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【未経験から始める映像制作】助監督ってどんな仕事?

2024.08.27 (Tue)

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将来、動画制作会社で映像制作の仕事に就こうと考えている方。

 

一概に「映像制作の仕事をしたい」と言っても、その中身は細分化されています。

映像の世界では、たった1つの映像を完成させるまでに、演出・撮影・照明・音楽・CGなど、数を上げればキリがないほど様々な職種のプロフェッショナルが携わっているのです。

 

今回のコラムでは、映像制作の様々な職種の中でも演出部の助監督という仕事に注目し、実は意外と知られていない「助監督」の仕事について、書いてみたいと思います。

 

 

はじめに

細分化されている映像制作の仕事。

映像制作の道を志始めた皆さんは、「助監督」という仕事をご存知でしょうか。

 

「名前だけは聞いたことがある」

「“監督”って付くくらいだから監督のようなことをするのかな?」

そんなことを考えた方がいるかもしれません。

 

助監督の仕事は、撮影や照明、録音など、技術部の仕事と比べると、どうしても具体的にどんな仕事をしているのかのイメージがつきづらいと思います。

 

はじめに言ってしまうと、「助監督」は現場の全てを知っておく必要がある人です。

演出面で監督の補佐をすることはもちろん、全体のスケジュール管理や資料の作成、キャストやスタッフの日程調整も助監督の仕事です。

 

私自身、まだまだ映像制作の道に入りたての身ですが、今回のコラムでは私自身の体験も交えて、ほぼ未経験から映像制作の仕事に就いた私が、助監督として作品に携わらせていただいた中で学んだ、「助監督の具体的な仕事内容」について、深掘っていきたいと思います。

 

 

 

撮影前の助監督の仕事

―スタッフのスケジュール調整

たくさんの人が関わる映像制作の仕事。

人が集まらなければ、何も始まりません。

監督の演出内容によって、必要になる技術部は異なります。

ある程度、お願いするスタッフを絞ったら次はスタッフのスケジュール調整を行います。

スケジュール調整をする際には、候補日まで抜かりなく送り、候補日がいくつかある場合にはどの日程に決定したとしても問題ないようにしておくことが大切です。

 

 

―キャスト候補を集める・オーディションの準備

ドラマや映画の場合、監督のイメージに合うキャストを集めるのも助監督の仕事。

 

「20代女性」と言っても、その見た目・雰囲気は様々です。

年相応の見た目なのか、年のわりに大人っぽい人なのか、ふんわりした雰囲気なのか。

 

ドラマや映画の場合、監督はキャストの具体的なイメージを持っているものです。

演出に関わることは全て監督確認が必須。

 

役者さんを集めたものの、監督のイメージに合うが1人もいなかった…ということがないように、まずは監督に詳しい人物イメージを共有してもらい、その情報をもとにキャスティング事務所に共有するようにします。

 

また、ポートフォリオだとイメージに合っていたけど、オーディションで実際に見てみたらちょっと違ったという場合も考えられます。

このような場合を考えて、2回目のオーディションもできるように、スケジュールには余裕を持って進めます。

 

 

―オーディション準備(オーディション台本の作成)

オーディションでは、役に応じて演じてもらう箇所を抜き出し、A4用紙1~2枚にまとめていきます。

「オーディション台本」は、その名の通り、映画やドラマのオーディションの際に使われる台本のこと。

しかし、役によっては台詞が一言二言ということがあります。

オーディショをする際、あまりにも台詞が短すぎると、良し悪しの判断が難しいため、場合によっては前後のやり取りを足したオーディション台本を助監督が作成していきます。

このオーディション台本を作成する際には、監督が脚本で書いた登場人物のキャラクターを正確に汲み取り、その役にあった台詞を書き足す必要があります。

助監督は脚本の第一稿が上がった段階から、脚本を読み込み、登場人物のイメージを自分の中で明確にして、監督のイメージと差異がない台詞を足すことができるようにしていきます。

 

 

―衣装・美術/小道具類のイメージの共有

衣装部と美術部に衣装や美術類の監督イメージを共有するのも演出の一環なので、助監督の仕事になります。

・時代設定はいつなのか

・季節はいつか

・時間経過はどう表すか

など、具体的な設定を監督に確認し、イメージの差異が出ないように各部署に伝えていきます。

 

※助監督は監督と衣装さんのイメージ共有をする架け橋のような役割です。

 衣装さんから衣装に関する質問をされた場合には、どんなに時間がないと言っても

まずは監督に確認を取ってから。決して自分の独断で応えることがないように注意

していきます。

 

 

―各香盤表の作成(日々スケ・衣装香盤・美術香盤)

スタッフとキャストが決まったら、次は香盤表を作成し、各部署へ共有していきます。

しかし、一概に「香盤表」と言っても、部署によって1番必要な香盤は変わります。

撮影日全体の総スケジュール、撮影日の時間割り、衣装香盤、美術香盤など、部署に合わせた香盤を準備していきます。

 

 

撮影日全体の総合スケジュール

まずは全スタッフに共有する「総合スケジュール」の作成。

映像制作の世界では「総スケ」と呼ばれます。

「総合スケジュール」とはその名の通り、撮影全日のスケジュールをまとめた香盤のことを指します。

書く内容としては

・S#(シーンNo.)

