から夕陽を狙うシーンの撮影予定が。
つまり、3日とも必ず晴れなければ撮影は成功とは言えませんでした。
そんな運も味方にしなければいけない緊張感のある撮影が開始。
初日は、ハウススタジオでの撮影からスタート。
両親の反対を押しのけ、夢を追うため状況を決意する主人公と両親とのやりとりのシーンや、失恋のショックから涙するシーンまで、初日にしては内容はかなりハードなものだったかもしれません。
しかし、プロの俳優さん方は、そういったことは関係ないといった雰囲気で、涙シーンも一発OK。撮影は順調に進んでいきました。
ところで、準備の内容に少し話は戻ってしまうのですが、ハウススタジオの小道具のお話を少ししたいと思います。
酒井監督は常々、「ドラマはフィクションだから嘘を突き通さなければならない」と言っています。
そのため、ハウススタジオの小道具ひとつまで嘘を突き通すこだわりを持ちます。
つまり、いかに自然体であるか、その役の人の家として、部屋として違和感がないかということを深く考えた上で小道具も全て選定されているのです。
ドラマを観る際、そういった部屋の小道具に注目してみてみるのもまた面白いかもしれません。
キャストの見え方を大きく左右するヘアメイクについてもお話ししていきましょう。
ヘアメイクは、男性であれば30分、女性は1時間でお願いすることがほとんどです。
朝からハウススタジオの1階では機材がバタバタと現場仕事のような雰囲気で準備されている傍ら、2階ではヘアメイクが行われていく。
同じ現場とは思えない空気感の違いは、また一つ撮影現場の面白い点かもしれません(笑)。
酒井組のヘアメイクの方々の手にかかると、まるで匠の技のようで、「素早くそして美しい」仕上がりです。
美しくというと綺麗な見た目であるといったイメージになるかもしれませんが、ドラマの場合、ただ単に綺麗であればいいわけではありません。
泣き乱れているシーンは、髪はボサボサの方がより印象的ですし、上京前の主人公は上京後と比較し、少し垢抜けない雰囲気を作らないといけないからです。
つまり、ここで言う「美しい」とは、役のイメージとピッタリあっているということになります。
この点は、単に美しさを求められる広告写真のモデルさんと違う点になってくるのではないでしょうか。
(写真:奥では女子会 手前では技術準備の様子)
こうして、ハウススタジオでの撮影を追え、1日目の夕陽バックのシーンの撮影へ移ります。
この日の天気予報は、晴れ。
予報通り、夕陽もバッチリ、時間も香盤通りに進み、暮れなずむ夕陽のシーンをバッチリ撮影することができました。
しかしながら、ロケ撮影となると、天候以外にも注意する点はたくさんあります。
例えば、エキストラの動き。
ここでも「嘘を突き通す」が効いてきます。
私は、物よりもこの人の動きにおいて嘘を突き通す難しさを痛感しました。
映像として、美しくかつ現実的に自然な動きでエキストラを一気に何名も動かしていくのです。
「よーいアクション」で全員が一気に動き出しては、やらせ感が出てきます。
エキストラそれぞれに動き出すタイミングがあり、それを一人ひとり伝えていかなければいけない。
そして、テストの際には、ちゃんと動けているか画面上でまた何人もの動きを見ないといけません。
自然な動きだからこそ、普段からあまり意識して見ていない部分で再現するのが難しい、、、。
テレビドラマを観ていると、エキストラの動きがナチュラルなものと、とてもやらせっぽいもの、どちらも目につくようになりました。
たかがエキストラと思うかもしれませんが、エキストラを上手く動かせることも、ドラマの制作現場において一つの強い力でしょう。
(写真:エキストラの方と酒井監督)
1日目の撮影が無事終わり、2日目。
この日は、最高気温35度近くとかなりの灼熱の日。
撮影現場では、言葉の通り、鳩が羽を休めていました。
ここで効いてくるのがキンキンに冷えた飲み物。
立っているだけでも汗が流れてくるほどの暑さの中、スタッフの皆さんが集中を切らすことなく撮影に臨めるようバックアップが重要になってきます。
他にも塩分チャージタブレット等など、熱中症対策品を常備し、健康に無事撮影を終えれることも撮影成功のひとつ大切なことです。
今回の場合、灼熱で氷が全溶け。控えめにいっても、常温に近い飲み物になってしまいました。
それでもないよりはと飲んでくださった方もいらっしゃいましたが、こういった日には、アウトドア用の強力保冷剤の使用をおすすめします。
ドラマには「つながり」というものがあります。
カット変わりの際に、タイミング等がずれていないか、きちんとつながっている必要があるのです。
手の位置や動作のタイミング、影の方向など、「つながり」の鍵となるものは、場合によって様々ですが、今回の場合は「路面電車」が鍵でした。
喧嘩する2人のカップルの後ろを走る路面電車。
ここのシーンでは、同じ動きで2カットとる予定でした。
1カット目は、1本目の路面電車が入ってくるタイミングで無事OK。
問題は2カット目でした。
1カット目と同じタイミングで路面電車が入ってくる必要があります。
しかしながら、この路面電車。運転手さんによって、駅に入ってくるスピードがまちまち。
後になってわかったのですが、多分1カット目で入ってきた路面電車は、他と比べて少しスピードが速かったのです。
そのため、タイミングが合わず、テイクを重ねていくことに。
合わせて、10分に1〜2本くる電車を待つ必要もあります。
場所は日陰の少ない35度の真昼の都内。
テイクを重ねるごとに皆さんの体力も奪っていきます。
それでもシーンがつながるまでは、OKできない。
それほどまでにつながりとは、ドラマづくりのこだわりが現れる一つの要素かもしれません。
灼熱の太陽に照らされながらの撮影を終えたあとは、傾き出している太陽をバックに撮影に移りました。
ここでは、クレーンという特機を使った撮影を行うため、準備にかなり時間がかかったのです。
(写真右:クレーン)
その間にも、太陽は沈んでいきます。
太陽がベストのタイミングでシャッターを切るため、急ピッチで準備を進め、予定していたカットは順々に撮影できていきました。
しかし、急遽より良い画を撮影するために、撮影場所を30mほど横に移動し、再度撮影を行うことに。
大掛かりな撮影機材を一度分解し、移動し、また組み立て、カメラ位置をセッティング。
日没までの時間はあとわずか。
そのように、太陽と追いかけっこをしながらも、太陽との競争には無事勝つことができました!
CGや合成では表現が難しい、絶妙なトワイライトタイムをしっかりと撮影し、無事2日目の撮影も終了しました。
(写真:沈む夕陽を追いながらの撮影様子)
3日目も天候に恵まれ、撮影も無事終了。
3日間大きなトラブルもなく撮影を終えることができました。
酒井組ではこうした撮影終了時、キャストさん一人ひとりのクランクアップのタイミングでお花をプレゼントします。
ただ、近所の百貨店で販売しているお花などではなく、キャストの方一人ひとりのイメージに合ったものをみつくろいお渡ししています。
スタッフの方からもよくお褒めいただけることも多く、小さなこだわりかもしれませんが、こういった一つひとつの想いが重なり、良い撮影現場が作られ、より良い作品になっていくのだと思います。
(写真:クランクアップ時の様子)
今回は、ドラマ撮影現場に潜入しました。いかがでしたか?
このコラムで初めて知ったことや学びになったことがあれば嬉しいです。
次回
【現場の話】第4回 ポストプロダクション ドラマ完成まであと一歩
です。お楽しみに。
(アーツテックスタッフ)