・L /S(ロケーション撮影かスタジオ撮影か)

・D /N(デイ撮影かナイト撮影か)

・ページ

・場面

・内容

・シーン毎の登場人物

・出演するキャスト名

・EX(エキストラ)

・備考(雨降らしなどの天候設定、特殊撮影の有無、重要な小道具などを記載)

この総合スケジュールをもとに日々スケ、衣装香盤、美術香盤を作成していくため、間違いがないように確認を繰り返し、完璧な総スケを作成できたら次は日々スケを作成していきます。

 

 

撮影日ごとの時間割り

総スケが作成できたら、次に各撮影日ごとのスケジュールを作成します。

映像制作の世界ではこの香盤は「日々スケ」と呼ばれています。

日々スケは、毎日の撮影についてより詳細なスケジュールを記したものを指します。

総スケに記載した内容に加えて、

・スタッフの集合時間・場所

・当日の天気予報

・キャスト毎の入り時間・場所

・どのシーンにどのキャストが出演するか

・シーン毎の撮影時間

を記載して、準備出来次第、全スタッフに共有します

撮影当日にはスタッフ全員にこの日々スケを渡すので、必ずスタッフ全員に行き渡らせることができるように印刷をしておきます。

 

 

衣装香盤

衣装香盤は衣装さんに共有する1番重要な資料です。

撮影当日、「次の衣装はこれでお願いします」などを衣装さんと確認している時間はありません。

衣装合わせの際に決定した衣装の写真を撮っておき、その写真を貼り付けた衣装香盤を作ります。

衣装香盤で重要なことはどのシーンでどの衣装を着用しているかが瞬時にわかることです。

・S#(シーンNo.)

・キャスト毎の入り時間

・場面

・その時のキャスト毎の衣装がわかる全体写真

は必ず記し、キャスト持参のものもあれば、その旨を備考欄などに記しておきましょう。

※しかし、衣装さんはキャストさんとは直接やり取りを行わないので、当日に必ず持ってきてもらえるようにキャスティング事務所を通して、役者さんに連絡をするのは助監督の仕事となります。

 

 

美術・小道具香盤

衣装と同様、美術や小道具ももちろん演出の一部です。

シーンによって、使う小道具は異なります。

美術・小道具香盤にはシーン毎に使用する小道具類を細かく記しておきます。

また、美術の中には“消えもの”と呼ばれるものがあります。

消えものとは撮影で実際に使用することで無くなったり、減ったりするもの。

具体的にはコーヒーなどの飲み物や食卓シーンのご飯など。

同じ動きを何度も繰り返して撮影する映像制作の現場では、「つながり」がとても重要です。

撮影前に消えものを用意する量をしっかりと考えて、美術部と共有し、当日に足りなくなってしまった…ということが無いようにしましょう。

 

香盤表の書き方は人によってそれぞれです。

だからこそ、1番見やすく分かりやすい香盤表を目指したいですよね。

「◯◯さんの香盤が1番見やすい!」と言ってもらえるような香盤を作成できるように練習していきたいと思います。

 

 

 

―ロケハン(カット割り・監督とのイメージ共有のさらなる徹底)

ロケハン時にスタンドインして演技をするのは助監督の仕事。

 

演技がイマイチだと、当然、映像の想像もしづらくなってしまいます。

将来、監督として演出の道を志しているなら演技ができて困ることはありません。

恥ずかしさは捨てて、これから作る映像をより良いものにできるようにしたいと思います。

 

また、プロの現場ではロケハン時にカット割りが決まることがほとんどです。

監督が台詞に合わせて、役者の動きやカメラ位置を指示するので、必ずメモを取ることは必須です。

※ロケハン時にカット割りを決めていたとしても、当日にカット割りを変えることももちろんあります。現場の状況に合わせて、柔軟な対応ができるように、助監督は常に「もしも」を考えておくことが求められます。

 

 

 

現場での助監督の仕事

撮影当日を迎えたら、これまでよりもより一層演出の仕事に集中する必要があります。

これまでに用意した資料をもとに助監督が全体の指揮を取り、時間の管理をしていきます。

「巻く」「押す」と言った言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、これらはすべて助監督の力量にかかっているのです。

次からは、現場での助監督の仕事について詳しく書いていきたいと思います。

 

 

―「つながり」に注意する

「つながり」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

映像制作において、「つながり」という概念はとても重要になってきます。

 

皆さんは映像を見ている時に違和感を感じたことがあるでしょうか。

腕の動きや表情などがカットごとに変わってしまっていると、編集をしたときに「つながらない!」という事態になってしまい、それが視聴者には違和感として捉えられてしまいます。

編集でできることには限りがあるため、ショットやシーンの「つながり」を現場の段階で違和感なく繋げておくことで、編集時に困ることなく、また、視聴者の没入感と理解力を高めることができるのです。

コップに入っているお茶の量、お皿に乗っけられたブドウの数、切り進めている野菜の量など、「つながり」が重要になる部分は様々です。

 

助監督は完成する映像をイメージした上で撮影時、「つながり」を意識しなくてはいけない部分と、そうでは無い部分を理解しておく必要があるのです。

 

 

 

―撮影当日の進行を促す

作成した日々スケに基づき、当日の進行とスケジュール管理をするのも助監督の仕事です。

撮影項目を取りきれなかった…なんてことはプロとして失格です。

すべてのカットは満足いくカットに出来るように、現場全体の進行を促し、最後まで問題なく撮影を進められるようにしましょう。

 

 

―カチンコを持ってカメラ前に立つ

映像制作の中でも特にドラマや映画の場合には、全て監督の「よーい、スタート!」からアクションが始まります。

撮影現場で、この監督の「スタート!」と合わせて鳴り響くのがカチンコの音。

このカチンコを打つのは助監督です。

撮影規模によって、ファースト・セカンド・サードなど、助監督が複数人いる場合には、その中でも1番下の人がこのカチンコを打つ役割を任せられますが、現場によっては助監督が1人の場合ももちろんあります。

そして、映像と音声をそれぞれ別の媒体に記録しておく作品の場合には、このカチンコが編集時にとても重要な役割を果たします。

音ズレは映像制作に携わるプロであれば、1コマずれているだけで分かると言われており、その他の人でも、3コマずれていると分かると言われています。

このようなズレを起こさないように、正確に1コマで「カチン!」とカチンコを打てるように練習しましょう。

そして、「カチンコを打つポジションにいる」ということはつまり、「カメラ前の1番現場を見渡せるポジションにいる」ということを指します。

カチンコを持つ人は役者さんを含めて、現場全体の状況を把握して、「準備よろしいでしょうか?そろそろ回してくださーい!」と声をかける重要な役割があります。

この声掛けをいかに上手くできるかで進行、そして現場全体の雰囲気が変わっていくのです。

注意していただきたいのが、この声をかけるタイミングは決して“全部署の準備が整ってから”ではないということです。

すべての部署の準備が整うのを待っていては撮影は押してしまいます。

撮影部、照明部が今、何をしているのかを確認して、もうすぐで撮影できそうというタイミングで声掛けをして、香盤に沿った撮影スケジュールを行えるようにしていきたいと思います。

 

 

 

おわりに

ここまで、これから映像制作を仕事にしようと考えている方へ向けて、助監督の具体的な仕事内容を紹介してみました。

 

作成する資料や当日の役割などについて詳しく書いてみましたが、映像制作をする上で最も大切なのは余裕を持ったスピード感のある仕事をすることです。

どの仕事でも余裕を持って進めておくことで、万が一不測の事態が起きてしまった…という場合にも対処することができます。

 

また、今回は仕事内容についてメインに書いてみましたが、のちに監督を目指しているという皆さんに求められるのは“絶対的なコミュニケーション能力”です。

有名な監督たちは皆さん、コミュニケーションの達人。

 

一見華やかに見える映像制作の仕事。

しかし、やったらやった分だけその結果が返ってくる、その反面で厳しい仕事と称されることも多々あります。

夏は暑く、冬は寒い、そんな現場で中心人物として立ち、スタッフをどれだけ鼓舞できるかはすべてコミュニケーション能力にかかっているのです。

そして、もちろん円滑にコミュニケーションを取れる力は、各部署と連携を取る役目の助監督にも必須な力。

 

いくら完璧な資料を作成できたとしても、コミュニケーション不足だと問題も起こりやすくなってしまいます。

映像制作の道を志そうと考えているけど、何から始めていいのかわからないという方がもしいらっしゃいましたら、まずはコミュニケーション能力を磨く努力をすることをおすすめします。

今回のコラムが、これから映像制作に携わっていくみなさんの力になれたら幸いです。

 

私もまだまだ映像制作に携わり始めの身。

監督を目指すために、まずは助監督としてプロの仕事を行えるように精進していきます!

 

(アーツテックスタッフ)

 

 

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